1-(4)
遅くなりました、朱雀です
今回は戦闘主体です。
文才がないのは自覚しております、はい
「ルリ、"風"頼む!」
「わかった、『ウィン』!」
レベル上げの途中にも何度かやったやり取り。
ハヤテの合図と共に下級の風魔法を詠唱する。俺の左手に風が集まり、一枚の刃と形を変える。
この世界での技や魔法の使い方は非常に単純だ。
頭の中でイメージする、ただそれだけ。
初心者は戦闘中にイメージを作ることが難しいから技名などを言ったり、強力な魔法の場合は詠唱をするが、それは相手にとってアドバンテージになる。
そのため、上級者にもなると無言でイメージを作り、技を発動するらしい。
手元に魔法を停滞させたまま一気に駆け抜け、射程圏内に入った瞬間、大きく振りかぶって風の刃を投擲する。
横凪ぎに放たれた風の刃は正確にエンハンサーウィスプ…………の憑いたゴブリンへ向かい───
───当たる寸前で斬り飛ばされた。
ゴブリンの振り抜いた粗雑な作りの剣は赤い光を纏っている。
(あれは、『アインス』か………)
直剣の初期単発アビリティ、『アインス』。
俺はハヤテが使っているのを何度か見ている。
だからだろう、俺は迷うことなく次の行動をとっていた。
隣を走るハヤテの右手の直剣がゴブリンの剣が纏ったのと同じ赤の光を放つ。
ハヤテの動きが加速するのを視界の端で確認した俺は細直剣を低めに構えた。
「当たれっ………『スパイク』!」
ハヤテからワンテンポ遅らせてアビリティを発動し、細直剣が黄色の光を纏う。
ハヤテが振り上げた剣が硬直で動けないゴブリンの剣を大きく跳ね上げ、その隙に俺の剣がゴブリンに直撃する。
赤のエフェクトを散らしながら僅かに後退するゴブリン。
しかし、あまりダメージが通らなかったのか、すぐさまゴブリンが突進してくる。
「下がれ、ルリ!」
アビリティの硬直が切れた俺はハヤテに従って一旦ゴブリンから距離をとった。
「邪魔だ、『グラント』」
突っ込んできたゴブリンに対して、ハヤテはカウンターでアビリティを差し込む。
ゴブリンが剣を振りかぶった瞬間、剛直剣の単発アビリティ、『グラント』が発動し、首もとを的確に袈裟懸けに切りつける。
ゴブリンが怯んだ隙に、俺の近くに下がって仕切り直すハヤテ。
「なぁ、ハヤテ、エンハンサーウィスプが憑くとこんなに強くなるのか?」
2発攻撃は直撃したゴブリンだが、HPはまだ8割以上残っている。
「一応レアモンスターだしな。そこそこの長期戦は覚悟しておいたほうがいいかもな」
「はぁ………初日から強敵相手するなんて思ってなかったなぁ」
「まぁ、頑張れよ。その代わりドロップ品は期待していいから………っと、来るぞ」
低く唸りながら向かってくるゴブリンを見据え、剣を構えるハヤテ。
本当、学校でのこいつとは別人みたいだ。
二人同時に駆け出し、再開する戦闘。
剣と剣がぶつかり合い、相手の攻撃を避け、様子見で魔法を放ち、隙を見てアビリティを打ち込む。
そんな攻防を5回程繰り返し、ゴブリンのHPは5割以下、注意域に入っていた。
対して、こちらのHPは二人ともまだ8割程残っている。
「ルリ、まだ行けるな?」
ハヤテの言葉に、無言で頷く。
ハヤテが一直線にゴブリンへと向かい、俺は回り込むように走る。
左右の剣を交差させ、ゴブリンの剣を正面から受け止め、押し返すハヤテ。
そして俺は横から『スパイク』を発動し、ゴブリンに一撃を入れる
はずだった
突然膨張し始めるゴブリンのオーラ
それは徐々に形を成していき、悪魔のような顔の形になる
その顔はグルリと回転し、俺を見る
『グルアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!』
そして、狂ったように吼えた
「っ………!?」
頭が真っ白になっていく
思考が止まり、体から力が抜けていく
発動していたアビリティは中断され、硬直で体が動かない
