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第8話 いずれは気づくこと

「ベルはさっき、私のところにきた意味がなくなるって言ってたよね?」


 ゆかりは何かを察してベルに問いかける。


「うん、言った」

「それはどういう意味?」

「今は言えない」

「どうして?」

「だから、言えない」


 ベルはいつも通りの口調で淡々とゆかりの問いかけに答えていく。

 彼女の矢継ぎ早の質問は数回続いた。


「そ、そんなに、秘密にしておきたいこと、なの……?」


 最後の質問でゆかりの()から涙がポロポロと頬を濡らしている。


「…………」


 ベルは一瞬、答えることを止めた。

 そして、泣いている彼女から視線を逸らす。


「あぁ。それはもうすでに気づいているとは思うけど……。もし、気づかなかったら、いずれは気づくことだから……」


 彼はゆかりに背を向け、彼女に聞こえるようにそっと答えた。


「……私がすでに気づいているか、気づいていないか……?」

「そう。だから、オレはゆかりがそのことを気づいていることを願ってるのさ」


 ベルはゆかりの方を向き直る。

 彼は彼女に優しく微笑みかけた。


「そうなんだ……私が早く気づけるようにならなくちゃね……」

「そうだな。だから、もう泣かないで……」

「うん。洗面所でちょっと顔を洗ってくる」

「行ってらっしゃい。実技は明日にしよう」

「分かった」


 ゆかりは涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、洗面所へ歩を進める。


 彼らの間に沈黙という名の静かな時間が流れ始めた……。


 あれから、彼らが互いに話したのはたったの数回だけだったのは言うまでもない。

書きおろしエピソード。


2015/11/23 本投稿

2016/06/19 改稿

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