ギルドハウスにて②
ギルドハウスを手に入れた次の日、今日は本格的にパーティーをする事になった。1階から3階までは業者が入っているので使わない予定だ。パーティーをする理由は簡単だろう。昨日できなかったからだ。
「これからよろしくお願いね」
「こちらこそ」「「は~い」」「わかった」
そして、参加者は先程挨拶したイヴの友達であるリナに加えてサリム、タルタル、ガレナンガ、俺、イヴ、アナスタシア、アセリアというメンバーだ。リナも俺達と一緒のギルド、ヘクセンナハトに入る事となった。
「大丈夫だったのですか?」
「いやぁ~流石に怒られたけど、相良さん……サリムやイヴ達と一緒だったらって条件で認めて貰えたよ。お父様達もMITの事は理解しているし、襲われても生き残る為だって事を中心に話したら、納得してくれたよ」
「まあ、面倒な事もありますが」
「報告義務を負わされたもんね」
「ええ」
苦労してそうだ。だが、リナの加入にイヴは嬉しそうだし、問題無いか。
「んじゃ、歓迎会も兼ねてパーティーすんぞ。元から普通にパーティーするつもりだったからな。後、各自水着用意しとけよープールに入るかんな」
「プールなんてあるの!」
「無駄にありますよ」
「ああ、どうせ水着買うなら露天風呂もそっちで全開するか」
「それはいいな。どうせ、最初だから混浴だ!」
タルタルの言葉に決定した。
「じゃあ、女性陣は買い出しとパーティーの準備。男性陣3人は稼ぎに出かけるか」
「そうですね」
「ああ。男の水着など直ぐに用意できるしな」
俺の提案に2人は納得してくれた。
「じゃあ、イヴ。そっちは任せた」
「はい、任せてください」
「そっちも金稼ぎ頼むぞー」
「ああ。あっ、アセリアは悪いけど後で合流してくれ。一々運び屋呼ぶのもだるいし」
「分かりました。それでしたら、準備が終わりそうな時間を予想していきますね」
「ああ、頼む」
アセリアが迎えにきてくれるまでは狩りとなった。
さて、男3人の気軽な狩りのつもりだった訳だが……どうしてこうなった!!
「いや~流石にこれはまずいよな」
「調子に乗りすぎましたね」
「ああ、くそっ、どうすんだよ」
背後を見ると、俺達を殺そうと迫ってくる巨大な鉄製の蜘蛛……の上に人の上半身がある存在。
「よりによって魔神かよ……」
「勝てると思うか?」
「3人で? それは無理だ。無謀って奴だな」
俺達は何時もの通りに森で鉄蜘蛛を虐殺していた。すると、行き成り魔神バアルが現れたのだ。だから、俺達は逃げた。
「よっとっ! しかし、雷撃か……」
「耐性装備が欲しい、ですね!」
「だな。まあ、アレだ。もうちょっと準備するべきだったな」
逃げていると、バアルが吠えて眷属を召喚して放って来た。その後、しばらく逃げ続ける。
「おい、バアルはいないんじゃないか?」
「ん? 本当だな」
「なら、狩りましょうか」
俺の言葉に皆が振り向いて制動をかけて止まる。その後、背後に迫っていた雷蜘蛛に対して突撃する。走りながら暗黒槍を作り出して投擲する。雷蜘蛛は雷撃を放ってそれを防ぐ。その間に接近した俺は適当に斬りつける。その後、ガレナンガが攻撃して足を斬り落とす。雷蜘蛛も雷撃を放ってくるが、同じ雷属性を持つ盾を装備したサリムが防ぐ。もちろん、通常攻撃もだ。
「こちらも本気でいくか……」
相手の目をみて、脱衣の魔眼を発動させる。これによって、相手は追加されていた装甲が外されていく。ただ、自分より下位の存在しか効かないし、脱がすのには時間がかかる。なので、ダークネスサイズで斬りつける事を同時に行うのだ。これによって、比較的簡単に装甲を排除できる。
「オラオラっ!!」
ガレナンガは逃げていた時の鬱憤を晴らすように攻撃していく。サリムは挑発して、高速で放たれる雷撃を盾で防ぎ、蜘蛛の糸をバックステップで回避し、足の攻撃を剣で受け止める。
「そこだ!」
俺は急所を攻撃して即死を発動させる。御蔭で倒せた。
「バアルはどうするかね?」
「装備を揃えたら殺しにかかるぞ」
「そうだな」
「ですが、怒られそうですね。狩りの成果がこれだけとなると……」
