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第14話(最終話) 2人の思い~伝わる思い~

(私の(オレの)思いを彼(彼女)に届け!)


「「η(イータ)!」」


 今までの静止された時間が遅れを取り戻すかのように動き出した。


「ん?」

「さっきのはなんだったんだろう?」

「大野?」


 玉川先生がゆかりのことを心配し、声をかける。


「先生、先ほどはお騒がせしてすみませんでした」

「無事でよかった……。さて、みんな、授業を再開する……」


 あれから十五分後……。

 数学の授業がなんとか終了し、次の現代文の授業は問題なく終了した。



 *



 その日の放課後、ゆかりは文芸部の部室に駆けつけた。

 そこには栗原くんはもちろんのこと、まさり、留美などと二十人くらいの部員の姿があった。


「こんにちは」

「ゆかり先輩、こんにちは」

「ヤッホー、ゆかり!」

「こんちわ!」


 部員達が作業の手を休めるかのように、ゆかりに話しかける。


「ふーっ……。今日は散々だったなぁ……」

「どうしたの? 何かあった?」

「ちょっとね……」


 その時、部室のドアが勢いよく開いた。

 女子部員からの黄色い声が響き渡る。


「キャーッ!」

「カッコいい!」

「ゆかりの彼氏?」


 ベルは等身大の姿で涼しい顔をして登場。


「ゆかり?」

「ベル! って、等身大になってるし……」


 ゆかりがベルに少し呆れたような口調で言った。


「すまない。今日の最後の授業が終わったあとから、ゆかりの姿が見当たらなくなったから、怪しまれないようにここにきた」

「そう……」

「あ、あの。ゆかり先輩、この男性の絵を描いてもいいですか?」


 留美がゆかりに問いかける。


「えっ、ベルの?」

「ハイ。駄目ですか?」

「うーん……。ベルがいいならいいよ」

「どうぞ」


 ゆかりは一瞬迷っていたが、ベルは快く承諾した。


「わーい! ありがとうございます!」


 留美はたくさんの部員の視線を気にせずにペンケースからシャープペンシルと消しゴムを取り出した。

 ベルをモデルにそれで軽く下書きをし、万年筆を使い、ペン入れをする。

 そして、色鉛筆やらコピックを使用し、きれいに色付けを施していく――。


「こんな感じかな……? できました!」


 留美が最後に描き残しがないか、彼女の絵とベルを見比べる。

 留美がコクンと頷き、完成を告げた。


「おおっ!」

「どれどれ?」

「そっくりだ!」


 その様子を見守っていた部員達はベルと絵を見比べていた。


「君は絵を描くの上手いね。ありがとう」

「そ、それほどでも……」

「留美ちゃん、顔が真っ赤だよ?」

「ゆかり先輩っ!」


 留美はゆかりに言われるまで、ベルの言葉に照れて顔を赤くしている。


「「あははは……!」」

「もう……恥ずかしい……」


 部員全員に笑われてしまったため、彼女は一旦、廊下に出て行ってしまった。



 *



 あれから数時間後……。

 三年生の下校の時間を迎えた。

 ゆかりと栗原くんはパソコンと他の部員達が書いた原稿を通学鞄の中にしまう。

 まさりはイラストのデータとそれらの原稿をクリアファイルに入れ、ゆかり達と同様に通学鞄にしまった。


「みんなお先ね」

「戸締まりとかよろしくね」

「お疲れー」

「また明日ね」

「「お疲れさまでした!」」


 ゆかり達三年生とベルはそれぞれの家路に着くのであった。



 *



 ゆかり達とまさりは自転車をゆっくりと漕ぎながら一緒に帰っている。


「ねぇ、ゆかり」

「何?」


 まさりが突然、ゆかりに声をかけ、ゆかりが反応した。


「あの、ベルさんだっけ? あの人とどんな関係?」

「あー……(ベル)はね、私の付き人みたいな感じかなぁ……」

「ふーん……」


 そこに一台の車が飛び出してきた。

 ゆかりはブレーキをかけたが、まさりは……。


「きゃっ!」

「危ない!」

「ベルー!」


 まさり、ベル、ゆかりが同時に声をあげた。

 まさりは事故に遭ったと思われたが、彼女は無事だった。

 一方、ベルはまさりと引き換えに――。


「まさり、大丈夫?」

「うん、大丈夫みたい。だけど……」

「だけど?」

「ベルさんが……」

「えっ……? ベル……ベル!」


 ベルはゆかりの問いかけに反応がなかった。


「ゆかり、心臓が動かない……」


 まさりはベルの心臓マッサージをしたが、鼓動がなかった。


「う、嘘……」

「ベルさんはあたしを守ってくれたんだね……」

「……うん……」


 彼女らは救急車を呼び、それがくるまで彼女らはベルの死を悼むように、静かに涙をこぼした。


 その時、ゆかりはあることを思い出していた。



 *



~回想~


 それは部活中のことだった。


「なぁ、ゆかり。『人格崩壊』を止める方法はないのか? って言ってたよな?」

「うん」

「それを止める方法はη(イータ)、『テレパシー』だ。実は五限目の数学の授業の時に使っていたんだ」

「それは成功したの?」

「成功した。もう、ゆかりにはノイズはいないから安心して普段の生活をしてほしい」

「分かった、ありがとう」


~回想、終わり~



 *



(ゆかり……。今まで一緒にいてくれてありがとう……。オレは君のことが好きだ。今は「好きだった」かな?)

(私もベルのことが好きだったよ。私と一緒にいてくれて本当にありがとね……)

(もう、時間だ……)

(いや! 私はずっとベルの近くにいたい……。いたいの!)

(また、いつか会える……。どこかでな……)

(…………)

【原作版】第4話をベースに改稿


2015/12/31 本投稿

2016/06/21 修正

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