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最初で、最後。  作者: 陽花瑠
第2章
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勇気を出すこと

一日中ケータイを見つめながら勇気が出せなかった土日。

何度も通話ボタンを押しかけて寸前でやめた。

でも。

今日こそは絶対、言わなきゃ。



「ちょっと美緒?本気なの、そんな顔して学校行くなんて。今日は休みなさい、ね?」

「大丈夫だから。明日には元に戻ってるって、多分」

どんなにひどい顔をしてるんだろう、あたし。

滅多に休みなさいとか言ってこないお母さんがこんなこと言ってくるなんて。

ごめんね、お母さん。今日だけは、絶対行きたいの。



そうして登校したはいいけど、あんまり授業が頭に入ってこない。

クマを隠すために久しぶりにかけたメガネも相まって、頭がボーっとする。

こんなんで放課後までもつのかな……。

「美緒ー。ご飯食べよー……って美緒?大丈夫?なんか上の空だけど」

梨子が言いながらメガネをとる。

あっ、ダメ……

「うわっ、どうしたのそれ。うん、取らないほうが良かったわ、ごめん」

ああぁ……。

あたしこそ気ぃ遣わせてごめんね梨子……。

「ごめん……。ちょっと、いろいろ考えちゃって。寝不足なんだよね……」

「……空き教室、行こうか」

たぶん、教室では話せないことなんだって気づいてもらえたんだと思う。

だって、教室で宏翔のことなんか話したら、ファンクラブの人たちに殺されちゃう。



「そっか。なんにしても、すっきりできるんじゃない?」

「うん。振られるの覚悟だけど、頑張るね」

もしかしたら、宏翔との縁はここで切れてしまうかもしれない。

それでも、気持ちを伝えなかったことを後悔したくないから。

ちゃんと、決着つける。







――放課後。


3日ぶりの生物室。

ガラッと扉を開けると、誰もいない。

あのときみたいに、隠れてるわけでもなさそう。

ま、まさか帰っちゃったの……?

確かに、呼び出したりはしてないけど、毎日来いって言ったのは宏翔だし。

せっかく振り絞った勇気が、急速にしぼんでいく。



「美緒?何してんの、そんなとこに突っ立って」



いきなり後ろからかけられた声に、冗談じゃなく跳び上がった。

「もっ、もう~、宏翔!!びっくりしたじゃん、やめてよ!!」

恥ずかし紛れに大声を出す。

「え、そんなにびっくりした?俺普通に歩いてきたじゃん。驚かすつもりはなかったんだけど」

うぅ……っ。

そんなの聞こえないくらい考え事してたの、なんて口が裂けても言えない……!

「まぁ、どうでもいいや。とりあえず、入ろう」

そうして生物室に入って扉を閉める。

心臓が暴れまくってる。

そうだよ、あたしは宏翔に告白、しにきたんだもん。



「ひっ、宏翔っ!!」



荷物を置いて、声をかける。

あぁ、声が裏返っちゃう。


「何?美緒から話しかけてくるなんて珍しいじゃん」



「あっ、あのね……、あたし……」





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