楓と紅葉①
竹内楓が妹を説得したり準備している間にこちらも準備しておく。学園から供与される機材を選択して自宅に届くように発注するのだ。これらはオプションとして彼女達の値段に追加される。ちなみに選んだのは最新式の軍用コンピュータやサーバー装置を始めた電子戦装備とコンバットナイフや電磁警棒、高電圧スタンガンからアクセサリー型の爆弾や煙玉など様々なものを選択していく。本物の拳銃なども存在しているが拳銃の所持は問題なので短針銃にしておいた。
「エヴァ達もスタンガンくらいは持っておけ」
「わかりました」
「うん。あ、この傘も欲しい」
アナスタシアが指定した傘は防弾仕様で短針銃が仕込まれたものだ。もちろん、選択して防弾ベストなども選択しておく。
ショッピングのように選んでいるとあちらの準備が出来たのかメイドが呼びに来た。
「お待たせいたしました。準備が整いましたのでこちらにどうぞ」
案内されて別の部屋に入る。そこは診察所のような場所で竹内楓とその妹である小学生のような体型の紅葉が裸で待たされていた。紅葉は姉である楓に抱きついて後ろに隠れている。
「これは?」
見た感じ、職員は女性しか居ないので問題はないかも知れないが一応聞いてみる。
「引き渡すので病気などがないかの検査結果と身体の確認をしてもらいます。処女であるかも確認なさってください」
クレームを出させない為の処置か。写真と実物が間違いないか調べさせて納得したら本番の契約という訳だ。だが――
「必要無いからさっさと服を着せろ」
「畏まりました」
二人はよほど恥ずかしかったのか、渡された制服を急いで着ていく。
「いいの?」
「別にいい。見たければ何時でも見れるしな」
「それもそうだね」
「すいません、こちらにサインと拇印をお願いします」
「ああ。エヴァ、どうだ?」
「問題ありません」
エヴァが確認している診断書の結果を聞いてサインをして拇印を押す。これで正式な登録が終わった。これ以降はチェンジすると無駄な金が掛かるようになる。まあ、変えないとは思うがな。
「これで契約は完了です。オプションは後ほど届けさせて頂きます。彼女達の事で何かあれば学園までお知らせください。アフターサービスも行っておりますので。お前達も出戻りになるような事があればわかっているな?」
「ひっ!?」
「はい、もちろんです」
メイドの言葉に紅葉は顔を真っ青にして震えている。竹内……楓の方は直立不動になって微かに震えている。
「怖そうだね」
「ですね」
「まあ、大変な目に遭わされるのは確実だろう」
出戻りの種類にもよるが、楓達の落ち度ならそれは学園側の面子に関わる事だからな。傭兵事業は舐められたら終わりとかあるらしいし。
「さて、行くぞ」
「「はい」」
「うん」
「……」
エヴァは俺の後ろについて、アナスタシアは俺の手に抱きついてくる。楓は一番後ろを紅葉と手を繋いで歩く。空いている手にはアタッシュケースが握られているし、紅葉の背中には小さなリュックサックがある。それぞれの荷物はかなり少なそうだ。これは早めに買い物に行った方がいいな。
そんな事を考えていると桟橋に到着した。既に水上機であるプライベートジェットは飛び立つ準備を終えている。
「直ぐに出発なさいますか?」
待っていたパイロットが聞いて来るので頷く。
「畏まりました。中に軽食をご用意してあるのでお食べ下さい」
「わかった」
「ありがとう」
中に入って座席に座ってシートベルトを装着する。エヴァとアナスタシアも俺の横に座ってシートベルトを装着する。楓は荷物を備え付けの荷物入れに仕舞っていく。
「えっと……」
「そこに座れ」
「わかりました」
テーブルを挟んで対面の席に紅葉を座らせて自分も座る。こちらの準備が出来たのをカメラで確認したのか、直ぐに動き出して飛び立っていく。窓を見れば水上に着陸する為の器具が仕舞われていく。
「またしばらく暇だね」
「そうですね。自己紹介でもしますか?」
「それがいいだろう。俺は東雲孝太。こちらが妻のエヴァだ」
「東雲エヴァです。よろしくお願いしますね」
