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第13話 なぜ、私は闘わなければならないのか?~複雑な天使と悪魔の囁き~

 私立花咲大学付属中等学校・高等部三年三組。

 そこにはすでにクラスの半分くらいの生徒が教室におり、受験勉強をしたり、たわいのないおしゃべりをしていた。


「おはよう!」

「ゆかり、おはよう」

「大野ちゃん、おはよ!」


 ゆかりが元気よく教室に入ると、彼女のクラスメイトが出迎える。

 ゆかりは教室に入ったらすぐにクラスメイトと話さずに、廊下にあるロッカーに向かった。


「ゆかり、今日はなんの授業があるんだ?」


 ベルは通学鞄からチラッと顔を出す。

 彼はゆかりに他の生徒達に聞こえないように問いかけた。


「えっと、今日は……古文とリーディングと化学と音楽と数学と現代文」


 彼女はロッカーの鍵を開けて、教科書や英語辞書などを取り出し、通学鞄から財布やスマートフォンなどの貴重品をそこにしまい、鍵をかけ、教室に戻ろうとした時だった。


「ゆーかーりー! おはよう!」


 やたらハイテンションな声が彼女の耳に飛び込んでくる。

 隣のクラスの四組であるまさりだ。


「おはよう、まさり」

「もう、会いたかったよ!」


 まさりは毎度のことながら、勢いよくゆかりに抱きついてきた。


「うわーっ……! また、どうせ、「ゆかり不足で死にそうだったんだから!」って言いたかったんじゃないの?」

「おっ、ゆかりちゃん。よくお分かりで」

「いつも言われてるから、もう先が読めるよ。もう少し、周りをよく見てから行動してね」

「ごめん」


 彼女らがじゃれている間に多くの生徒達が通過している。


「もうすぐ、チャイムなるから、またねー!」

「じゃあね!」


 一限目のチャイムが鳴るまであとわずか……。


 ゆかりは重い教科書や英語辞書を抱え、まさりと別れ、教室に戻った。



 *



 午前中の授業は何事もなく過ぎ去った。

 このまま午後も何事もなく終えてほしいとゆかりが願っていたやさきのこと……。


 彼女の心理的な闘いが始まったのは五限目の数学の授業の時だった。


「ねぇ、ベル……。私の代わりに数学の授業を受けてくれない? 私、寝てるから」


 ゆかりは通学鞄からペンケースの中に小さくなったベルを移動していた。

 彼女は小声でベルに言う。


「駄目だ!」


 彼は小声で叫び、一旦、言葉を切る。


「論理の修行の時に言ったけど、覚えてるか?」


 そして、引き続き小声でゆかりに問いかける。


「私がベルに操られている間はいつ『人格崩壊』が起こってもおかしくないっていうことでしょ? 覚えてるよ」

「分かってるなら、寝るな」


 二人でヒソヒソと話している時に、五限目の開始を告げるチャイムが鳴った……。



 *



「授業を始めるから、席に着け」


 数学の担当の玉川先生が教室に入ってくると、生徒達は自席に着いていく。

 学級委員の号令で授業は始まった。


「では、教科書の六十ページを開いてー…………」


 玉川先生が言った途端、ベルはゆかりのペンケースの中である異変を感じていた。


「うわぁ!」

「大野さん?」

「ゆかり?」

「どうした!?」


 ベルと三年三組の生徒達と玉川先生が瞬時に反応する。


 その時、ゆかりはまるで誰かに洗脳されたかのように別人になっていた。

 元々大人びた雰囲気を持つ彼女が更に大人びたように感じ取れる。

 これが先ほどのベルとゆかりの話に出ていた『人格崩壊』というものだろうか。


「うふふ……Σ(シグマ)……」

「きゃーっ!」

「ぎゃーっ!」

「止めてくれー!」


 ゆかりがアルトボイスで言うと、周りのクラスメイトと先生は大騒ぎ。

 彼女は人を敵に回す魔術であるΣを使った。


「θ!」


 そして、ゆかりはさらにθも使った。

 よって、三年三組の教室にいる者は全員、時間を止められている。



 *



 あれから、数分後……。


「ゆかり?」


 ベルはペンケースの中から飛び出し、等身大になり、ゆかりを抱いていた。


「……ベル……?」

「よかった……。オレのこと……覚えていて……くれて……」


 ゆかりは正気に戻り、彼女はベルに静かにこういった。


「なんかね……ベル以外の人に操られてる気がするの……」

「これが最初に言ってた『人格崩壊』というやつだ。これからもずっとそれがあるという可能性は高い……。常に冷静にしていれれば大丈夫だ」


 ベルは静かに言った。


「それを止める魔術はないの?」

「それは……分からない……」

「ベルが分からないほど複雑な魔術なの?」

「あぁ。実はオレも覚えるのにかなりの時間がかかったから」

「そうなんだ……(実はベルが……好き……)」

「……? じゃあ、時間を進める魔術を教えてあげようか?(ゆかり、どうしたんだ……? うっ……なんなんだ……? この気持ち……)」

「うん」


(誰か、教えて……この気持ちの真相……)

(オレも教えてほしい。そして、伝えたい……。今のオレの気持ちを……)

(なんでだろう……。私の思いが溢れてくる……)

(その溢れた思いがオレの思いとして、受け入れてくれ……)

(どうか、あなた(君)の心に伝わって……)


 複雑な二人の思い……。

 二人の思いはお互いの心に伝わるのだろうか……?

【原作版】第3話をベースに改稿


2015/12/30 本投稿

2016/06/21 改稿

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