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ホモに恋するFOOTBALL - triumph or beauty -  作者: 幼卒DQN
妖精の羽が抜け落ちる前に
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某の不得手とする技能じゃな……

「刀。お前のスリーサイズを教えろ」

 刀はグラウンドに突き刺さり、かたかた震えた。

「……すりーさいずというのは、女体三位寸法に相違ないな?」

「たぶんそれでいい。ああでも尺とか寸とか使うなよ。センチで教えろ」

 フランが俺に向かってきた。

「コーチ。セクハラです」

「必要なことだ」

「ふざけないでください」

 ぞくっとした。いつも俺をたしなめているフランだが、このときは目力が違った。フランは折れようとしない。なんて生意気な奴だ。

 なんで俺がこんな小娘に……。が、特に反論も見当たらないので撤退した。

 うざ。


 明くる日、俺は練習場に大きなカバンを背負って行った。意気軒昂な生徒達がわらわらと集まってきて自主的に整列。きらきらの目が早く始めろと言っている。


「刀。ポストプレーとはどういう意味だ」

それがし舶来はくらいの言葉にはうとくてな……。済まぬ」

「お前がポストになるんだよ!」

 刀はキョトンとしている。


「よおし。ゴール前に立て」

 ボールを蹴りながら俺は刀に近づき、カバンから着ぐるみを取り出した。

「それはなんじゃ?」

「着ろ」

 刀は真っ赤な着ぐるみを身につけた。練習場は笑い声に満ちた。刀だけは真顔だった。かわいい! と声が上がる。大は小を兼ねたがしかし如何いかんせんサイズが判らなかったので着ぐるみは五十歳経験豊富総受け柔和眼鏡付き老紳士のただれたアナルのようにガバガバだった。

 だってしょうがないじゃないか。


斯様かような物、如何いかがしたのじゃ」

「昨日、手芸店に行って不織布フェルトを買ってきて、夜に縫った」

 存外に器用なところがあるものじゃ、と刀は感心したがそんな気色けしきを顔には出さないようにした。中にはご丁寧に手紙を受け取るネットまで備わっている。ともかく、真っ赤なポストがゴール前に設置された。

「かわいくない」

 マン・ゴーシュが小さくつぶやく。


「ポストのコスプレができたな」

 エロスは腕組みして微笑んだ。その白ブリーフがまぶしい。

 まさかとは思うがこれがポストプレーではあるまいな。モーニングスター

は眉をひそめる。


 エロスはボールを蹴った。軸のブレたインサイドキック。ボールは横回転して、刀が止める。

「刀。ポストの仕事とは何だ」

「郵便箱……。ふみを受け取る?」

「受け取った後は?」

「郵便局吏員が回収……」

「で?」

「配達じゃ」

 刀の顔色が変わる。


「そこまでの行程はポストプレイヤーの役割だ。ボールを受け、配球する」

 手が挙がった。ククリだ。

「配球するという意味では司令塔ゲームメイカーとはどう違うの?」

「ポストプレイヤーは前線でボールを受ける。司令塔ゲームメイカーは守備の隙間、よりプレッシャーの弱いところでボールを受けようとする。ポストプレイヤーは体の大きさや強さが求められる。高いボールをヘディングして味方へ、転がってくる(グラウンダーの)ボールを長い足を利し相手の足が届かないところに置いて、DFの蹴りに耐えて、味方に落とす。DFがポストプレイヤーに対処しなければならない分、味方がフリーになる。この前のパイプオルガンなんかが典型的なポストプレイヤーだ」


 手が挙がる。フランだ。

「たったこれだけの説明のために着ぐるみまで作ってくることはなかったんじゃないですか」

 フランは行動は御立派だがお口は反抗的だ。むかむかする!


 モーニングスターの意見は別だった。確かにバカバカしいが、印象的だ。こんなにバカバカしいことをすると、指導内容を記憶してしまう。ユーモアとしても悪くない。まあ、労力に見合ってはいないのかもしれないけれど。そしてそんな意見をそっと胸にしまい込む。

ポストプレーのpostは『杭』の意味です。でもそんなことどうでもいいのです。語呂合わせで年号を記憶したからといって別に減点はされません。

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