Episode2-始動
2話目投稿です。
自分てもびっくりするくらいグダグダです。ご注意を。
"Episode2-始動"state……
現実時刻2101年4月2日 6:50
「【RollLink-Online】……か」
とあるゲーム屋の前、まだ薄暗い早朝だというのにそのゲーム屋の前には長蛇の列ができていた。
その列の一番前に並ぶ黒髪短髪の少年、飛鳥井朱は呟いた。
その視線の先に映るのはゲーム屋の看板。そこには大きく赤の文字で『今話題絶頂!世界初のVRMMORPG、【RollLink-Online】、本日発売!!』と書かれていた。
日本の大手企業が開発した仮想空間精神接続機器、"コネクト"は世界で初めて完全なる仮想空間を作ることに成功した正に最先端技術の結晶だ。
しかし、現実世界に出来る限り近づいた仮想空間を作ることができる"コネクト"では感覚や痛覚も実際に体感するため、戦闘のあるゲームは危険性が高く、今まで製作は難航していた。
だがついに、その安全性が認められ、"コネクト"を利用したVRMMORPG、【RollLink-Online】が今日発売される。
【RollLink-Online】は片手武器16種類、両手武器12種類から好きな武器を選び、それを単体、または片手武器を二つ持って戦うゲームだ。自分の使用する武器の組み合わせによって"ロール"、所謂職業が決められ、プレイヤー達は"アーツ"と呼ばれる技を使って攻略していく。1層から順に500層までのエリアがあり、その中の大半はモンスターの徘徊する戦闘エリアだが、時折NPCや店が存在し、プレイヤー達の休憩所である市街エリアやそのフィールドのモンスターを殲滅することでそこにプレイヤーが新たな街を作ることができる未開拓エリアなどがある。これが【RollLink-Online】のシステムだ。
口数が少なく、クールな印象を持たれる朱だが、実は自他共に認める廃人ゲーマーであり、その朱が【RollLink-Online】を買わない訳は無く、朱は前日の閉店前から店の前を陣取り、開店直後に手にいれようとしていた。
朱は買い溜めしておいたスポーツドリンクを飲み、蒸し暑い夏の朝を乗り切っていた。
そんな時、店のシャッターが上げられる音がした。
「来たっ……!」
開店と同時に店の中に走り込み、ズラリと並んだ【RollLink-Online】の棚からソフトを二つ手に取る朱。そのままレジで会計を済ませた朱は全速力で家へと駆け戻った。
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「ただいま……」
疲れたような声を出しながら横開きの扉を開き、家に入る朱。
朱の家は瓦の屋根に木造と、昔ながらの家だ。飛鳥井家は先祖代々、剣術の道場を開いている。現在は朱の父親である飛鳥井雄次が師範をしていて、朱ももちろんその道場に通っている。大人から子供まで幅広い年齢の生徒がいる飛鳥井家の道場だが、朱は高校3年生ながら大人をも圧倒する実力の持ち主だった。道場で数少ない二刀流の使い手であり、後輩達にも優しい朱は生徒達からとても好かれていた。
「親父、これ」
朱は真っ先に居間に入ると、椅子に座ってテレビを見ている父親、雄次に二つある【RollLink-Online】のソフトの一つを手渡した。
「お、首尾よく買えたみたいだな」
「ああ、朝から並んだかいがあったよ」
雄次も朱には及ばないが、実はかなりのゲーマーだ。
【RollLink-Online】も朱の分の金も負担する代わりに朱に買ってきてもらっていたのだ。
既にテーブルの上には2台の"コネクト"が準備されていた。"コネクト"は頭全体を覆い隠すような形になっていて、バイクなどのヘルメットと同じような形をしている。
「あ、お兄ちゃんおはよ~……」
奥のキッチンからピンク色のパジャマを着てまだ眠そうな目をしながら出てきたのは朱の妹、飛鳥井水樹。人と関わるのが苦手な朱とは対照的に人と話したり遊んだりするのが大好きな中学1年生だ。もちろん水樹も道場に通っている。
「今頃起きたのかよ……相変わらず遅いな」
「うるさいなぁ、そういうお兄ちゃんだって相変わらず無愛想じゃん!そんなんじゃモテないよ?」
「……元々俺はモテるような顔でも性格でもねぇ」
「はぁ、その言葉も相変わらずだよね……」
「……なに言ってんだ?」
実は朱は誰にでも平等な性格や道場でトップの実力、さらにはクールな言動などが合わさって道場や学校では人気がある。だが朱はそれに全く気づいていない。
「まぁいいや、それより親父、そろそろ始めるか?」
「ん?そうだな、ほい、これ」
テーブルの上に乗っている"コネクト"を1つ取り、朱に投げ渡す雄次。
朱は内心、投げるなよ……高いんだから。と思いながら二階の自分の部屋へと向かった。
朱の部屋は普通の学生の部屋だ。置いてあるものは最低限の物だけで、勉強机にベット、そしてクローゼットがあるだけだ。
部屋に入ってそのままベットに仰向けになる朱。手慣れた動作で"コネクト"を頭に被ると、"コネクト"の電源ボタンを押した。
同時に顔全体をなぞるような奇妙な感覚と共に朱の意識は暗闇へ落ちていった。
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『プレイヤーネームを設定してください』
俺が目を覚ましていきなり目の前に現れた文字。俺がいまいる場所はなにやらよくわからない真っ白な部屋だ。壁は無く、幾何学模様の書かれた半透明の床は果てしなくどこまでも続いてそうだ。
とりあえず、目の間に浮かんでいる白のキーボードに手早く文字を打ち込む。
『プレイヤーネーム、"シュウ"、でよろしいですか?YES/NO』
