押しかけ女子高生妻と義妹中学生③
エヴァ
久しぶりに来た学校は前とあまり変わっていませんでした。当然ですが、MITの襲撃からも逃れていたので校舎が変わることなんてありません。授業の形態は随分と変わってしまいましたが。基本的に午前中で授業が終わるのです。取り合えず、1時間目の授業は問題ありませんでした。
「エヴァ、そっちは久しぶりの学校、どう?」
「大丈夫でした。事前に勉強していた範囲なので」
私に話しかけてきたのは、高山理沙子。私のお友達です。
「優等生め。そういえば、新曲は?」
「ERO限定で出していますね。売上はそれなりにでしょうか?」
全部、借金返済に当てていますけど。
「そういえば、リサもEROをしているんですよね?」
「してるね。というか、やってない奴が珍しい。だって、結局の所、自分や家族、友達を守れるのは自分の力だけだしね。それに……お小遣い稼ぎに丁度良いし」
「後半が本音ですよね?」
「あははは、そうだよー。全部の物価も高くなってるし、お小遣いとか直ぐになくなるよ」
100円ぐらいだった物が、MIT襲撃後は500円から1000円くらいまで跳ね上がってますからね。
「まあ、安くなった物もあるけど。金属部品とかかなり値下がりしたよね」
「まあ、レアメタルとかはMITから取れますからね」
「そうそう。そういえば、エヴァもやっているんでしょ? 今度一緒に行く? 私は弓兵なんだけど」
「私は生産支援型ですね」
「また凄いのを……」
「付与魔術士で、錬金術と演奏魔法、付与魔法を使っています」
「演奏魔法ね……」
演奏魔法は広範囲に演奏している間だけ効果を表す魔法です。魔力を込めた演奏は対象に様々な効果を与えます。それは支援にも攻撃にも使えます。もちろん、効果は演奏の評価で決まります。
「というか、何で付与魔術士? アレってかなりしんどいでしょ」
「えっと、私の歌を永続付与してみようかなって……」
「確かにそれは凄そうだけど、結果は?」
「永続付与のスキルを持ってません」
「ダメじゃん。でも、属性付与ってできるよね?」
「火属性、水属性、風属性、土属性は触媒があるなら30分。無ければ10分ですね。」
一応、私のスキルは錬金術、付与魔法、付与強化、演奏魔法、回復魔法です。魔法適正はスフィアスロットに、装備スロットに火属性魔法があります。攻撃魔法は使えませんけど。むしろ、触媒が無いと火属性以外の属性付与はできません。これが不遇の原因ですね。属性魔法を沢山習得しないと意味が無いのです
「なら、やっぱり一緒に行こうか」
「はい。しばらくはどうなるかわかりませんけど、一緒に行きましょう」
「じゃあ、次の話題だね。気になってたんだけど、その薬指の指輪って……」
「結婚しました」
リサは指輪を見て、そう言ってきました。
「本当なんだ……相手は? やっぱり、真君?」
「いえ……違います。親戚の年上の方です」
「えっ、てっきり幼馴染の真君と一緒になると思ってたのに……お弁当も作ってあげてたし」
「もう、ただの幼馴染ですからしませんよ。それに、付き合っていたわけでもないですから」
「つまり、あの馬鹿は寝取られたと……」
「それは語弊が有りますが……」
「でも、大丈夫なの?」
「私も納得しているので問題ありません。これから好きになって、幸せな家庭を築くだけです。政略結婚ですが、お見合いと同じですから」
「達観してるね……まあ、エヴァがそれでいいなら私はとやかく言わない。ただ、エヴァを不幸せにするなら……ちょっと射抜くぐらいかな。大丈夫、弓道部の力を見せてあげるから」
かなり危険な事を言っていますが、本当にしそうですね。
「むしろ、リサも両親から結婚するように言われているのでは?」
「うん。お見合いを組まされてるけど、無視してる。だって、年寄りばっかだし、後妻とかいやだしね」
リサの家も結構なお金持ちです。この学校自体がそういう人達の集まりですけど。
「ああ、今度旦那さんを紹介してね」
「はい、分かりました。それと、そろそろ授業が始まりますね」
「そうだね。頑張ろ」
「ええ」
久しぶりの授業は楽しいです。お義父様には感謝しなければいけません。退学しなければいけなかった所を休学にしてくださいましたから。
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さて、アナスタシアと一緒にログインした訳だが……このゴスロリ魔法少女は楽しそうに錫杖を振り回している。
「二重構築、双射」