ニヤリと笑ったゴブリンが赤い光を纏った剣を持ち上げ、そして降り下ろす
恐怖がゆっくりと広がる感覚、世界の速度が落ちるような感覚。
剣がスローモーションのように迫ってくる、しかし体は動かない。
そして俺の首もとに───
───ガスッ
散らばる赤い光の粒
切られたことを示すダメージエフェクトが、広がる。
ハヤテの体から
「……え……?」
剣が当たる寸前、俺とゴブリンの間に割り込んだハヤテ。
なんの防御もなく切られたハヤテのHPは一気に減り、1割ほどで止まる。
「…………失せろ」
連続する剣閃、左右の剣を完璧に組み合わせた斬撃がゴブリンの胴体に叩き込まれる。
抵抗するゴブリンの攻撃を軽々と受け流し、その隙に更に斬撃を重ねる。
「…………『グラント』」
ぽつりと呟かれる技名。
ハヤテの剛直剣が光を纏い、ゴブリンを一閃する。
しかし、それでもハヤテの動きは止まらない
『グラント』のライトエフェクトが消え、硬直が発生する寸前、ハヤテの直剣から赤の光が発せられる。
剛直剣を斜めに振り切った体勢から、一気に体を跳ね起こし、駆け抜けながら更なる一閃。
そして、爆散するゴブリン
連続の剣閃から、2連のアビリティ、全てを完璧に当て、ハヤテはゴブリンのHPを全て削りきっていた。
そして響くレベルアップのファンファーレ。
「ふぅ………終わりか」
深く息を吐くハヤテと、徐々に戻ってくる思考。
戦いの終わった安堵感か、それともさっきのゴブリンの行動で力が入らないのか、俺はその場に座り込んでしまった。
「おつかれ、ルリ。初めての強敵戦、どうだった?」
「…………疲れた、凄く」
心からの感想だった。
「まぁ、そうだろうな。初心者にしては上出来だ、気落とすなよ」
ポン、と上から頭に手が置かれる。
俺の頭に手を乗せながら、空いている左手でドロップ確認をし出すハヤテ。
それを見た俺もドロップ品を確認した。
『碧華刃』
「お、装備品出てる、出だし好調だな」
一人でそう呟くハヤテの裾を軽く引っ張る。
「ん、どうした?」
「なぁ、これなんだ?」
そう言ってドロップ欄をハヤテに向ける。
しかし、ハヤテの反応がない
「ハヤテ?これなんだが──」
「あー、悪い、教え忘れてたわ」
そして俺の手を掴み、ドロップ欄の端に持っていくハヤテ。
そして"Open"と書かれた項目に触れる。
「これでよしっと、ルリ、アイテム欄とかステータス欄はそのままじゃ他人には見えなくなっててな」
「………え?」
「さっきタッチしたOpenを押さないと他人が見るのは出来ないんだよ」
ということはこいつは見えない項目を感覚で押させたのか、どれくらい慣れたらそんなことが出来るんだ
などと思わず考えてしまった。
「それよりドロップだな、えっと…………『碧華刃』か」
ふむふむ、と言いながら少し考えるハヤテ。
「それは、特殊装備スキル【刀術】で使えるようになる刀系の武器だな」
「刀?」
刀なんて武器は最初の武器選択になかったはずだ
「あぁ、スキルの解放条件は確か、剣類スキル一つの熟練度100以上と、敵の剣を10本破壊だったな」
「今の【細直剣術】の熟練度は…………23か」
【細直剣術】23/1000
まだまだ熟練度は足りないし、武器破壊なんてしたことも無い。
「しばらくは刀術解放を目指すのもいいかもな、手伝えることあれば手伝うからな」
「んー………考えとく」
軽く返事を返しているうちに、ステータス振りまで終え、やっと立ち上がれた。
「了解、俺はもう少し狩ってるけどルリはどうする?」
「あー、俺はいいや、疲れたししばらく休んだらハヤテの家行っていいか?」
「わかった、んじゃ後でな」
「おう」
そうして、俺はハヤテに手を振り、一旦ログアウトした。
改めて思いました、盛り上がりが全く足りませんね
頑張ってもっと面白く書けるよう努力します
次回は少しリアルサイド
感想、誤字脱字報告等お待ちしております