消えたキーボードの代わりに出てきた二つのパネル。俺はなんの迷いもなく『YES』のパネルをタッチした。
これで俺の【RollLink-Online】内での名前が確定した。名前は単純に現実での名前をカタカナにしたものだ。いちいち決めるのは面倒だし。
『続いてロールを選択してもらいます。次の中から片手武器を一つ、または二つ、もしくは両手武器を一つ選んでください』
出てきたのは16個の正方形と12個の横幅が正方形の丁度2倍の長方形のパネル。そしてその上には長方形と同じ大きさで真ん中を縦に点線で区切られた長方形。
正方形のパネルにはそれぞれ《長剣》《細剣》《曲剣》《短剣》《刀》《槍》《斧》《メイス》《籠手》《爪拳》《鞭》《弩》《魔弾銃》《ブーメラン》《盾》《大盾》と、長方形のパネルには《大剣》《太刀》《ランス》《斧槍》《薙刀》《大斧》《鎌》《ハンマー》《棍》《弓》《魔弾砲》と書かれていた。
どうやら正方形のパネルが片手武器、長方形のパネルは両手武器のようだ。
これも俺は全く迷わずに正方形のパネルを2つ上の長方形パネルにはめ込んだ。
『右手武器、《長剣》。左手武器《長剣》。この組み合わせだと【ソルライトブレーダー】になりますがよろしいですか?YES/NO』
俺が選んだのは無難に《長剣》の二刀流だ。 現実で使いなれている分、こっちでも使いやすいだろう。
再び現れた2つのパネルの『YES』をタッチした。
『Name:シュウ
Weapon:右《長剣》左《長剣》
Roll:【ソルライトブレーダー】
このキャラクターでゲームを開始してよろしいですか?YES/NO』
三度、パネルの『YES』を触れると俺の体は光に包まれ始めた。
『キャラクター制作が完了しました。それでは【RollLink-Online】の世界を存分に堪能してください──健闘を』
この表示を最後に、俺の意識は再び暗闇へ落ちていった。
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現実時刻2101年4月2日 8:14
第1エリア[スターターサークル]
始まりの地、[スターターサークル]──かなり広大な噴水のある広場で俺は目覚めた。ここにはこの噴水広場以外にも様々な通りや広場があるようだ。恐らく10000人くらいは入るんじゃないかと思うほど広い。
周りにはかなり多くのプレイヤーがいた。中学生くらいのやつもいれば、50代くらいに見えるやつもいる。この【RollLink-Online】では、自分のアバターの外見や体格は現実の体と同じになる。これはゲーム内から現実世界に戻ったとき、背が変わっているのが原因で様々な問題が発生するのを防ぐためだ。具体的にどうやっているのかは知らないが"コネクト"による電磁波がかんけいあるらしい。
だが一つ気になったことがある。
それは──
「なんでみんなこっち見てるんだ……?」
周りのプレイヤーがほぼ全員、俺の事を見ながらなにかコソコソと話していた。
よく耳を澄ませて聞いてみる。
「あいつ《長剣》2本持ってるぞ?【ソルライトブレーダー】じゃね?」
「【ソルライトブレーダー】って確か滅茶苦茶雑魚のロールじゃなかったっけ?」
「あいつ攻略サイト見てないのか?」
「流石にそれは無いんじゃない?たぶんただ単に馬鹿なだけだよ」
「…………は?」
思わず口から疑問の声が溢れる。
攻略サイト……?
とりあえずメインメニューを開く。やり方は簡単、頭の中でメインメニューと念じながら手のひらを前に出して横にスライドさせるだけ。
俺が手を滑らせた場所に半透明のパネルが現れる。そこの右半分には大きくステータスが表示されていた。
─────────────
シュウ
Level:1
Roll:【ソルライトブレーダー】
HP50/50 MP15/15
ATK:5
DEF:10
SPE:25
MAG:7
STR:12
DEX:23
INT:6
LUK:9
─────────────
俺は軽くステータスを確認するとメニューの項目を探し始めた。
その中の多数ある項目の中から見つけることができた。"攻略サイト"──
実装初日なのに情報なんてあるのか?と思いながら軽く読んでいく。
そして"オススメロール"の欄を見たとき、俺が見られていた理由がわかった。
『【ソルライトブレーダー】、【ルナティックブレーダー】、【イクリプスブレーダー】の3つは、平均的なステータスが低く、特に攻撃力が最低クラスで低いのでオススメしません』
…………なんだこれ
《長剣》二刀流が【ソルライトブレーダー】、俺の選んだやつだ。《曲剣》二刀流が【ルナティックブレーダー】になるようで【イクリプスブレーダー】は《長剣》と《曲剣》を一本ずつ持ったロールらしい。
それよりも、だ。一体どうやって実装初日にこんな弱いだのステータスが低いだのの情報が入ったんだ?
しかし、それはその疑問はすぐに解消された。
『このサイトの情報は2100年8月9日から開始されたβテストの情報を元に作成されています』
β……テスト!?
8月9日……あ、俺が他のゲームを思いっきりやりこんでた時期だった。そういえばあの頃はそのゲーム以外の情報は全く見てなかったな…………
まぁ……
「仕方ない……か」
うじうじ考えてても仕方ない。現実での剣の腕があればなんとかなるだろ。親父と合流する前に……少し狩るか、足引っ張りたくないし。よく考えれば合流場所とかキャラ名聞いてないな、少ししたら落ちて聞くか。
そう思い、俺は次のエリアへ向かった。
最初の戦闘エリアであり第2エリア、[プレーンロード]へ──
感想、誤字脱字指摘等お待ちしています。
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