わからない
あれから一週間が経った。
放課後に生物室に行き、ただ他愛無いことを話して、時々……キス、したり。付き合ってるわけじゃないのに、こんなことしててもいいのかな。
今日もまた、生物室での密会が終わる。最近、宏翔はキスのときに抱きしめてくる。……まるで、彼女にするみたいに。
あたしも、それを心地いいと感じてしまってる。この気持ちは何……?
「っん、」
「いい声。もっと聞かせろよ」
そう言ってまたキスをはじめる宏翔。当然のように手はあたしの腰。
「っも、やぁ……。帰らな……きゃ……」
「あとちょっとだけ」
「んんっ」
開放されたのは30分後。あたしたち、家は近いのに一緒に帰ったりはしない。それがあたしたちの距離。心の距離なのかも。
家に帰ってすぐ、梨子に電話した。もう、この関係のことを隠しておけなくなっていたから。今日も一緒に帰れないって言ったら、
『美緒、なんか隠してるでしょ。今までは黙ってたけど、今日は許さないから。帰ったら電話してよね』
そう言われちゃった。
それに、あたしも宏翔に対する気持ちが膨らんでるんだけど、正体が掴めなくてもやもやしてるから、梨子に聞いてほしい。
『もしもーし。美緒?今中学のそばのガストにいるんだけど、来れる?無理ならこれから美緒ん家行くけど』
「分かった、行くから待ってて」
自転車で5分。ガストに着いて梨子を探す。
「美緒!こっちー!」
梨子と向かい合わせで座って、ドリンクバーを注文する。
「で?美緒はこの一週間ワタシになにを隠してたわけ?」
「実はね……」
あたしはこの一週間のことを洗いざらい梨子に言った。宏翔とぶつかったこと、ファンクラブにバレない為に放課後に会っていること、付き合ってはいないのにキスしてること、それから、自分の気持ちが分からないこと……。
「ねぇ梨子、あたし、どうしたらいいの?」
「美緒……それ、『恋』じゃないの?」
……………は?
「な…何言ってんの?恋なんて……」
「考えてみなよ。キスされて、嫌じゃないんでしょ?」