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Meteoric Shower  作者: 東京 澪音
5/7

誘惑と流星群

今夜、自分の気持ちを確かめようと思う。


夏休みを少し過ぎたある日の昼下がり、僕は天気予報を見ていた。

今日の天気、快晴。夕方から曇る事もないとの事。


流星群を観測するのはもってこいの天気だ。

本来はもう少し後がピークとなるのだが、今の時期もう流星群を確認する事が出来るらしい。


昨日夜、インターネットで流星群の観察をしている方のブログをチェックした際に、得た情報だ。

流星群国際観測プロジェクトの方にも情報が出ていた。


テレビを消すと、僕は灯の携帯電話に電話をしてみる。


呼び出し音はするものの、出る気配がない。

仕方ないので、僕はお隣の星野さん家に顔を出す事にした。


呼び鈴を鳴らすと、光さんが出迎えてくれた。


「あら、こんにちは。あ!もしかして、お姉さんの事デートに誘いに来てくれちゃった的な展開?」


僕はどうもこのノリが苦手である。

どう対処していいかわからないから、毎回困ってしまう。

そんなんだから毎回揶揄われるちゃうんだけど。


「あ、すみません、そう言うのとは違くって、その光さんは美人ですから、僕なんかではつり合いがとれませんので、ごめんなさい。あの~灯お願いできますか?」


そう言うと若干不機嫌になる。


「なによ~私じゃ不満なの?って言うか、あんな寝坊助ほっといてプール行かない?プール!お姉さん先日ね、凄い水着買っちゃったの!でもね、悲しいかなお姉さんね、見せる相手が誰もいないの。だから一緒にプール行ってくれたらお姉さん嬉しいな~って思ったんだけど、ダメ?」


内緒だけど、一瞬、ほんの一瞬だけ、気持ちが揺らぎそうになった。


流星群は明日も見えるかもしれないけど、光さんの水着は今日を逃したら一生拝めないかも!とか思ってしまったのは、十代の青い性さがのせいなんだろうか?


明日も天気良いみたいだし、流星群はまたでも平気かな~?なーんて流されそうになったところで、光さんの後ろから灯が登場。


「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!なに玄関でナンパしてるのよ!」


ナイスタイミング


寝間着姿の灯は、ちょうど今し方起きてきたところらしい。


「チッ!タイミング悪いわねアンタ。もうちょっとで落ちる所だったのに。今私は彼をプールに誘ってるんだから、邪魔しないでちょうだい!」


もうちょっとで落ちるって・・・と言うか、光さん今舌打ちしたよね!?

危うくウッカリプールについて行くとこだったが、どうやら助かったらしい。


「アンタもなにデレッとしてるのよ!今一瞬お姉ちゃんの水着姿想像したでしょ!?まったく、朝っぱらから何がプールよ!?泳げもしないくせに!」


だから姉妹喧嘩に巻き込まないでほしいんだって。


この二人が一緒になるとホントロクな事が起きない。


「うるさいわね!泳げなくてもいいのよ、水着が着れれば!それともう朝じゃないし、昼前よ!寝ぼけてるんじゃないわよこの寝坊助!あ~、もう面倒だから、いいわ。あんたもう一回寝ちゃいなさい。」


さて困った。どうしたもんか。


「なにさ、水着買っても誰も見せる相手いないくせに。と言うか、アンタは何しにここに来たのよ?」


なんで矛先が僕に向くんだよ。


「決まってるじゃない。お姉さんをデートに誘いに来たのよね?間違いない、賭けてもいいわ。」


凄い自信だ。

これが俗に言う大人の余裕ってやつか?


「上等じゃない!その賭け、のったわ。ねぇ、私に用事があってきたんだよね?」


どう答えても角が立つだろこの究極の選択。

でも嘘をついちゃいけないし、欲望に流されちゃいけない。


「灯に用事があって。」


僕は正直に答えた。


「ほらね。はい、私の勝ち!お姉ちゃんは罰として、ダッシュで今すぐコンビニ行ってメロンカップアイス3つ買ってきて!10分以内ね。よーい、スタート!あ、間に合わなかったらもう一回行かせるから。」


鬼だな。


光さんはまたもや舌打ち一つすると、ダッシュでコンビニに向かった。


「携帯に電話してくれればよかったじゃない!そうすればこんな面倒な事にはならなかったのよ!」


そう言った灯は少し不機嫌だった。


「携帯には電話したんだけどね、灯が出ないから直接来ちゃったんだ。そしたら光さんにからかわれたって訳。」


灯は一度部屋に戻ると、携帯片手に戻ってきた。


「まぁ、気付かなかった私にも責任があるって事で、今回は無かった事にしておいてあげる。で、どうしたの?」


機嫌が戻ったらしい。


「でさ灯、今夜って暇?もしよかったらなんだけど、一緒に箱根に流星群を見に行かないか?」


そう言うと、灯の顔がみるみる笑顔になる。

さっきまでの不機嫌さは何処へやら。


「流星群!箱根!行きたい!誘いに来てくれたのね!嬉しい!ちょっと待ってて、すぐ支度するから!」


いやいや、今から行ってもまだ見れないし。


「ちょっと待って!行くのは今夜。22時頃から見えるらしいから、20時に家の前集合でどう?」


そう言うと今から行こうと駄々をこねだしたが、流石にこの時間から行っても星が見えないしね。取り敢えず灯を落ち着かせる。


「わかった。じゃあ20時に家の前で!それじゃあ私は夜に備えてもう一回寝ようかな?」


まだ寝るのかよ!?

心の中でそう突っ込んだところで、光さんがコンビニから帰ってきた。


「ほら、約束のメロンカップアイス。」

そう言うと灯に買ってきたアイスを袋ごと手渡す。


灯は袋からメロンカップアイスを一つ取り出すと僕に手渡す。

「はいこれ。誘いに来てくれたお礼。あ、お姉ちゃんにも!」


そう言うと光さんにもアイスを差し出した。

何だかんだでこの姉妹仲いいんだな~。


僕は灯からアイスを受け取ると、お礼を言った。


この炎天下ダッシュでコンビニに行かされた光さんは、アイスを灯から受け取ると、小声でリア充くたばれ!と言い放ち、部屋の奥に消えてった。


僕は光さんにどす黒い何かを一瞬見た。


「じゃ、また後でね!僕も少し眠っておくよ!」


そう言うと僕は星野家を後にした。


部屋に戻るとメロンカップアイスを食べる。

少し溶けていたけど、メロンカップアイスはどこか懐かしい味がした。


窓を開けてベッドに横になると、心地よい風が入ってきた。


白いレースのカーテンが揺れている。

僕はいつの間にか浅い眠りについたのだった。


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