第三の魔物
まさかこんなところでスライムを見るとは思わなかった
巨大で思っていたよりも強そうだ
だが魔法ですぐ焼き払われそうだなこれ
―――災厄の骨の手記
鼠と別れて数時間。一本道を進むと広い空間に躍り出た。
右手には池があり。ここを通るものはこれで喉を潤すのだろうか。
あいにく骨の自分には飲めはしないが見ると和む。
けど何かにごった緑色で動いていないか?
飲めるのだろうか? いや飲めないが。
というよりも水が近づいてきているような。
『おおう!?』
気のせいじゃなかった。足にまとわり付き、だが何かを感じ取ったのかすぐに足からその身を離した。
『スライムか……たぶんスライムだよな?』
よくよく見ると動いている。だが、その大きさは池と勘違いするほどに広く、序盤に出てくる雑魚とは到底いえないだろう。中ボスといった風情だ。だが、何となく魔法に弱そうだな。
『こんなに大きくても冒険者とかにあっさりやられるんだろうな。あれだ。俺を焼いた魔法みたいな奴。あれがきたらお前一発だろうなぁ』
その言葉に恐怖を覚えたのだろうか。びくりと震えたスライムはふるふると震えだした。
『どうみたっていずれここには来るだろうな。逃げるか? いや、移動するには大きいが』
ふるふると震えたかと思うと俺の近くにあった身体の先が千切れるように別れ、小さな緑の動く粘液は俺の脚を這い、肋骨を越え、頭蓋骨の上へとやってきたかと思うとまるで自分の居場所だと言わんばかりに鎮座してしまった。
『そうか。くるか』
だが良く見ると別れた本体と思しき巨大なスライムの方も震えている。分裂した、が正しいのか?
『そうか、大きすぎて全ては移動できないからな。だが、ここにはいずれ人が来るんだろう』
『こう、透明になってやり過ごせたりしないものかね。土に染み込んで、兵士達をスルー! 剣じゃ傷もつけられないだろう。後はあの魔術師の火炎魔術を無効化出来れば文句なしだな』
スライムはふるふると震えるだけだ。
『なあ、進化とか出来ないか? そのままだとたぶん目立って討伐されるだけだと思うんだがな』
震えるだけで反応は無い。
『そうか……だが俺もここで止まって追いつかれるわけにはいかないんだ。この頭のお前の分身と俺は先に行くよ』
『長生きしろよ。やられても超再生とかするんだぞ』
ここにいつまでもとどまるわけにもいかない。上の小さな仲間?と共に先に行こう。
その去った後には髑髏が一つ、転がっていた。
不透明な緑の身体は薄れて消えて
何も無い広大な空間のようにそこは一見見えた
弱者だったそれが奇跡的に長く生きた数十年
死体を喰らい、肉を喰らい、
成長したその身体をそれは失いたくなかった