放たれる魔法は落雷を目標物に落とす。その威力は的である案山子を1擊目で黒焦げにし、2擊目で粉々に粉砕した。流石魔力100だ。
「どう?」
こちらを振り向くアナスタシア。その顔は無表情ではなく笑顔だ。
「素晴らしいが、二重構築とかできるのか?」
「並列思考で、処理すれば楽勝」
「それは楽勝じゃないと思うが……」
「ナノマシンの御蔭で、頭脳も格段に進化している。肉体も頭脳も強化されているから、並列思考ぐらい、出来る。出来たら便利。覚える?」
「そうだな。出来たら、魔法を構築したり、撃ったりしながら接近戦ができそうだ」
「ん、出来る」
しばらく2人で訓練していると、来客が現れた。本人からしたらとても大きな槍を持ってだ。可愛らしい女の子には似合っているような似合っていないような感じがする。
「おはようございます」
「おはよう、アセリア」
「ん、おはよう」
「珍しいですね、アナスタシアが私かエヴァさん以外といるなんて。レンさんは知り合いぐらいだと思ったのですが……」
「そう、前は知り合いだった。でも、今は……」
「今は?」
「家族で、愛人」
アナスタシアがいきなり爆弾発言をしだした。そして、同時に俺に抱きついてくる。
「え?」
「あと、お兄ちゃん」
「ええええええっ!!」
無茶苦茶驚いているアセリア。かなり混乱しているようだ。
「あっ、愛人って……ふしだらです……エッチです……不潔です……」
「そこに、変態やロリコンも入る」
「おい、こら」
アナスタシアの頬っぺたを抓って変な事を止める。いや、事実でもあるんだろうが。
「大丈夫だぞ」
「ひっ!? 近づかないでください」
「……」
アセリアはバックステップで無茶苦茶距離を取って、壁に張り付いた。かなり傷ついてしまう。
「大丈夫。安全」
「そんなに離れられると傷つくな……」
「自業自得な所が有りますから……でも、気にしない事にします。それと、アナスタシア」
「ん、任せる。後で色々と教える」
顔を真っ赤にしているアセリアが興味津々のよにしていると、アナスタシアがそんな風に言ってきたのだ。
「おい。それより、アセリアは何をしに来たんだ?」
「あっ、この槍を調べに来たんでした」
「それは?」
アセリアが持っている物は両サイドに槍と刀身を伸ばした様な物が取り付けられ、真ん中に持ち手がある奴だ。
「遠距離攻撃が欲しいと思って、投げ槍を作りました。突く事と投げる事が目的なので、斬る事はあまり出来ませんけど」
「持ち運び、不便そう」
「そうだな」
重量も結構ありそうだ。長さも2メートルくらいだし。
「そうですね。ディメンションポケットを持っている事が運用の最低限でしょうか? 普通の投げ槍もありますけど、結局はそこまで持てませんから。せいぜい、背中に2本くらいでしょうか?」
「だから、片方が潰れてもいいように両サイドか」
「はい。あと、刃の部分は取り外し可能なので、即席の剣にも使えます」
そう言って、アセリアはくるくる回すと刃を取り外してしまった。どうやら、ネジの仕掛けのようだ。そして、直ぐに戻す。
「後は……威力ですね」
アセリアは勢いよく投げる! そして、外れた。しかも、途中で回転して突き刺さりもしない。だが、壁を削る事は出来た。
「……あぅ」
「どんまい」
「ほら、初めてなら仕方無いって。練習あるのみだろ」
「はい……そうですよね、最初から上手くいくはずがありません。練習あるのみです」
そして、アセリアは次々と取り出して投げていく。途中から槍投げの動画をダウンロードして、それを見ながらモーションを近づけていく。ナノマシンによる学習能力の高さもあって、数時間もすればかなり上手くなった。そんなアセリアを見ながら、俺とアナスタシアも練習する。アナスタシアは身体の使い方と近接された状態での戦闘方法を鍛えていく。
「やっぱり、空間魔法のテレポートか、錫杖で戦うしかない」
「いっそ、雷を利用した高速抜刀を可能とする仕込み刀にしてみるのも楽しそうですね」
「そうだね」
「確かに面白そうだ。1擊だけとはいえ、相手はかなり驚くだろうな」
ぶっちゃけ、超電磁砲の原理で打ち出す訳だからな。かなり抉い事になりそうだ。
「もう2時か……」
「ご飯、食べる」
「確かにそうですね。食べた後、どこかいきますか? 希望としては雷属性の金属が欲しいのですけど……」
「そうだな。取りに行くか。アナスタシアもいいよな?」
「ん。大丈夫」
目的が決定した俺達はログアウトして美味しい食事を取った後、出かける事にした。