サリムの言葉に、俺達は何とも言えない雰囲気になった。
「「「はぁー」」」
「まあ、魔神を見つけたって言ったら喜ぶだろ」
「そうですね、それに賭けましょう」
俺の言葉にサリムは微妙な賛同をしてくれる。
「絶対、狩りに行くぞって言われるがな。まあ、どっちにしろ先に準備だな」
「最低でも雷属性の防具が欲しいな」
「土でもいいけどな」
「確かに」
それから、アセリアが俺達の所にやって来た。もちろん、待つ間も殺し回っていたのでそれなりの数にはなったが。取りあえず、俺達も水着を適当に買って戻る。
さて、ギルドハウスに帰ってきた俺達を迎え入れてくれたのは飾り付けられた綺麗な酒場と大量の料理達だった。
「おかえりー」「お帰りなさいませ」「「お帰り」」
「「「「ただいま」」」」
かなり豪勢なパーティーになりそうだが、いくら使ったのやら。
「おいおい、こんなの食べきれるのかよ?」
「ああ、これは夜の分も含んでるからな。余った奴に追加して夜にオートブルに変更するんだってよ。まあ、プールとかでいっぱい遊ぶからな」
「そうか」
「旦那様、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
イヴが冷えたお茶をくれた。俺はそれを飲みながら席につく。そして、皆にグラスが配られる。この中で酒を飲めるのは、俺、ガレナンガ、タルタル、サリムの4人だけなので、俺達は酒で、その他はジュースだ。
「それじゃあ、ヘクセンナハトのギルドハウス完成とギルド結成を祝って、カンパーイ!」
「「「「カンパーイ!!」」」」
グラスを鳴らした後、一気に飲み込む。
「どうぞ」
「サンキュー」
飲み終わると、直ぐに隣に座っているイヴが注いでくれる。他にも、料理をバランス良く取ってくれる。
「……お姉ちゃん……これいらない」
「駄目です。好き嫌いしてはいけません。旦那様もですよ?」
「わかってる」
なんていうか、一生懸命に尽くしてくれるので、ダメ人間になりそうだ。アナスタシアの世話もしていたらしいから、世話も上手いし。
「お兄ちゃん、あ~ん」
「あ~ん」
そんなことを考えていると、アナスタシアがチンジャオロースをあ~んをしてきたので、そのまま食べてしまった。
「アナスタシア」
「嫉妬?」
「ちっ、違います! 貴方、嫌いなピーマンを旦那様に食べさせましたね」
顔を真っ赤にしたイヴがアナスタシアの事を暴露した。結構いい性格しているな。
「ちっ、バレた」
「お仕置きです」
「あっ!? 入れすぎっ!!」
アナスタシアはイヴにピーマンの肉巻きを大量に入れられて、涙目になった。
「あ、あの、旦那様……」
「ん?」
「あっ、あ~ん」
真っ赤になりながらイヴが唐揚げをあ~んしてきたので、食べる。うん、味が良く効いていて美味しい。
「美味しいですか?」
「ああ、美味しいよ」
「良かったです。こちらもどうぞ」
「あっ、ああ……」
気をよくしたのか、照れながらもどんどん食べさせてくれる。
「お姉ちゃんが作ったの、ばっかり」
「ですね」
アセリアとアナスタシアのそんな会話が聞こえてくる。
「エヴァ……イヴは尽くすタイプだからね~」
「リサお姉ちゃん、は、あ~ん」
「はむ。うん、いい感じだね。でも、イヴってこんなに料理できたっけ? プロ並みよね?」
「ん。花嫁修行をした甲斐、出てる」
「花嫁修行ですか?」
「そう。2ヶ月間、監禁されて一流シェフとかに徹底的に教え込まれた。御蔭で家事はなんでもござれ」
そんな事までしてたんだな。
「アナスタシアはできないんですか?」
「私は……和食が一応出来る。でも、面倒だから出来ない」
「それは出来ないじゃないです」
「やらないだけよね」
「私は愛人。そういうのは正妻のお姉ちゃんに任せる」
「ただのぐうたらだね」
「そうとも言う」
どうやら、イヴもアナスタシアにはかなり甘いみたいだな。というか、さっきから俺の世話ばかりしてイヴが食べてないな。
「ほら、イヴも食べろ。お返しにあ~んをしてやる」
「わっ、私はいいです……自分で食べますよ」
