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気が付けば乙女ゲームの世界だった件

起き上がろうとすると頭が割れるようにズキズキする。


どこかでぶつけたっけ?


「お嬢様!気が付かれたのですね!あっ、起き上がってはなりません。すぐにお医者様を!」

婆やのミリヤが起き上がろうとする俺をやさしくベットに押し戻し、侍女のリタに向かって指示をした。


えっ?誰?ミリアだよね?えっ?お嬢様って?えっ?俺?俺?俺って誰?どこ?ここ、どこ?

もうっ!!頭割れそうだ!スゲーェ痛い!それにウゲェ、何だ?鉄くさい口の中、血か?ケガしてるのか?


あっ!

「お母様はっ!!」

ガバリと起き上がって私は叫んだ。


ミリアが私の手を握り締め「奥様はご無事でございますとも」と涙を流しながら答えた。

その言葉に私はほっと安堵する。


お母様よかった・・・私も助かったんだ・・・もう、お母様が殺されることはないのね。


またズキリと頭が(うず)く。



あれっ?


お母様って誰のことだ?俺、津波に車ごと飲み込まれたのに助かった?兄貴は?他のみんなは?


「ねぇ?俺だけ助かったの・・・・?んっ?」

何だ?この声?すごくかわいい?

今、しゃべったの俺だよね?

俺の声じゃないよ・・・?

俺は頭を抱えて固まった。

「お嬢様?大丈夫でございますか?奥様はご無事でございますよ。まだ、お熱がございますから混乱なさっておいでですね?さあ、横になって下さいまし、シルフィーヌお嬢様」


えっ?今、俺に言ったの?今、俺の顔を覗き込んで俺に言ったんだよね?


シルフィーヌお嬢様(・・・・・・・・・)って!!




「うわぁ~!マジありえんわ・・・」


あまりの記憶の混乱ぶりに再び高熱を出して気を失った俺は再度目覚めて自室の大鏡に自分を映してすべてを悟った。


そこには背中の中程まである長い金髪(ブロンド)の豊かな髪に青い空を切り取ったような澄み渡ったサファイヤの瞳の5歳位でフリフリ白いドレスの女の子。あっ、ネグリジェかな?


そう、この子の顔にもこの子の名前にも前世の俺には記憶がある。

俺が生きていた前世21世紀の日本で若干17歳で人気声優をしていた俺はこの子が15歳になった時に運命が動き出す乙女ゲーム『永久(とわ)の誓いを君に』の世界に転生したようだ。そう、舞台世界は中世ヨーロッパ風で攻略相手は王子様と言う定番中の定番ですね。


何で男で高校生な俺がそのゲームを知ってるかって?


この子の攻略対象の一人でこの国の王子の声優を俺が担当しておりました。ハイっ!


うん、俺、顔はフツ面のごく普通のそこらへんのお兄ちゃんでしたが声だけは半端なく色っぽかったのでアイドル声優扱いでした。

今、思えば笑っちゃうね。

なんかモテて調子こいていたから罰が当たったんだな、きっと。

死ぬ前の俺は車で湾岸線を仕事関係者と移動していた時に大きな地震にあったんだ。

すぐにツナミに備えて山の方面に移動したのだがあんなに速く、あんなに巨大なツナミに車ごと飲み込まれるなんて思わなかった・・・助かるわけないわな・・・


で、気がついたらこんなかわいい女の子だし!


あやふやだけどこの子になってからの記憶もちゃんとある。前世17歳(男)+今世5歳(女)だから、さすがに5歳児の(ハート)と頭じゃ整理するのに大変で知恵熱出たんだな。きっと。


そもそも前世の記憶を取り戻す原因になったのは家族旅行の帰りに山賊に馬車ごと奇襲をかけられたからなんだよね。

お母様が連れて行かれそうになったので大声で叫んだら頭にガツンと一発食らわされた。どうやら剣の柄で殴られたようだ。

こんな小さな女の子になんて乱暴なんだ!!危うく死ぬところだったわ!!

しかしさすがゲームの修正力?みたいなモノが働いたんだな。

だって俺が、このシルフィーヌが5歳で死んだらこのゲーム始まらないもんな。


だって、俺はヒロインの顔(・・・・・・)をした悪役令嬢だからな。


そう、今の俺の容姿はこの乙女ゲームのヒロイン(・・・・)のシルフィーヌ。

名前もヒロインの名前のシルフィーヌ(・・・・・・)だ。だけど身分は悪役令嬢のアントワート侯爵令嬢なんだよね。


ヒロイン、シルフィーヌ・ジャン・サルクドール男爵令嬢が清楚可憐なサラサラ金髪(ブロンド)で青空を切り取ったような青い瞳の正統派美少女ならこのゲームの悪役侯爵令嬢のミシュリーナ・ダスティ・アントワートはブルネットのふわゆるロング(縦ロールじゃないよ)で燃えるような赤い瞳のナイスバディのお色気ムンムンのお姉様だ。俺個人としてはこの悪役令嬢キャラの方が好きなんだよね。

お約束でヒロインいじめるし、王子には婚約破棄されちゃうけどヒロインの五股であっちふらふら、こっちふらふらよりは普通だし、いじめた理由も焼もちなんて王子一途で可愛いいよね?


あれ?ちょっと待てよ?これってどう言う事なんだ?


普通に真面目に侯爵令嬢やっとけば王子様と婚約して将来王妃様コースまっしぐらじゃないか?

