アセリア①
アセリア
レンさんが鉄蜘蛛と戦っている間に私は鍛冶をしています。買ってもらった鍛冶セットは、炉や鉄床や槌など高級品です。それらを使って、鉄蜘蛛の残骸を熱して溶かして、冷やして、不純物を浮き上がらせて槌で叩いて、また熱して冷やして叩いて平にして、割って折りたたんで纏めて火に入れて、溶かして冷やして叩くの繰り返しです。それを短剣の形に叩いて整えるのですが……カンカン、パキィィンという音が響くのです。ええ、壊れるのです。壊れた物は劣化して脆くなってしまいまい、最後には消滅します。
「どうだ?」
「すいません、全然ダメです……」
自分の駄目さ加減に泣きたくなって来ます。
「いや、別に構わない。素材はまだまだあるんだから気にするな」
優しく頭を撫でて、慰めてくれました。なんだか、お兄ちゃんみたいです。言いませんけど。
「それより、結構倒したからステータスを更新したらいいよ。いや、面倒だな……よし、手っ取り早くステータスを上げるか」
この人は色々と助けてくれますが、どういうつもりなんでしょうか?
お手伝いしてくれるのは嬉しいのですが。
「アセリア、PDA出して」
「はい、どうぞ」
私は自分のPDAを渡します。すると、レンさんは自分のPDAとケーブルの様な物で繋ぎました。そして、行き成り自分の胸元を開いて、端子を突き刺したのです。
「なっ、何をしているんですか?」
「ナノマシンデータの交換をする為に必要なんだってさ。アセリアもこれを同じように突き刺して。いい物を上げるから」
「うっ……わっ、分かりました。でも、あっち向いてください」
「あっ、ごめん」
顔を真っ赤にしながら、別の方向を向いてくれましたが、どこか残念そうです。やっぱり、男性はエッチな生き物という友達の言葉はあっているみたいです。
でも、色々とお世話になっているので、指示には従います。だから、胸元を開いて、言われた通りします。
【プレイヤー・レンとの直接接続を開始します。よろしいですか? 直接接続をすると、貴方のデータが見られる事も有ります。ご注意ください】
えっと、つまりスリーサイズとか知られるって事ですか?
それは嫌なのです。
「ああ、データを送るだけだから直ぐだよ。変なのは見ないし。見たらバレるから」
バレなかったら見るんですね。でも、大丈夫そうなので、“はい”を選択します。
【プレイヤー・レンとの直接接続を行いました。プレイヤー・レンより、№12シトリーという膨大なデータがコピーされて転送されました。現在、コピー中……】
シトリーって、凄く嫌な名前です。辱めを受けさせられた相手ですから。
「あの、これって……」
「そう、あの時戦ったデータ。なんとか勝てたから、アセリアにあげる。アセリアの悲鳴の御蔭で戦う気になったしね」
「あっ、ありがとうございます……」
思い出すと恥ずかしくて、忌々しい思い出ですが、新しいお友達に出会った事を考えると、プラスマイナスはゼロくらいでしょうか?