「駄目だ。ほら、あ~ん」
「あっ、あ~ん」
箸でエビフライにタルタルソースを付けて、口元に運んでやると、照れながら食べていく。カリカリと齧って食べる姿は可愛い。
「次は何がいい?」
「えっと、それじゃあ……サラダで……お願いします……」
「ドレッシングは?」
「……オニオンでお願いします……」
「はい」
「はむ」
それから、しばらくお互いに食べさせ合う。
「2人だけの世界ですね」
「あっちも大概ですよ」
「そっかー」
「むう、私も参戦」
アナスタシアがこっちに来て、ドレッシングがかかった胡瓜のスティックを口に咥えて、俺の頬っぺたをツンツンしてくる。
「あむ」
俺が片方を食べると、そのまま押し付けるようにしてカリカリと食べてくる。つまり、アナスタシアの整った綺麗な顔が近づいてくる。普段は無表情だが、今はほんのりと赤い。
「おおう」
「大胆です……はわわ」
「どうなりますかね」
「あ、アナスタシア……それはやりすぎです……」
俺の選択肢としては、さっさと野菜スティックをポッキーと同じように折って離れる。もしくはこのままキスしてしまう事。ラノベとかで、良く折る奴が多い。だから、ここは……これに決めた!
「はむはむ」
「はむはむ」
「あわわ」
「後少し……どうなるっ!!」
そして、限りなく近くなって、俺とアナスタシアは見詰め合う。俺が取った行為は簡単だ。
「はむ」
「んぶっ!? んんっ、ちゅるっ、れろっ」
そのままキスした。最初は驚いていたアナスタシアだが、奴は上手だった。更に舌を絡めて身体を預けてきた。なので、そのまましばらくキスをする。
「あっ、アナスタシア!」
「ん。満足」
唾液の橋を舌で舐め取って、姉を無視つつ食事に戻るアナスタシア。
「すごかったのです……」
「そうですね」
「ええ、流石よ、アナスタシア……」
「くそぅ、こっちも負けねえぞ! おい、こっちは口移しで食べさせてやるぞ」
対抗心が強いタルタルはガレナンガに抱きつきながらそんな事を言い出した。
「ちょっ、対抗すんな!」
「なんだよっ、アタシのは食べられないっていうのかっ!!」
涙きそうになるのを必死で堪えながら、不安そうな表情でガレナンガを上目遣いでみるタルタルに……
「わかった、やってやるから泣くなっ!」
「本当か?」
「ああ」
逆らえずに陥落した。だが、遠目で見ていた俺達は気付いた。タルタルがニヤリと一瞬笑った姿を。
「お、恐ろしいね」
「女って怖いですね」
「そうだな」
サリムの意見に同意してしまう。うちとしても他人事じゃない。うちにもタルタルと同じ感じがする、アナスタシアが居るので気を付けなくてはならない。
「旦那様……」
「なっ、なんだ?」
急に隣から声がして、そちらを見ると……イヴもが尻尾の取られたエビフライを持っていた。
「わっ、私も、アナスタシアと……おっ、同じように、おっ、お願いします」
全身を真っ赤にしながら少し、泣きそうになりながらおねだりしてくるイヴ。
「いや、無理しなくてもいいぞ? 本当に」
「いっ、いえ、これも妻の役目です……ど、どうぞ、わっ、わたひぃ、食べてください」
途中で噛んだせいか、一部が消えて凄い意味になったが、俺はどちらの意味でも食べさせて貰おうと思う。
「わかった」
「ひゃい」
それから、イヴともアナスタシアと同じようにした。つまり、イヴの舌も楽しませてもらった。
リナ
「はぅはぅ」
「ねえ、このバッカプル共、どうするの?」
「放置の方向でいきましょう。あっちの方で飲んでましょうか」
サリムが大皿に色んな料理を取っていく。
「そうね。アセリアは……駄目だ、既に魔の手が迫ってる」
アセリアの方を見ると、その手はがっちりとアナスタシアに掴まれて居た。
「ちょっ、見捨てないでください!!」
「逃がさない」
「ごめん、無理」
「そんなぁ~~!!」
私はグラスと飲み物を適当に取って、カウンター席の方へと向かった。少なくとも背後で起こっている事を気にしなくていい。それに近くに置いてあるレコード(レコード型なだけで中身は別物)を流せば気にならなくなる。




