一の魔物の生誕
道の先は行き止まりで骨しかなかった
力尽きた骨か
廃棄場だって玉には城の兵士が見回りに来るに決まってる
脱出口なんて掘られていたらそのままにしておくわけがない
つまりはここから逃げ出すには落とされた穴を這い出すしかないわけだが
用が無いときはしまっている
こんな非力で何のとりえもなさそうな骨に何とかなるわけもない
――――――災厄の骨の手記
結局周囲を歩き回って城の外に出られる道がないことを確認。やることもないまま、スケルトン生活一日目は終わりを迎えた。
どうするか。そのうち見回りが来るよな。死んだ振りとかは出来そうか。あたりにはそこらじゅうに白骨したいがある。そこにまぎれれば当面は問題ないだろう。ただ、何かのきっかけで回収とか儀式の材料に使うとかで連れて行かれそうな気もするので安全でもないが。
ん?
大きな音がした。何かが落ちてきたのか。それがその後二度。蓋を閉めたのか差し込んだ光が消え、再び闇に戻る。
なんだろな? まあたぶん死体だろうけど。
見に行った。
後悔した。
目と鼻を抉られ、耳をちぎられた上脳はぐちゃぐちゃ、内臓は腸が先がちぎれた状態で手足は当然無い。何が酷いって腕と足の切れ目が力づくで引きちぎられたような後だと言うことだよ。何だこれ。ろくな死に方をしなかっただろうと思われる。
……服装から見て明らかだ。三人のクラスメートの死体だった。
拷問か? これなら自分の焼死の方がまだましだと思えるレベルの有様。やっぱりろくな目にあってなかった。
手を合わせ黙祷をささげる。流石に嫌いなクラスメートでもこれに情けはかけないわけがない。
ん?
ふと見ると身体から何かが飛び出ようとしている姿が見えた。心臓からだろうか? というか白い靄みたいな。
出たがっているのは分かったので引っ張ってみる。
苦痛に歪んだクラスメートの顔だった。
まあ、骨の自分が悲鳴を上げても仕方ない。そもそも肉声は出せないしな。テレパスっぽいのは出来るんだが。
『聞こえるか』
うめき声を上げるだけで何の反応も無かった。生前どれだけの苦痛を受けたのか。たぶんもう正気ではない。俺の場合は何か割りとあっさり死んだからかそこらへんは大丈夫だったようだ。
三人分。それを引き出した。
顔は何となく見たことはあるが眼球が無い、鼻が無い、舌が無い、耳が無い。
もうそれで姿が固定されてしまったようだった。
『大丈夫か?』
反応なし。これは……成仏させてやりたいんだが。
3つの苦痛の顔を地面に座ってみながらやれることを考える。思いつかない。
『ん?』
何だか3つの顔が重なってきてるような。
数分が立つと3つの顔は融合し、何か中心からばらばらに顔が突き出したやたらでかい顔の集まりになった。顔は明らかに憎悪を抱いていると分かるくらい歪んでいる。そうか。悪霊になったんだな。
『まあ好きにやってみたら良いんじゃないか……あのろくでもない姫とやらに一泡吹かせてやれ。正直俺はまだこのままでいたいからそっちに付き合ってやれそうに無いが。応援だけはしてる』
反応は無かった。その身体は上に浮き始める。復讐に行くのだろう。
『やれると良いな。何か凄い能力とか身についていれば良いんだが。たとえば魔法を吸収するとか。何かやばそうな炎はあれ魔法だよなぁ。あれは無効化出来たら心強いだろうな』
融合したクラスメートの悪霊は完全に姿を消した。
ん?
何かが崩れる音がして慌てて音の方へ向く。
『何だ、骨の山が崩れたのかって、ん?』
何故か骨の山にあるいくつかの頭蓋骨が歯を鳴らしていた。
『何だこれ?』
何か後妙な感覚を受けるような。力が少し満ちた気がする。気のせいかもしれないが。後目の前の骨の山がちょっと違和感が。何だろな?