いえ、強い人達に出会えたのはプラスですね。エッチな人ですけど。
【シトリーの解析データⅠ、Ⅱ、Ⅲを会得しました。ステータスポイントとして反映させます……ステータスポイント500点を会得しました】
「えっ……何ですかこれ……」
「魔神だそうで、特殊個体だ。まあ、ボスのデータとの事だから当然かな。俺も驚いたけど。ちなみに100万Yenで100ポイントは配布される。参加した人には300ポイントだな。生き残った俺は全データを所持しているから500ポイントだ。それをアセリアにもあげた。他人へのコピーは止めてね。タルタルとガレナンガ達……知り合いには回すつもりだけど」
「わっ、分かりました……」
私は早速ステータスを振ります。全部に万篇なく80点ずつ振って、残りの20点を魔力へと振りました。前のも合わせて、殆ど全部が100点まで上昇しました。
「でも、一気にステータスを振ったら駄目だよ。大変な事になるから」
「え?」
「もしかして、振っちゃった?」
「はい……」
「よ~し、少し身体を慣らそうか。走ってみて」
「分かりました。行きます……ひゃあっ!?」
直ぐに転がって、蜘蛛の巣に突撃してしまいました。それも、突き破ってしまい、次々と蜘蛛の巣に引っかかって、動けなくなってしまいました。
「これって……」
「急激な身体の変化に付いてこれてないだけだから、大丈夫だよ。それより、問題は……」
私の耳にカサカサという音が遠くから聞こえてきました。
「はっ、早く助けてください!! 蜘蛛が、蜘蛛が来ますよっ!!」
「大丈夫だと思うけど、わかった」
レンさんは少しずつ、私の身体を傷つけないように糸を斬ってくれます。
「って、やばいな」
「ひっ!?」
蜘蛛が沢山寄ってきたのです。
「一時撤退だな」
「おっ、置いてかないください……お願いします……」
涙目になって、お願いすると、レンさんは蜘蛛の糸が付くのも気にせずに私をお姫様抱っこで抱き上げてくれました。
「鍛冶セットは回収して、さっさと逃げるからしっかりと捕まってろ」
「はい、分かりました」
そのまま急いで回収して、私達は逃げ帰りました。でも、本当に大変だったのはここからでした。
「えっと、下ろしてください」
「まだ駄目だ。アセリアはまともに動けないだろ。こんな所で暴れたら大変な事になるぞ」
「うぅ~~~」
そのまま、色んな人に見られる中、医務室に連れて行かれて蜘蛛の糸を取ってもらいました。その後、医務室で相談すると、訓練所でリミッターを掛けて訓練させて貰えるそうです。なので、現在はレンさんと対峙しています。もちろん、レンさんもステータスを上げての対峙です。
「じゃあ、ちょっとずつリミッターを外して行こうか」
「はい」
ゆっくり、ゆっくりとお互い素手で組手を行い、確実に攻撃と防御を行います。それをだんだんとリミッターを少しずつ外して、身体に学習させていくのです。辱められたお返しもあるので、本気で攻撃しだします。ですが、防がれてしまいます。それも、だんだんと楽しくなってきて、如何にしてレンさんをだきし抜くかという事を考えて実行していました。
気がついたら6時間も経過して、身体は充分に馴染んでいました。この時にはリミッター無しでお互いに素早く打ち合えるくらいには成長しました。ナノマシンの学習能力は本当に凄いです。
「さて、そろそろ8時だな。一旦落ちてご飯食べるけど、アセリアはどうする?」
「私もご飯を食べないと怒られます。確か、夜9時に集合でしたよね?」
「ああ、そうだ」
「あの、出来たらお友達を呼んでもいいですか?」
「ん? 確か、アセリア入れても5人だし、いいと思う。けど、魔法タイプか?」
「はい、魔法タイプです」
「なら大丈夫か。他の人にはこちらから連絡しておくよ」
「お願いします」
「それじゃ、また後で」
「はい」
レンさんがログアウトしたので、私もお友達にメールを送った後、ログアウトしました。
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ログアウトすると、身体が重く感じてしまいます。ゲーム内の調子で調べて見ると、驚いた事に脳内にアナウンスが聞こえました。
【リミッターが発動中です】
「どうやら、そこまで融合が進行しているみたいですね」
部屋に置いてあったメダルを掴んで、リミッターを外す事を意識して力を込めると、簡単にメダルが潰れてしまいました。
「……」
怖くなって、リミッターがどこまで外れるか実験してみると、ゲーム内と違って、そんなに力を出せませんでした。1割くらいです。つまり、ゲーム内の初期ステータスと同じくらいしか出せません。それでも充分凄いですけど。初期ステータスでもオリンピック選手を軽く倒せそうですから。無期限停止でいつ開催されるか知りませんけど。
「あっ、時間がありません」
急いで部屋から出てお母さんの用意したご飯を食べて、溜まっている食器を片付けます。その後、お風呂を洗って入れます。食器洗いと風呂掃除は私の仕事ですから。その後、ログインして、お友達のアナスタシアちゃんと一緒に待ち合わせの場所へと向かいました。




