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シトリー戦、後処理

 






 次に気付いた所は自宅だった。デスペナルティの一つは強制ログアウト。6時間のログイン禁止も有る。この理由は簡単だ。死んだ肉体の再生にそれだけ時間がかかるのだ。アイテムなどは基本的にロストする。ただし、初期装備と初期装備にセットしてあるスフィアだけはなくならない。後は特殊な装備は残っている場合が有る。デスペナルティが厳しいのはゲーム扱いされているとはいえ、アレは現実なのだから仕方無いと思う。


 それに、リアルでMITに襲われれば死ぬのだ。そう、現実では死んだら終わり。でも、あちらなら少なくとも死なない。全ロストよりはましだろ?

 嫌ならやるな。ヘタレやチキンは知らんという事だと思う。英雄と呼ばれるような、超人を作り出す事が目的なんだしな。


 という事で、プレイヤーは黙るしかなかった。そりゃ、安全に稼げる場所なのだから、文句あるならするなと言われれば反論は出来ない。やればやるだけ儲けられる。それに一度ログインすると、強制的に対MIT戦力としてカウントされるのだから。

 まあ、厳しいデスペナルティの間に睡眠を取ったり、あんまり機能していない攻略サイトを見たりした。意味がなかったので、結局公式を見ただけだが。もちろん、起きたら速攻でログインした。





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 目覚めたのと同じ部屋に俺は移動していた。近くには大村萌衣も居て、忙しそうに働いている。


「蘇生処置は完了しているから、もう出て良いわよ。次は死なないように頑張んなさい。蘇生費用に10万Yenを頂いたわよ」


 大村先生がそう言いながら、新品の黒いPDAを渡してくれる。


「はーい」


 身体を起こして、PDAを受け取る。その後、再確認すると特に問題は無かったので、そのまま部屋を出る。

 現在の時間は7時16分なので、約束の時間までは1時間44分ある。

 取りあえず、座れる所に座って所持金を確認すると、0円になっている。ヘルプを見て、復活後という項目を見ると、そこにはお金の項目があって、アルバイトをするか、狩りをしろと書かれていた。その他のデータを調べると、音楽データが飛んでいたいが、再ダウンロード出来たので助かった。ただ、イヤホンは無いので買わなくてはいけない。


「さて、できるかね?」


 訓練所に行って、的の前で手を前方に差し出す。暗黒魔器作成を起動する。すると、“既に作成されています”と表示された。これは絶望物だ。だが、次の言葉で助かった。“暗黒魔器の場所を表示しますか?”


「もちろんだ」


 表示されたのは昨日、シトリーと戦闘した場所だった。なら、行くしかない。だが、その為には武器がいる。いや、必要無い。全てを無視して駆け抜ける。





 さて、外に出て見たが、流石に危険だ。集中しながら徹底的に索敵とマッピングを使って、MITから逃げながら頑張ったが無理そうだ。未だにMITが大量に集まって居る訳でも無いが、相当数が巡回しているのだ。ビルの間に隠れて警戒しているのだが、隙がない。


「さて、困った……」


「なら、力を貸してあげようか、お兄さん」


「っ!?」


 隠れていた俺の背後から行き成り声を掛けられて振り向くと、そこには黒く長い髪の毛をツインテールにした綺麗な女の子が居た。ジャケットと短パンを吐いて、ニーソックスというかなりラフな格好だが、武装もせずにこんな所に居るのはおかしい。それ以前に、俺の索敵には何も表示されていない。味方や中立の者も表示されるはずなのにだ。


「ボクがアレを殲滅するから、お兄さんはその後で武器を回収すればいい。アレはお兄さん以外には使えないしね」


 少女の言葉に絶句していると、少女はそのまま続ける。


「お礼はシトリーの解析データの使い方にちょっと関わらせてくれるだけでいいよ」


「シトリーのか?」


「うん。アレは成長しきれていない赤子だったけど、正真正銘の魔神だよ。そのデータは皆のナノマシンが成長する力になる」


「お前、クライシス社の奴か?」


「うん、一応社員だよ」


 なら、色々知っているのも仕方無いか。


「シトリーのデータについては?」


「アレは君に特殊スキルと500ポイントのステータスポイントを与える」


 多いな。500ってかなりの量だぞ。


「それで、他の人にも500ポイントをあげられるんだけど、それじゃあ苦労して倒した意味が無いでしょ? だから大体、300から100ポイントぐらいまで劣化したデータを配って欲しいというのがクライシス社からの要請かな」


