幕間 孤独な王
濁る
人を食うのはやはり好かん
自分の精神が濁る気がして仕方がない
力が増してもどこか自分と言うものが希薄になっていく気がするのだ
やはり他人の血肉など自分の中に入れるべきではない
自分と数人が人を喰らうのをやめたのは街の数度目の探索からだ
『見て見て、ちょっと前までここに染み出来てたんだけどさ』
『うわ、綺麗ー。何匹食べたの?』
『今回は5匹かな』
『良いなー。こっちは3匹しか無理だった』
『次があるって』
理解できん。美貌を追求するのは大半の女性の性だ、分かる。そのために他者を犠牲にするのもこんな殺伐とした状況だ、分かる。だが、人を喰らうのは理解出来ん。
確かにその容姿は地球の頃より格段に良くなっているだろう。だが、髪の色は変質し、顔立ちは東洋系からこの世界の今まで喰らってきた民の物へ。
元の世界に帰った時、既にそれは一般的な日本人、とその容姿は言えるのか。人を喰らうことに愉悦まで覚えて日本で何も罪を犯さず暮らしていけるのか。
内心で人を喰らうことに極度の抵抗を覚え、喰らうのをやめた二人以外の全ての女を切り捨てることを決断したのは間違ってはいないだろうと思う。帰ってもおそらくもう全員が殺人鬼になるだろうことは目に見えた。
何より、精神が濁った気がする。その思考に僅かに他者の思考が混ざった気がする。極僅かで気に留めるほどではないとは思うが、それは自分には耐えられるものではなかった。
『方城君』
『ああ、今は好きにさせておこう。力が増すのは悪くないからな』
だが、気づいているんだろうか。喰らえば喰らうほど、自分が本来持っていた能力が弱まる事に。人を喰らうことで他者と混じることでおそらくは濁り、自分の特質も消失していくのだ。
『方城君いっつもあんま食べてない気がするんだけど大丈夫?』
『ああ、心配ありがとう。大丈夫だ。書庫を捜索しているときについでにやっているさ』
『そう? なら良いんだけど何か私たちと比べて力弱いような』
『君達の素質が高いんだろう。羨ましいな』
『そう? 日本のときは私普通だったのに、方城君より素質高いんだー。この世界では私達凄い才能あるんだね。ちょっと帰りたくなくなってきた、かも』
心配しなくても帰れはせんさ。帰られたら困る。人の肉の味を覚えた獣を帰すわけがない。
人を喰らって力をつけろ、と最初に言ったのは自分だからお前が言うなとは言われるだろうし否定はしない。だが、何故俺達は人を喰らって不快感を覚えたのにこいつらは覚えなかったのか。何故、そこで喰らうのをやめようとしなかったのか。
美のために大事な個を捨てるなんてやはり理解出来ん。だが、扱う身としては特異能力を持った弱者よりは何の特性も無いが力は強力な物の方が扱いやすい。
危うく未完結で終わるところでした




