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Meteoric Shower  作者: 東京 澪音
4/7

気持ち、量りかねて


朝7時5分。


僕はベットから身体を起こすと、顔を洗いに一階の洗面所に向かう。

身体のあちこちが痛い。


昨日のツーリングが原因だとすぐにわかる。

僕は首や肩を回しながら歯を磨く。


顔を洗い髪の毛をセットすると、自室の戻り制服に着替える。

朝は食欲がわかない為、いつも食事をとらずに学校へ向かう。


7時25分。

準備を済ませ玄関を出ると、灯もちょうど玄関から出てきたところだった。


「おはよう。昨日は楽しかったね!」


灯は笑顔で朝の挨拶をする。

「おはよう。僕は少し筋肉痛かな。後ろに人を乗せたのなんて初めての経験だから、少し緊張していたのかも(笑)」


そう言うと、僕らは学校までの道のりを歩き始める。


「朝もバイクで行けたらいいのにね。そうすればもう少しゆっくり寝れるのに。」


寝坊助な灯ならではの意見である。

確かに、灯のいう事もわからないでもないが、残念ながら僕らが通う学校はバイク通学禁止である。


「仕方ないよ、バイク通学禁止だし。それにバイク通学OKになったら、校門前で渋滞とかしちゃうんじゃないかな?駐輪場とかも大変な事になると思うし。まぁ、僕らは家から歩いて20分弱なんだから、別にいいんじゃないか。それにこうやって灯と話しながら登校するのが長年の習慣になっているから、これが無くなったら無くなったで少し寂しいよ。」


そう言うと灯ははにかんだ様に笑った。


気が付くと通りの向こう側に校門が見えてきた。


他愛もない話を続けつつ、僕らは校門をくぐる。


下駄箱に到着すると、僕らはそこで別れる。


僕は2-Aで灯は2-C。


僕はいつもの様に下駄箱から上履きを出そうと中を覗くと、そこには白い封筒にハートのマークの封筒が・・・入ってる訳ないか・・・。


だよな!


お恥ずかしながら、小学生の時から毎朝確認している。

ちょっとだけそう言うシチュエーションに憧れちゃったりなんかする。


生まれてこの方、まだ一度もそんな経験はない。


いつもの事ながら、少しだけ肩を落とし教室へ向かうと、いつもの三馬鹿らと合流する。

ホームルームが始まるまでの間、昨日納車されたバイクの事、江の島ツーリングなんかで話に花を咲かせる。


しばらくすると担任が入ってきて、朝のホームルームを済ませる。

特に伝達事項はないが、来週から夏休みに入るので、その辺の事を少しだけ。


この時期になると皆浮かれまくっている。

話題と言えば、夏休みどう過ごす?とかそんなんばっかり。


それもそうか。学生には休みを楽しむ義務と権利がある。


勿論僕もその一人だし、みんなに負けない位浮かれまくっている。


今年こそは箱根ターンパイクから満天の星空の下で流星群を見るんだ!

それだけは絶対に譲れない。


昔、祖母の住む田舎で見た流星群がきっかけで、僕は夜の空に輝く星にとりつかれてしまった。


夜空は無限に広がっていて、そこには幾千もの星が散りばめられている。

その星の輝きには驚かされる事が沢山ある。


肉眼で見たその星の光は、現在の様子ではない。


その光は何年か前のものから、何億光年も前の姿であったり様々である。


望遠鏡なんかを使えば、2000光年の星も観測が可能である。

天文台とかになると、130億光年の銀河の観測も可能とか言うから驚きである。


そんな神秘的な星空に興味が湧かないはずがない。


今年は流星群を見るのに大変ベストで、22時から明け方の間にかなりの数の流れ星が観測可能とか。

そんな事ばかりを考えて過ごすのがここ最近の僕の日課だ。


授業?

そっちのけさ(笑)


昼は灯と一緒に中庭の木陰で食べるのが日課。

僕は購買のパンで、灯はお弁当持参。


「お!今日もおいしそうだな!」

そう言うと灯は自慢げに弁当を見せつける。


「でしょ~!なんてったって、私が腕によりをかけて作るのを見てたからね!」


作ってないのかい!

まぁ、灯が作る筈もないか。光さん情報だと、いつもギリギリまで寝てるらしいし。


僕は心の中で突っ込みを入れると、その場に寝転がる。


「なぁ灯、今年の夏ってどっか行くのか?」

僕は少し気いなって灯に聞いてみた。


「うーん、多分家族でお盆に甲府へお墓参りに行くくらいで、今はその他に予定はないよ。もしかして、バイクでどっか連れてってくれるの!?」


灯の表情が明るくなる。


実は流星群と同じくらい気になっている事がある。

灯の事だ。


昨日色々あったせいか、僕は少しわからなくなっていたんだ。


今まで見た事のない灯の表情に、鼓動が少し早くなった事。

つまり僕は自分で自分の気持ちを量りかねていたんだ。


この夏、灯と過ごす時間の中で、僕はそれの答えを見つけだしたいと思っている。


「灯、もしよかったらなんだけどさ、一緒に流星群を見に行かないか?」


僕は笑顔で灯にそう告げると、彼女は瞳を少し見開いて大きく頷いた。


太陽の日差しが日に日にその強さを増す中、僕らは忘れられない夏に向かって歩み始めたんだ。





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