最後の希望
あれからずっとこんなのを終わらせる方法を考えてた
すぐに答えは見つかった
簡単に終わらせることが出来るのだから
今日の夜で終わりに…
学校に生徒がほぼ居なくなった時間まで一人空き教室で時間を潰した
そして私は屋上にいる
屋上から見渡す町は広く自分がちっぽけな存在であることを嫌でも伝えてくる
空では紅い満月が照らしていた
それはどこか不気味で幻想的だった
「…そろそろいい頃合いかな」
一歩前に踏み出す
私は両手を広げた
鳥のように、飛び立ちたい
そう思い目を閉じ、飛び降りようとした時
「待てって!」
「っ!?」
「お前死ぬつもりか!?」
誰かに腕を掴まれた
飛び降りるのを止めさせるような温かい手で
「…紅月 玲?」
クラスの一人
彼だけは私を最期までいじめなかった人
綺麗な瞳の奥はなぜか悲しみに揺れていた
「世良、お前どうして?」
「私の邪魔…しないでよ…」
「…?」
「…やっと…このつまらない日常を終わらせれるの」
「飛び降りた所で何も変わらないだろ?」
「…そんなの分かってる、分かってるよ!」
「なら…」
「…それでも、私は終わらせるの!」
「考え直せって、世良!」
「…紅月、あなたには毎日いじめられる私の気持ちなんて分からない!」
「確かに、俺には分からない…けど、分かろうとすることは出来る」
「誰にも必要とされない、嫌われるしかない私の気持ちなんていじめられない限り分かるはずない!」
「…世良」
もう限界だった
これ以上紅月といると死にたくなくなりそうで…
自分のことがもっと嫌いになりそうで…
紅月の腕を払い私はー
「…バイバイ、紅月…」
飛び降りたー
すべてが終わることを期待してー
落下していく身体
紅月が私の名前を叫びながら飛び降りてきた
彼の手が私を掴もうとしているけれど
かなり距離があるから掴めなくて
だんだん…意識がなくなっていく
紅月…ありがとう…
私の身体が温かな光に包まれた、そんな気がした