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最初で、最後。  作者: 陽花瑠
第1章
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秘密の昼休み

「美緒!一緒にご飯食べよっ」

中学からの親友、風間梨子(かざまりこ)が、いつもみたいに声をかけてくれる。だけど、あたしには立森……じゃないや、宏翔との『密会』が待っている。

「ごめん、梨子!あたし、これからしばらくお昼いないの!ほんと、ごめん」

そう言うと、梨子はにこりと笑って。

「そっか、わかった。いってらっしゃい」

そう言って、送り出してくれた。やっぱり梨子といると落ち着くなぁ。

「うん、ありがと。食べられるときは一緒に食べようね」

こうやって、何も言わなくてもわかってくれる梨子の優しさが好き。


階段や廊下に人が居ないことを確認しながら、生物室に向かう。だって、今はお昼休み。生物室に用がある人なんか、いないでしょ。

--パタパタッ。

生物室に続く廊下には、あたしの足音だけが響く。

--ガラガラッ。

ドアを開ける音も、一人だと大きく感じる。

「なによ、いないじゃん」

「誰がいないって?」

え。いいい今、どこから聞こえた?

恐る恐る首を向けると、あたしからはちょうど死角になる位置に、立森……ちがう、宏翔はいた。

「ちゃんと来たんだ、えらいえらい」

そう言いながら歩み寄ってきて、あたまをポンポンってされる。


--トク……


え、なに!?なんでちょっとキュンとかしてるのあたし!!

ちがう、絶対ちがう。これは、そう、予想外の行動にびっくりしたから、そうに決まってる!!

「だって、来いって言ったの、たて……宏翔じゃん」

あっぶな。危うく苗字で呼びそうになった。

「ん?今、美緒なんて言いかけた?」

「っえ?なんにも」

こ、これは……ばれてる?

「俺のこと、苗字で呼びかけただろ」

「は?」

内心めっちゃ焦ってます、あたし。

だけどその動揺を押し隠して、平然とする。

「ふふ。バレバレだよ、美緒ちゃん?あ、そっか、俺、お仕置きはキスにするって言ったんだっけ。わざわざ苗字言わなくてもしてやるから安心しろよ」

言いながらこっちに近づいてきて、もともと壁際にいたあたしは、簡単に押し付けられる。

金縛りにでもあったみたいに、近づいてくる顔から目が離せない。せめて、目くらいは瞑りたいのに。


「っや……っ。んんっ」

ついに、宏翔との距離はゼロ。ようやく金縛りが解けて、あたしは目を閉じた。

もっと早く解けてよ。

ヤダ、息できない。

「んーーっ!!っは、んぅっ」

苦しくて宏翔の制服の裾を掴むと、わずかに離れる唇。だけどすぐにまた塞がれた。今度はもっと深く。

あたしが抵抗をやめると、宏翔の舌は待っていたかのように口内を犯す。

「んふっ、やぁ……」

唇が離れるときには、あたしはすっかりキスに酔っていて。

崩れそうになる身体を宏翔の腕にすくいあげられる。

「気持ちよかった?」

「なっ、なに言ってんの……」

そう言いながらも、顔が熱くなるのを止められない。

「ハハッ、美緒は可愛いな」

えぇっ!?そんなこと男子に初めて言われた。…まぁ、お世辞だろうけど。

それでも、あたしの胸は期待をやめられない。本気で言ってるんじゃないって分かってるのに。なんでだろう。

「ほら、そんなに紅くなっちゃって。そんな顔で教室戻れないだろ。俺はもう行くから。美緒は落ち着いてから来な。それと……これからは放課後にしよっか。そのほうが人目もないし、今みたいな紅い顔も落ち着くまで待てるしさ」

その提案に、あたしは頷くことしかできなかった。声を出したら、震えていそうで怖かった。胸のドキドキが、宏翔に聞こえそうで。


あたしが教室に戻れたのは、お昼休みが終わる、直前だった……。

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