「はい」
「んで、こっちがエヴァの妹でアナスタシア」
「お兄ちゃんの愛人一号だよ。君達は三号と四号ね。二号はまだだし」
「それなら二号と三号では?」
不思議そうにする楓。まあ、確かにアナスタシアが二号と予定している子はまだなんだが。
「駄目。という訳でよろしくね。アナスタシアでもアナちゃんでも好きに呼んでね」
「はい。私は知っているとは思いますが竹内楓です。楓と及びください」
「楓さんですね」
「お兄ちゃんの愛人になるんだから楓お姉ちゃんだね」
現状、年齢順では俺エヴァ>楓>アナスタシア>紅葉となっている。力関係としてはエヴァの方が正妻なので楓より上だ。
「紅葉、自己紹介を……」
「……や……」
「すいません。この子は人見知りで学園でも引きこもっているんです」
学園の資料では部屋に篭って電子戦の訓練や授業を行っていたようだ。電子戦の成績は優秀だったから許されていたのだろう。
「まあ、気にするな。慣れるまでは仕方がないだろう」
「そうですよ。これから一緒に生活するのですから」
「すいません」
「お前達は俺の家族になるんだ。そんな事でいちいち謝るな。もっとも、やって貰うことはやって貰うが」
「ルールはあるしね」
「もちろんです」
護衛の仕事もしてもらわないといけないからな。
「毎朝、お兄ちゃんとおはようのキスをするの」
「はっ、はい。そんな事をしているんですか……?」
「していますね」
「それは慣れる為と愛し合う為だな」
「わ、わかりました。その、私の立場でこういう事をお願い出来ないのは分かっているのですが……」
「なんだ?」
「紅葉はまだ小さいですから、そっ、その、エッチな事は……」
「駄目だよ。私のひとつ下なんだから、大丈夫」
「中学生とはいえ随分と小さいですね」
小学二年生から三年生ぐらいの130cmくらいしか身長がない。平均より20cmも低いので病気を疑うレベルだ。
「病気はなかったようだが……」
「ナノマシンの影響あるんですが……」
「ナノマシンか」
確か10歳からでも投入は出来るらしいが……この子達は資料を見る限りかなり前から投与されているようだ。親父の会社もクライシス社と協力関係にあるし、そのせいかも知れないな。適齢期の実験台にされたか。
「高度に成長したナノマシンは使用者の身体を若返らせる效果があります。それは思いが強ければ強いほど望む年代へと変化するそうです」
「つまり、それは……」
「私と紅葉の場合は孤児になって学園に入れられたのがこの年齢ですから」
本来の年齢より若返っているって事か。若返った状態から成長するかは不明らしいし、どうにもならんな。統計ではバラバラらしいから。
「もちろん戦闘に支障はないです。むしろ、能力は上がっています」
ナノマシンの学習機能で得意分野に特化したのだろう。特化型はピーキーだがはまればかなり強いからな。
「まあ、話は戻すが俺にはエヴァとアナスタシアが居るから別に構わない。二人が俺に抱かれる心の用意が出来たら自分から来い」
「本当ですか!?」
「ああ。もっとも、俺が我慢できなければ諦めて貰うしかないが」
こんな美少女達と生活して我慢しきれるとは思わないし、出来る限り努力はするが彼女達も了承しているのだから我慢出来ない場合は諦めて貰おう。とりあえず、仲良くなってからだ。エヴァやアナスタシアと違って急ぐ理由もないしな。
「むぅ、私は早く来て欲しいけど」
「アナスタシア、別にいいではないですか。きついならアナスタシアの分も私が受け止めますが」
「それはやだ。気持ちいい事は気持ちいいもん」
「こほん。とりあえず、家のルールとして朝と夜は皆で一緒に食事を取る事だな。これは絶対だ」
「後はキスもだね」
特に紅葉はこちらから行動しないと変わらなさそうだから、接点は多く取らないといけない。
「そうですね。あっ、軽食を用意しますね」
「頼む」
「手伝います」
エヴァと楓が立ち上がって冷蔵庫からパイとケーキ、飲み物を取り出して配ってくれる。それからたわいもない会話やゲームをしながら時間を潰していく。




