押しかけ女子高生妻と義妹中学生④
エヴァ
授業が終わり、お昼ご飯をリサと一緒に食べ終え、私は職員室に向かいました。そこで、担任の先生から書類を受け取るのです。
「それじゃあ、住所と名前が変わっただけなんだね」
「はい。これからはそちらから通います」
「わかった。それじゃあ、この書類に必要事項を書いてくれればいい」
「分かりました、ありがとうございます」
必要な書類と、時間割などを頂いて、職員室から出ると、リサが待っていました。
「帰ろー」
「ええ。それじゃあ、迎えを呼びますね」
「うん、よろしく」
私はスマートフォンで迎えの連絡を入れてから、玄関で靴を履き替えて外に出ます。
「エヴァ!」
「おや」
「……」
私に声を掛けて来たのは幼馴染の篠宮仁です。彼が私の好きだった人です。
「無事だったのか、色々と噂が聞こえて心配だったんだぞ。電話も繋がらないし……」
その彼が、私に近づいて、肩を掴んでこようとしたので、私は下がって、リナの後ろに隠れてしまいます。
「エヴァ……? どうしたんだ?」
「ごめんなさい。昔のままではもういられないのです」
「どういう事なんだ……?」
「あははは、残念だったね。エヴァは結婚して人妻になったから、浮気と疑われる事を嫌がってるんだよ」
私の代わりにリナが説明してくれて、助かりました。でも、自分で言わないといけない事です。
「うっ、嘘だろ……俺と結婚するって言ってたじゃないか!!」
「ごっ、ごめんなさい。でも、もう私には旦那様が居るのです。だから、今までのような事は困ります。本当にごめんなさい」
「まあ、寝取られたって事でしょ。諦めなさい。アンタはエヴァが困っている時に何もできなかったんだから、仕方無いよ。それに、子供の頃の、当人同士でしかない約束なんて、言っても無駄だからね」
「そんな……事……」
「じゃあ、私達は帰るね。エヴァの事は諦めなさい。行こ」
「ごっ、ごめんなさい、シン。さよならです」
私はリナに引っ張られながら、それだけを言って、校門に待っている車の場所に向かいました。立ち尽くしているシンの姿に、何か不安な事を感じます。
校門に着くと、黒塗りの大きな車が止まっていました。その直ぐ近くにタクシー会社の制服を着た女性の人が待っていました。
「お嬢様、どうぞ」
扉を開いてくれて、入口の上にも手を置いて、頭を打っても大丈夫なようにしてくれています。
「お足元、お気を付けください」
「はい」
私とリサが乗り込むと、確認した後、しっかりと締めて鍵をかけました。
「お嬢様、ご自宅の方でよろしいでしょうか?」
「えっと、先にリサの家だから……」
「桜町の方にお願いします」
「畏まりました」
車が発進して、私達は鞄を置いて柔らかいシートに体重を預けます。
「センチュリーか……ハイヤーを足にしてるんだね」
「旦那様のお義父様がタクシー会社の上なので、専属契約しているそうです」
「うちは普通に専属の運転手かな。まあ、両親が使っているから、私は普通のタクシーだけど」
「そうですね。こんなにしなくてはいいと思うのですけど、安全面らしいですね」
「ちょ、まさか……」
「防弾仕様どころか、MITの金属を使って作られているそうですよ。それの試作型ですね」
「どんだけ金かけてるのよ……まあ、いいわ。それより、どうする? お茶してく?」
「しばらくは早めに帰りますから、寄り道はあんまり……」
「そっか。じゃあ、適当にお菓子持って帰って。もしもし、アタシだけど、今から帰るから、菓子折り用意してて。うん、送って貰ってるから大丈夫。わかった」
リサは家に連絡したようですが……まだしてなかったんですね。
「よし、これで大丈夫ね。あと、EROの名前はイヴ?」
「ええ。今日の夜にはログインしますよ」
「なら、後で一緒に行こうか」
「旦那様に許可を貰わないといけませんが、それで良ければ」
「なら、聞いて音で連絡頂戴ね」
「はい」
それから、リサの家で皇室御用達のお菓子が入った菓子折りを頂きました。その後、自宅に戻ったのですが……食べたまま置かれた食器がある訳では無く、食べられていないサンドイッチが有りました。
「……これは……」
部屋を見て回ると、空いていた部屋に大きな機械が有りました。そこから、2人が出てきたところでした。
「おっ、お帰り」
「お帰りなさい、お姉ちゃん」
「……2人共、ゲームをするなとは言いませんから、しっかりとご飯は時間通りに食べてください。特にアナスタシアはお薬があるんですからね」
「「……はい……」」
「よろしい。それでは、手を洗って食卓についてください。コーヒーを入れますから」
「ん」「わかった」
それから、入れたコーヒーを飲みながら、2人の食事を見ながら必要書類を書いていき、芹香さんの方に連絡して、記入をお願いしました。
「よし、食べ終えたな。続きだ」
「うん。あっ、お姉ちゃんも一緒にやろう」
「分かりました」
「エヴァはどんなキャラなんだ?」
「生産支援型でしょうか?」
「どんなんだよ……」
「一言で言うなら、歌って踊って錬金術を使う付与術師?」
「なんだよ、それ……」
「見ての、お楽しみ。多分、驚く」
「そっか、期待している」