だって今の俺の容姿はヒロインなんだから王子様のストライクゾーンど真ん中だろ?

んでもって、身分は侯爵令嬢って、婚約破棄もなければ、相思相愛。そうだよ、俺、悩むことなんて何もないよね?なんだ、全く、悩みないよ!


なんだ、転生ばんざーい!!


って、違うわーっ!!

今のシルフィーヌは俺なの!!

心が男な俺がいくらイケメン王子様でも男同士なんてちょっとムリだよ。まだ心の準備出来ないし!!

体は女なわけだけど、今、それ、考えられないわ~。ムリ、絶対、ムリ!

男同士であんな事やこんな事なんかできるかーっ!!

何言ってもさぁ?心が一番大事だよね?恋愛でここ一番重要だよね?


危ない、危ない、メチャ安易で楽な方向に走るところだったわ・・・

第一、この世界がノーマル版とは限らないしな。


永久(とわ)の誓いを君に』のノーマル版はスマホゲーム限定でヒロインは5人の攻略対象者と好感度を上げて最終どの攻略対象者を選んでもハッピーエンドとなる王道乙女ゲームだ。一人一人の物語がなかなか細かく作りこまれているので充実しているし、どの攻略対象者も若手人気声優が担当をしているのですごく人気がある。全員お友達END、逆ハーレムは無し。必ず誰かと結婚END。

悪役令嬢もどのルートに入っても婚約破棄はされるけど処刑はない。ただ、隣国の王様の第7夫人にはされちゃうけどね。

うーん、16歳で第7夫人はやだな。なんかマハラジャみたいな王宮でお父さんみたいな王様が嬉しそうに悪役令嬢の手を引いてたエンドロールが流れてたな・・・

悪役令嬢の声優さんが「いやん、エロエロ親父に喰われるーっ!!」って色っぽい声でなんか喜んでたわ。(その声優さんは枯れ専だそうだ。)

だからこの世界がノーマル版で俺が悪役令嬢の運命をたどるならば回避するのはエロエロ隣国おっさん王だわな。


うん、これは王子と親友になってだな、「お代官様、どうかそれだけはご勘弁をーっ!!」って、泣きつくか、どうにか他国に排除されないようなこの国に必要な人物になって、なおかつ、ヒロインをいじめない事だわな。


ああ、隠しキャラルートもあったな。

こいつが唯一、王子様と悪役令嬢がハッピーエンドとなるやつだったな。

ああ、これね、ヒロインに王子様譲られるんだよね。

以外でしょ?


まあ、今の俺は王子様との結婚は回避だから関係ないけどな。


問題はアダルト版。


こっちは18歳R指定の販売版で17歳だった俺は王子の声はしていないし、王子が主人公で最終攻略対象者と結ばれるBLゲームになるんだ。

普通、それないよね? 

アダルト版なんてエッチなスチルが増えるだけだよね?だからすごく評価割れちゃったんだけどさ、それでも怖いもの見たさ?結構高値で取引されているのが現状。

まあ、初めに俺、役作りの為にノーマル版読み込んで一応そっちのアダルト版も依頼来たら対応出来るようにって勉強してたんだ。

こんなところで役に立つとは思わなかったけどな。


それでアダルト版でのヒロイン・悪役令嬢の扱いはどちらもただの側室扱い。

王子以外の攻略対象者は王子の攻略対象者だからヒロイン・悪役令嬢ともにモブ下がり。

いや、もっとひどいんだ。ヒロインが男の王子という時点で世界観がガラリと変わって女性は恋愛対象から外れ、子供を生む道具と成り下がる。選ばれた攻略対象者が王妃となる場合ヒロイン・シルフィーヌはその美貌ゆえ、自分の意思に関係なくその攻略対象者の側室にあてがわれ、その攻略対象者の実家貴族の跡取りを産むだけとなり、悪役令嬢・ミシュリーナも美貌・教養ともゲーム内では一番だから王子の跡取りを産むだけの側室にあてがわれる。

さあ、ここが最悪だ。王子は女性役だから女性である悪役令嬢とは(ねや)をともにできない。それで攻略対象者が閨を手伝うこととなる。3Pですよね。下手すればどちらの子供も身籠(みごも)るということだよね・・・・

攻略対象者の中には悪役令嬢の兄のルカがいる。

ルカが王妃に選ばれたら最悪だ・・・・




「やっと、起き上がれるようになったんだね!シルフィーヌ!」


「!!」


鏡の前で胡坐(あぐら)をかいて考え込んでいた俺はいきなり後ろから抱きつかれてひっくり返りそうになった。


鏡に映るシルフィーヌを嬉しそうに抱きついて肩越しから覗き込んでいるのは兄のルカだ。

そう、さっきの説明通り、ヒロインの攻略対象者でもある一人だ。

サラサラの銀の長髪を青のリボンでまとめ海のような青い瞳の超イケメンで只今8歳。

品行方正で冷静沈着、ノーマル版では将来この国の宰相、アダルト版では王妃。ヒロインの子供の父親になる人で悪役令嬢にとっては兄妹であり、恋敵であり、近親相姦の相手。


思わず俺はルカを振り払い、マジマジ、ルカの顔を見つめた。


「どうしたんだい?シルフィーヌ・・・・?まだ、気分が悪いのかい?」


こいつはどっちのルカなんだ!?






長い説明回ですみません。

書き貯めた物がありますのでお付き合い頂ければうれしいです。

お読み頂きありがとうございました。

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