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ホモに恋するFOOTBALL - triumph or beauty -  作者: 幼卒DQN
妖精の羽が抜け落ちる前に
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ルーレット☆ルーレット

 赤を基調とし、黒の太線の入ったタータンチェックのシャツに白のスカート、ヴァッフェ東京。

 ピンクにスカイブルーで太く丸みがかった縦ストライプのシャツ、薄いグレーのスカート、エレメント横浜。

 東京ボールでキックオフ。


 横浜は開始早々プレッシングを仕掛けてきた。東京はボールを下げる。しかしそこにもプレス。結局、GKティンベーまでバックパス。まだまだエレメントはプレス。ティンベーはボールをクリア。CF刀は競り合うもCBオー・ド・ヴィに競り負けボールを失う。刀は切り替えて下がった。

 エレメントは4-2-2-2のフォーメーション。選手間を、ボールが目まぐるしく行き来した。SH(サイドハーフ)はほとんどウイングのように振る舞う。自由を与えると高精度のパスが入ってくる。東京は横浜がディフェンディングサードまで侵入するとプレッシングを開始。


 こりゃプールに泳ぐどじょうをすくい上げようとするようなもんだな。カットラスは荒い息をつき、途方に暮れた。横浜のピッチは規定ギリギリまで広くとってある。近づいて手を伸ばすとぬるっと逃げていく。パス回しが上手すぎる。曲芸師かよ。

「後ろ~来てるよ~」

 ボールを取りに忍び寄っても、うるさい観客が教えてしまう。これがアウェーのハンデだ。

 でも続けるしかねえな。横浜に自由を与えたらひどいことになる。


 唐突に、左SHヴェンティラトゥールがギアを上げ、油断していた右SBショーテルをちぎる。CH(センターハーフ)モーニングスターが止めにかかるも右つま先にボールをひっかけ左軸足にぶつけボールを前に転がし、そのままボックス(ペナルティエリア)に侵入。CBスタッフがカバー。CBランスがスタッフのいたスペースを埋め、左SBマン・ゴーシュも右にスライドしてスペースを埋める。後ろからショーテルが挟み込んでヴェンティラトゥールに襲いかかると何とかボールを掻き出した。


 そうやってひたすら守備をしていると、陰鬱な気分になる。

 エレメントの連中は楽しそうだ。ずっと笑っている。東京のプレーを嘲笑しているのではない。自分たちのプレーがどうだったかを批評して、笑っている。

「smile、smile~」

 と、監督は手を叩く。

 練習で発揮している力を出力するメソッドなのだろう。エロスは素直に感心した。平常心で本番に臨めるというのは大きい。うちとしてはすげえやりづらいし。


 気を抜くと左からヴェンティラトゥールの突破が来る。どうしても重心を下げざるを得ない。ボールを奪ってもすぐにエレメントのプレスが来る。

「パヌパヌパヌ!」

 パスコースに困った弓が声を出してパスを要求する手裏剣にボールを送った。しかし手裏剣は即座にチェックされて、ボールを失う。


 人数をかけようやくボールを奪うと、スタッフは逡巡しゅんじゅんした。目を輝かせ、わくわくしながらボールを奪おうとエレメントがスタッフに殺到する。となれば裏は空いている。カウンターのチャンス。対角線上のエリアで、カットラスが走り出している。

 あそこですわ!

 スタッフはロングパスを蹴る。ボールは相手FWをかすめるようにしてカットラスを目指した。しかし勢いを失い失速。オー・ド・ヴィが悠々と捕獲し、攻撃を再開した。

 

 東京はずっとボールを追いかけ回している。ボールを取ってもパスコースがない。大きく蹴り出して相手のDFにボールを持たせて全体を押し上げ、プレッシング行くものの簡単にかわされて逆に空いたスペースを利用され、速攻を食らった。

「ヤーサッサイ!」

 ティンベーが横っ飛びでセーブ。

 押し込まれていく。次々とシュートを浴びる。

 

 不意に、ピッチ上の音が聞こえなくなった。


 どこからともなく、弦をはじく音がする。三線サンシン琉球音階ドミファソシドを奏でている。クトゥが続く。胡弓クーチョーも加わって。

 ドゥー軽い(ガッサン)

「♪()ヤー()()!」

 ティンベーはゴールマウスにチャックをする。

 キーパーがリズムに乗ると、妙にノッてくることがある。脳が命令を下すより先に体が反応してボールを止めてしまう。

 横浜はゴールを割れない。

 しかし東京は完全に自陣ゴール前にはりつけになってしまった。


 さすがに気が滅入めいりますわね。

 スタッフはサイドに流れてこぼれ球を回収。追われながらもルックアップ。

 今度こそ、ここですわ。

 カウンターの道筋。刀へのパスコースが見えた。自分の技量では浮き玉のパスは自信がない。スタッフは右足を振り上げグラウンダーのパスを蹴る。

 そこにしなやかに足が伸びる。

 オー・ド・ヴィが駆け込んで、ボールを止めた。即座にボックスに放り込む。ボールを奪って安心していたディフェンスは慌てて補修にかかる。ヴェンティラトゥールがボールを蹴り出し、そこにランスが足を伸ばす。ヴェンティラトゥールがそれに反応して右足を伸ばしボールを引き取ると、モーニングスターに背を向けた。慌ててモーニングスターは足を引っ込める。モーニングスターはつんのめった。くるっ。モーニングスターを抜いた。ランスがカバー。体を寄せる。

 な!

 ヴェンティラトゥールはボールを抱え、さっきとは逆回転にルーレット。ランスも抜く。ティンベーが駆け出すも至近距離からシュート。さすがに反応できず。

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