第5話 部屋に着いて早々に彼から言われた衝撃的な言葉
エレベーターから「五階です」という女性の声のアナウンスが流れ、そのドアが開いた。
ゆかりと『北海道産ジャガイモ』と書かれた段ボールに入れられている小さくなったベルはそこから出、二部屋離れた彼女の部屋にたどり着く。
彼女は部屋の鍵を開け、段ボールも一緒に玄関に入れ、部屋の電気をつけた。
ゆかりは「ただいま」と言いながら、その段ボールを床に置く。
しかし、部屋には誰もいないため、反応が全くない。
「お邪魔しまーす。って……オイ、ゆかり」
「なぁに?」
「一回ここに帰ってきたんだよな? それと、一人暮らしじゃないのか?」
「うん。一回荷物を置きに戻った。何も反応はないけど、ただいまって言うことが癖なんだよね」
彼女は革靴を脱ぎ捨て、スリッパに履き替えると何かに気がついたようだ。
「うわぁ! ベル、いつの間にかに等身大に戻ってるし! いつ戻ったの?」
「部屋に入った時からだけど……」
先ほどまでは段ボールの中で小さくなっていたベルがいつの間にかに等身大に戻っていた。
「まぁいっか。取りあえず、ベルもスリッパに履き替えて」
「ハイハイ、分かったよ」
ベルは渋々と靴を脱ぎ、ゆかりから差し出されたスリッパに履き替える。
*
「ゆかりの部屋ってなんか、大人っぽい部屋だよな……」
ベルはゆかりの部屋に入った途端に呟いた。
彼女の部屋はモノトーンで統一されている。
机と椅子は当たり前のようにあり、白と黒の本棚が一個ずつ。
その本棚は奥の本や雑誌が見えるよう、二段構成になっている。
クローゼット脇にある全身鏡は白。
部屋の真ん中には小さなテーブルがあり、ジュエリーボックスや化粧品が転がっている。
その他にリビングダイニングルームやお風呂などの基本的なものも備わっており、ペットと同居も可能である。
また、飼い主が不在であっても、動物が好きな管理人の夫婦が面倒を見てくれるので、安心ということで人気になっていると噂になっているとのこと。
「ぬいぐるみとかの女の子っぽいものは好きじゃないから」
「ふーん。じゃあ、犬は?」
「犬は好きだよ。今から制服から私服に着替えるから他の部屋に行くかして。リビングでテレビを見ててもいいから」
「はいよ。テレビ、見てる」
ベルはリビングに行き、テレビのコンセントを差し込む。
彼は適当にチャンネルを合わせ、なぜかニュースを見ていた。
その間にゆかりはクローゼットの中を覗き込み、カチャカチャゴソゴソと音を立てながら着替えている。
「……なぁ、ゆかり……」
ベルはテレビの電源を切り、少し戸惑いながら自室にいるゆかりに話しかける。
「なぁに?」
彼女から返事があった。
リビングにいる彼の声はゆかりの部屋まで聞こえていたようだ。
「着替え、終わったか?」
「うん。何か困ったことでもあった?」
「いや……」
ベルはゆっくりソファーから立ち上がり、彼女の部屋に行く。
「唐突ですまないが、オレがなぜ、ゆかりのところにきたか分かるか?」
「えっ……? なんのこと? 分からないよ……?」
ゆかりは私服に着替え終えるとベルがいた。
彼女は突然、彼が部屋にきたので少し驚いている。
ゆかりは制服をハンガーにかけながら首を傾げながら答えた。
「オレはこの懐中時計によって操られている……」
「えっ!? そ、それは私には関係ないことだよね!?」
「いや、残念ながら関係ある」
「……そんなぁ……」
「信じてもらえないと思うけど……ゆかりは……オレによって操られる……」
「……ということは私はベルの操り人形っていうこと?」
「その通りだ」
彼が頷きながら答える。
「どうして!? どうして、ベルは私を選んだの? 操る人なら他にもたくさんいるはずなのに! ベルは美形(?)だから、すぐに女の子に囲まれるはずなのに! なんで……」
ゆかりは彼に怒鳴り散らすように言う。
「残念ながら、オレは美形でもなんでもない……。オレがなぜ、ゆかりを選んだかはいずれ分かる」
「いずれ……」
彼から突きつけられた衝撃的な話を聞いたゆかりは激しく奮起していた。
しかし、彼が彼女のところに居候することは未だに謎である……。
原作版・第2話の前半部をベースに改稿
2015/09/06 本投稿
2016/06/19 改稿