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邪神 蚊帳の外  作者: トツキトオニ
復讐の追撃者
30/31

エピローグ

 正直震えた

 あの男は私が与えた力などなくてもずっと強かったのだ

 だが、まあ屋敷の守護は貫けなかった

 人頼み恰好悪いと連れに言われたが気にしない

 ―災厄の骨の回顧




『本当にお前の従者は強かったな』

「ええ、私の唯一の従者ですから」

『ミリアージュを当り前のように従者に数えていないのは何なのか』

「今は違いますし」


『無理か』

 と淡々とした様子でこちらに短剣を向けた後呟かれたその台詞に恐怖を覚えたが骨の姿なので恐怖は見せずに済んだらしい。とりあえず最低限の尊厳だけは保てたことに安堵しつつ俺は目の前の二人と茶を飲んでいた。



 あの後とりあえず時間が来てすぐに門を開いた。一週間後だが。姫はあんな死亡前みたいな台詞を吐いていたのに生きていた。いや、まあ本格的に消滅させられる前に事が終わったのが幸いだったのか。心臓は弱点じゃなかったらしい。慢心して様子見なんてするから。まあそのおかげで助かったんだから良いのか。

『私達の方から行きましたのに』

 皇女は門を開いてやってきた俺達にそんなことを言いながらも門の中に入り、屋敷へと入ってきた。

『今戦う気はありませんよ。貴方の手下の見えない何かを討ち、あの三体の骨を討ち、見えないスライムを討つ。貴方の手駒を全て潰して、その後で貴方を最後に潰します。少しくらいなら猶予を与えてもかまいませんよ? 少しは感謝していますし』

『感謝するのに殺すのか』

『少しですし』

 当たり前のように真顔で言う姫に何も返せはしなかった。



『ミリアージュは連れて行かないと』

「ええ、あなたが面倒見てあげてくださいな。浄化しても構いませんよ」

 顔色変えずに少し前まで共にいた少女を好きにしろという。ちょっと薄情すぎる。いや、この二人は互い以外の事は正直どうでもいいのだろう。バカップルというべきか。

『ここで本、集めます』

 魔導士の少女が自分の話題だからか珍しく口を挟んできた。さっきまで本を読んで我関せずといった様子だったのに。そして姫達と同行する気無しだ。

『旅に出て集めないのか』

『ここだと移動に便利、なので』

 門を便利道具扱いするなよ……いやここに来てやたらと使ってる気がするが本来易々とあけていい代物じゃないと俺は思う。あと移動にはむしろ門は使いにくくないか?

『いや、用もないのに開けないからな? 今回はまあある程度手を貸すつもりだったから門使ったが』

『ここに閉じこもって退屈、じゃないです?』

退屈、なあ。そうなんだが。

『まあそうだな。分かった。ある程度は。それにも飽きるほど生きるのに死ぬために神域に行くとするからそれまではな』

「神域?」

 言ってなかったか。いや、言ってないな。管理人の死に方なんて必要なかったしな。

『管理人は見ての通り自分自身の手ですら死ねないからな。死にたくなったら果ての神域とやらに向かって消滅か転生しないと駄目なんだそうだ。まあ死に場所か。俺を殺したいなら俺がそこに行くまでに殺しに来い。まあ殺されてもお前達なら諦めよう』

 姫のカップを持つ手の動きが止まった。何かを思うような表情で動きを止めていたが思考は終わったらしい。またカップに口をつける。

「嫌ですよ」

『は?』

「その口上で殺しに行ったとしてむしろ貴方の自殺を手伝ったようになってしまうではないですか」


「神域で待ち構えてミチビキが来るたびに追い返します。そして頼むから死なせてくれと惨めったらしく這いつくばって請う姿が見る方がよほどいいじゃないですか」

「お前!?」

 こいつ、何言ってるんだ!? いや、こんな性格だからこんな事言い出してもおかしくなかったな。

『そうですな。むしろ自分の手で死を選べない以上死ねない方が苦痛になるやもしれません』

『お前ら、どうしてそう無駄に人の嫌がることをしたがる』


「私達貴方に殺されたようなものじゃないですか」

『お互い様だろう』

 そもそも俺達を呼ばなければ済んだ話だろ。



 本当に意地の悪い性格をしたやつらだと俺は思う。

「では先に聖域に行って待っていますね」

 姫は満面の笑みを浮かべ、七日後二人は去って行った。






『何だろうな』

 死にたくなった時にあいつらが立ちふさがっていたらどうしよう。あれか軍勢でも率いるしかないのか。いや人望がないな。ついでに執事の能力でたぶん一刀両断で終了だ。あれは。

『聖域探しに地上、行きます?』

 やけに生気に満ちた目だ。今まで戦闘でもこれほどやる気に満ちた目は見たことがない。そんなに本を集めたいのか。

『いや、行くが本探しはしないぞ』

『なら書いてください。男の人同士のれ』

『それ以上はやめてくれ』

 死人なうえに腐っている……カタカナ三文字のあれが浮かんだがすぐにかき消した。

『まあ余裕があったらな』

『行きましょう』

『今門閉まったばかりだろう!』

 近いうちに屋敷の一室が本で溢れる、予感ではなく確信を俺は覚えていた。



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