「はい」
その後、私は旦那様と、アナスタシアに連れられて、久しぶりになるのかわからないEROに接続しました。
さて、ログインした俺は驚いた。それはエヴァのプレイヤーネームを見てだ。エヴァのプレイヤーネームはイヴ。ちょっと前にネットにアップされた歌で大ヒットした歌手で、その姿は誰も知らないと言われていたのだ。ネット販売された歌もかなり売られているらしい。どうやら、レコード会社も経営していたらしいので、そこから姿を出さずに販売していたみたいだ。
「乗っ取られましたけどね」
「まあ、いいじゃん。俺はエヴァの……イヴの歌が好きだし、尚更嬉しいかな」
イヴを抱きしめると、イヴは真っ赤になってそっぽを向いた。
「照れてる」
「照れてません! こほん、それで、3人で行くのですか?」
「ああ、4人だな。だが、その前にする事がある。ほれ、受け取れ」
「これは……凄いですね」
俺はシトリーのデータを渡す。
「アセリアが来るまで時間が無いかも知れないが、取りあえずは体力と魔力、頭脳を上げればいい。肉体と精神、速度はゆっくりだな」
「分かりました」
それから、少しするとアセリアがログインして来た。
「お待たせしました。イヴさんもお久しぶりです」
「はい。アセリアも元気そうだね」
「相変わらず、引きこもってますけど」
「それは駄目だよ……アナスタシアもだけど……」
「平気。こっちでは引きこもらないし」
「それって、大丈夫なのかな……?」
「大丈夫じゃないか?」
俺は2人を援護する。俺も引きこもりみたいな者だしな。
「っと、それより早く狩りに行こうか。俺とアセリアが前衛を務めるから、アナスタシアとイヴは後衛で頼む」
「はい、分かりました」
「任せてください」
「了解」
4人が揃っているので、狩り場は鉄蜘蛛が居る場所に向かう。鉄蜘蛛などMITは京都から撤退して、外に広がっている草原の少し先にある広大な森の中へと逃げ込んだ。いや、そここそが、鉄蜘蛛の本拠地だろう。他にも草原には鉄犬や鉄蜂の拠点もあるみたいだ。そう、京都という拠点を手に入れても、結局は四面楚歌なのだ。まあ、ここからが、本当のゲームだろう。そして、この森は蜘蛛の森と呼ばれている。ちなみに、京都タワーに居た鉄蜂女王は別の人達に追い詰められて撤退したらしい。
「初めて来ましたけど、不気味な森ですね……」
「この木は驚くよね……」
「全てがMITに侵食された世界。私達の世界もこうなる」
「そうだな」
イヴが感じた事は皆が思っている。何故なら、木が……全て金属なのだ。そう、この森は金属で出来た木によって、構成された森なのだ。そのくせ、光合成して、酸素と魔力を吐き出している。
「でも、魔力の回復は早いですよ」
「そうだな」
「じゃあ、派手に行くか」
「はい」
「では、支援をかけます」
イヴの歌声が響いて、身体に様々な効果が現れる。そして、アナスタシアが詠唱を開始する。俺とアセリアは木々を破壊していく。素材になるし、特に問題は無い。
「来ました!」
「下がるぞ」
「はい」
俺とアセリアは下がって、森から大量に現れる蜘蛛の群れを見る。
「サンダーストーム」
その群れに向かって、アナスタシアが作り出した雷が嵐のように攻撃していく。蜘蛛達も糸を吐いたりとがんばるが、殆どが黒焦げになって固まる。何かには生きているのもいるが、それは俺とアセリアが突撃して殴り殺し、斬り殺していくので問題ない。
「やばい、身体が軽いな」
「支援効果が凄いですね。テンションも上がりますし」
「だな」
森を破壊し、守ろうとしてやって来る蜘蛛達を殲滅していく。蜘蛛の攻撃を被弾すれば俺は死ぬが、イヴの錬金術の効果の1つにガードスキンというのがあって、1擊だけなら1度だけ防いでくれる。その御蔭で殆ど問題無い。暗黒槍も使っているし、アセリアも暗黒属性を持つ禍々しい装備で敵を殴り、蹴り、粉砕している。
「あっ、これは雷属性ですね。回収っと。ちょっと抜けます」
「ああ」
「どうしたのですか?」
属性金属は属性ダメージを受けて倒れた相手が一定時間以内に加工されないと、ただの金属に戻る事が判明した。よって、倒したら取りあえずインゴットに変えないといけないのだ。という事を、水を飲みながら休憩しているイヴに説明してあげる。
「あっ、それならインゴットは私が作ります。錬金術の得意分野ですから。元となるインゴットを頂ければ確実です」
「じゃあ、お願いします」
「ええ、任せてください」
イヴが地面に魔法陣とはちょっと違う物……錬成陣を書いて、その上に残骸を置く。そして、受け取ったインゴットを光る目で見る。
「解析データを照合……分子配列の変更及び形状の変化……よし、問題なしです」
何か手で操作した後、歌いながら錬成を行った。これによって、瞬く間にインゴットが完成していく。
「凄いです……」
「これは楽だな」
「じゃあ、量産しよう」
「だな」
「はい!」
それから、ひたすら殺し続け、大量の素材を手に入れた。この頃になると、鉄蜘蛛から経験値……ポイントを貰えなくなってきた。だが、手に入れた素材で作った武器を売れば、充分に儲けが出るしな。販売は親父の方に任せれば問題無い。




