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ホモに恋するFOOTBALL - triumph or beauty -  作者: 幼卒DQN
妖精の羽が抜け落ちる前に
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油断

「だんだん対応されてきているな」

 ボックス(ペナルティーエリア)から押し出されるような感覚があった。ヴァッフェの選手の特徴を把握され、どこを抑えれば脅威にならないか、一人一人しっぽを掴まれている。

 エロスはうなった。

「確かに不労人間は運動量が少ない。だが勘所かんどころをよく押さえている。卑近な表現で言うと、戦術理解度がうちの選手より高い」


 錫杖がどこから攻めればいいか見つけかねて、ランスに横パス。ランスは小さく弾んで己の体の状態を確かめる。

 上々。顔を上げる。


 機は来たれり。

 走り出した。

 こいつはちょいと厄介だな。CFニートは嫌々ランスにチェック。

 激突。ランスが顔をしかめる。鈍い音が聞こえるようだった。なんとかランスはニートを薙ぎ倒し、前進。


 ランス・チャージだ! ヴァッフェは各自サイドに寄って中央にスペースを空けた。 

 サイドなんて捨てておけ。

 どっ。がつっ。ランスに不労人間が群がる。不労人間のセンターラインは重量級が多くランスは征伐に難渋した。スピードに乗れない。しかし鉄騎の意志で中央をこじ開ける。


 とても正面からぶつかって勝てる相手じゃない。

 高等遊民はドリブルの間隙を縫って巧妙に体をボールとランスの間に滑り込ませた。ランスが奪い返そうとするがランスに背中を預けて耐え、ランスに倒されファールをもらう。ボール周りにはヴァッフェの選手が誰もいない。皆、サイドに寄っていた。高等遊民はすぐに顔を上げた。ボールを引き寄せ手で押さえるとロングボールを前線に送る。


 マイボールになったら本気出す。

 手を挙げていたニートが走り出した。慌てて錫杖が背中を追う。最終ラインは錫杖とマン・ゴーシュだけだ。


 速い……。

 錫杖は思ってもみなかったニートのスピードに違和感を覚えた。そうだ。このCF、今日一度たりとも走っておらぬ。

 ずっと走らぬものだと錯覚しておった。


 ボックスに侵入する前に、右から左SBマン・ゴーシュが追いつき、ニートの進路をふさぐ。ニートは左を向いて一度ボールを止めた。そして即座に左足を振って右サイドに横パス。

 !? 振り返るとそこに亜麻色の髪をなびかせ寄生虫が走り込んでいた。

 ボールを受け取って寄生虫はボックスに足を踏み入れた。マン・ゴーシュがきびすを返して追いかけるが距離がある。GKティンベーが寄生虫ににじり寄ると寄生虫は重心を右足に預け左足を持ち上げる。

 どっちだ? どっち。

 二人の距離は3mほど。簡単に反応できる距離ではない。ティンベーはすり足で細かく動き、足を広げた。寄生虫のタッチも細かい。手を伸ばせば届きそうなほど近づくと、寄生虫は急にアウトサイドで左にボールを転がした。ティンベーは対応しようとするがシュートに対応しようと重心を後ろにしていたのでついていけない。尻餅をついた。マン・ゴーシュは追いかけるのをやめた。

 

「|Ik ben klaarごちそうさま!」

 不労人間が先取点を挙げた。

「カウンター最高!」

 ニートが祝福し寄生虫に抱きついた。

「やべえ久々に勝っちまうかも」

「いつぶり?」

 そうだ。勝ちたい。負け続けて心がしおれて。勝てば、みんなも変わってくれるかもしれない。高等遊民の体が軽くなる。


「ランスが前線にいたのが痛かったな。全体的に点を取ることに意識が向きすぎた」

 エロスは何を話すべきか考えながら試合を観ていた。

「だからフランベルジュちゃん出しとけって言ったじゃん」

「このままだったら何しに来たかわかんねーよ」

 観客席がうるさい。でも相手したら負けだ。

「があああああああああッ」

 エロスは大きな体を揺らし足を踏みならす。


 ヴァッフェの勢いは落ちた。ニートのスピードを警戒し、最終ラインを上げにくくなった。ランスはどこか痛めたのか動きが鈍い。

 前半終了の笛が響く。

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