「300は参加した連中か?」


「そうそう。シトリー戦に参加して勇敢に戦い、散っていった者達へのご褒美だよ。もちろん、君には拒否する事も出来るし、なんならボクが個人的に動かせるお金……8億円で購入してもいい。ただ、その場合は全データを渡して貰い、配布というよりは販売になるけどね」


 まあ、利益を上げないと話にならないだろうし、それは仕方無いな。


「なら、俺と戦闘参加者に配りつつ強化パックとかで配信するとか?」


「それでもいいよ。1人100万Yenくらい出してくれるなら別に問題ないから、3億円で買ってあげる。その場合、君には追加データを気に入った子やギルドに配布するのも自由かな? ただ、100人くらいまでにして欲しいけどね!」


「わかった。それでいいよ。ただ、3億円の方はゲーム内通貨と現実の通過の選択式にして、参加者と被害者に配ってくれ」


「OKOK、任せてよ。それじゃあ、悪いけど解析データをコピーして丸々渡して。もちろん、配布する為に劣化させなきゃいけないし、解析して新しいスキルや武器とかに反映させるから。作ったのは全部無料タダで1個あげるから」


「それは仕方無いな」


 むしろ、無料で最新式の装備が貰えるなら儲けものだろう。


「じゃあ、直結しようか」


「え?」


 女の子は俺に抱きついてきて、首の裏に爪を差し込んできた。俺は慌てて抱きしめる。


「アクセス」


【It was entrusted with compulsive access by administrator  authority. (管理者権限により強制アクセスを受託しました。)

 Does it resist? (抵抗しますか?)

 Partial damage may be carried out when resisting.(抵抗する場合は一部破損する場合がございます)】


「抵抗?」


「抵抗したら壊れるよ? ちなみに勝ち目は有りませんにゃー」


「……抵抗しない」


【It consents to access.(アクセスを了承)

 Direct binding is started.... Completion.(直接結合を開始……完了)

 The data of the number twelve Sitri is copied.(ナンバー12シトリーのデータがコピーされます)

 Is it all right?(よろしいですか?)】


 もちろん、了承するとコピーされた。ようだ。


「よし、これでいいよ。後、これが契約書ね。サインしてくれればいいから」


「わかった」


 女の子が離れて、温もりが消えてしまった。って、何考えてるんだ……とにかく差し出された書類を読んでサインするか。


「ほら」


「確かに。コピーはこっちね。さて、それじゃあ、さっさと滅ぼしちゃおうかっ!」


「頼む」


 女の子はポケットから出した棒状の物をくるくると回しながら、片手に一つずつ握る。そして、MITに突撃していった。


「さあ、ボクと遊んでね!」


 棒から光が溢れて、線みたいな物が伸びた。その後、折りたたまれた物が開くように広げられていき、瞬く間に大剣を構築してしまった。


「あははははっ!!」


 そして、少女は鉄蜘蛛すら、何事もないかのように虐殺していく。その動きは精錬されていて、効率的に敵を滅ぼしていく。身体能力も火力も凄まじい高さだ。ほんの瞬く間に敵が殲滅されてしまった。


「んじゃあ、ボクは運び屋を呼んで一緒に帰るから、また連絡するよ」


「わかった」


 俺も近づいて、突き刺ささったままのダークネスサイズを回収する。


「あっ、これも君の物だよね。渡しておくよ」


 女の子が瓦礫を退けて、あるものを取り出してきた。


「ああ、ありがとう」


 受け取ったのは、シトリーの羽だった。その後、やって来た運び屋連中に女の子は敬礼されて、一緒に帰って行った。俺もそろそろ時間なので急いで帰る。今度は行きと違って楽だ。だが、先程見た女の子の動きを参考にして、効率化を測ってみる。だが、やはり上手くいかない。まあ、タルタルと試してみるか。









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