ほんとの気持ち
「……き、なの」
「え?何?聞こえない」
「だからっ、好きに、なっちゃったの……」
言ってしまった。
もともと言うつもりだったけど。
自分の鼓動しか聞こえない。
「なに、言ってんの……」
聞きようによっては拒絶とも取れる宏翔のことば。
恐る恐る俯けていた顔をあげると、真っ赤な顔をした宏翔がいた。
え………!?
「宏、翔……?」
「俺も」
そんな言葉とともに、視界を奪われ……。
「んぅ……っ」
キスが降って来た。
「んんっ、……っゃ……」
角度を変えて落とされるキスに、あたしは酔いしれた……。
「俺、美緒には絶対嫌われてると思ってた」
「何で?……まぁ、確かに嫌いって言うか好きではなかったけど」
二人で手をつないで帰る。
実は初めてのことで、ちょっと緊張してる。
結局、宏翔は『好き』とは言ってくれなかったけど、『俺も』って言ってくれたから、もうそれで十分。
でも、いつかは言って欲しい。
「ほら。最初だって、俺めちゃくちゃ強引だったし。無理やり美緒にキスとかして。嫌われても仕方ないなって思ってた」
「でも好きになっちゃったもん」
あれ、なんであたしこんな恥ずかしいこと言ってんだろ。
「ん。ありがと」
そういって微笑む宏翔は、とっても綺麗だった。
このときのあたしたちは幸せで、忘れていたんだ。
しかも、一番忘れてはいけない、ファンクラブの存在を。
もし気づけていたら。
あんなことには、ならなかったのかな……?