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第12話 小さくなったベル、いざ、学校へ!

 ゆかりは泣きながら今までのことについて話してきたため、顔に涙の跡がくっきりと残っている。


「……ちょっと顔を洗ってくるね」

「うん。それと……時間は大丈夫か?」

「うっ、ヤバいかも……でも、急げば間に合いそう」


 ゆかりは一度鼻をかみ、使ったティッシュをゴミ箱に捨てながら答える。


「急いで食べて、片付けて、トイレを済まさなきゃな」

「そうだね! でも、最終的にはベルは通学鞄のポケットの中にいるんでしょ?」

「そうだけど」


 彼女らは再び箸を持ち、急いで食べ始めた。



 *



 あれから十分経ち……。

 二人で協力して片付けをしたせいか、思っていたより早く身支度と後片付けが終わった。


「さて、そろそろ学校に行きますか! ベルは小さくなってね」

「分かった」


 ゆかりは小さくなったベルを通学鞄のポケットに入れる。

 それを持ち、部屋の鍵を閉め、自転車置き場へ向かった。



 *



 ゆかりは初夏の風を感じながら、自転車のペダルを漕いでいる。


 その時、「あっ、大野さん、おはよう!」と後ろから男子生徒の声が聞こえてきた。

 彼女は気になり、自転車を止め、後ろを振り向く。


「栗原くん、おはよう!」


 彼女の後ろを歩いていた栗原くんが走ってゆかりのところに駆けつけた。


「大野さん、原稿は終わった?」


 栗原くんがゆかりに問いかける。


「なんとか昨日までに終わらせた。昨日は晩ご飯抜きでずっと書いてたよ」


 彼女は彼に魔術を使って原稿を書き上げていたことを告げなかった。

 なぜなら、ここは魔術も能力(チカラ)も存在しない世界。

 そんな話をしたら、信じてもらえないという現実があるからだ。


「僕はね、図書館に開館から閉館までずっと籠もって書いてたけど、結構ギリギリだったよ」

「そうだったんだ」

「うん。ところで、話を変えるけど、大野さんは朝風呂派なの?」


 栗原くんはくんくんと鼻をならしながらゆかりに言う。


「いや、普段は夜だけど」

「シャンプーがいい匂いだから……」

「栗原くんは観察力が鋭いけど、臭覚も鋭いんだね。君は探偵?」

「いや、僕は探偵じゃないよ。なんか知らないけど、執筆をしたりしてると、人間観察とかなんやかんやしたくなるんだ」

「それは私もよく分かる! だけど、昨日は原稿を仕上げるのが楽しくてそのまま寝ちゃったんだ……」


 ゆかりは自転車を押しながら栗原くんとゆっくり歩いていた。


「ゆかり先輩、栗原先輩、おはようございます!」


 留美が左前方から顔を出し、元気よく挨拶(あいさつ)する。


「留美ちゃん、おはよう」

「広瀬さん、おはよう」


 彼女らは突然、留美が現れたので、一瞬驚いた。

 歩きながらではあるが、反応する。


「ゆかり先輩、例の作品の挿し絵をたくさん準備してきました! もちろん、自分の作品を書きながらですが……」


 留美が自信に満ち溢れた声で、ゆかり達に話す。


「今回はイラストを描く人も小説を上げるんだったんだよね。広瀬さんは長編? 短編?」

「ハイ。わたしは短編ですね。イラストの方もあるので!」

「私は中編だよ! 留美ちゃん、部活が始まるまでシークレットだからね!」

「分かってますー。挿し絵の方もシークレットでお願いします!」

「大野さん、広瀬さん、学校にそろそろ着くよ!」

「本当だ! よーし、誰が一番に校門に潜れるかな? 今度は今日の部活で会おうね!」


 ゆかりは再び自転車に跨り、漕ぎ始めた。


「ゆかり先輩、自転車だからずるーい!」

「だよね。よし、この勝負は僕も参戦しよう!」

「栗原先輩まで! だったら、わたしも!」


 栗原くんと留美も自転車で先を行くゆかりを追いかけるように校門に向かって走り始める。



 *



 私立花咲大学付属中等学校。

 この学校は中高一貫校であり、指折りの人気校。

 中高ともに一学年につき、一クラス三十五人が六クラス。


 ちなみに、ゆかり、まさり、栗原くんは高等部三年生。

 留美は高等部二年生である。


 高等部の制服は女子は学校指定の開襟シャツで黒のスカート、革靴。

 黒のハイソックスは無地かワンポイントであれば大丈夫。


 一方の男子も指定の開襟シャツで黒のスラックスと革靴。

 こちらは靴下の指定はない。


 それ以外の制服は中等部の制服である。



 *



 留美達と別れたゆかりは通学鞄のポケットの中にベルに話しかける。


「ここが私が通っている学校だよ」

「たくさんいるな!」


 彼女らは校門を潜った。

 ベルはゆかりの通学鞄から顔を出し、生徒の人数に驚いている。


「それはそうだよ。私が通っている学校は中高一貫校の人気校なんだから」

「中高一貫校は東京では珍しくないな」

「そうだね。もうすぐ自転車置き場に着くし、みんなが見てるかもしれないから、ポケットの中に入っててね」

「分かった」


 ゆかりと小さくなったベルは自転車を置き、昇降口を通過。

 たくさんの生徒達が集う校舎の中へ入っていった。

書き下ろしエピソード


2015/12/30 本投稿

2016/06/21 改稿

2016/10/16 修正

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