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第五話 夜空に光るは黒い連星


「村長ッ!!大変です!!」


――ジュエル達がアンドレイク家屋敷にて黒い鎧の兵士と遭遇する、数刻前。


村の最西端に位置する他の家屋より少々立派な建物。


そこのドアを一人の男が、必死の形相で何回も何回も叩いていた。


「…何よ、煩いわね。今何時だと思ってんの」


扉が開き、気怠そうな表情を浮かべながらそこから出て来たのは妙齢の緑髪の女性。


右目を擦っている様子を見ると、つい先ほど目覚めたらしい。


「マリスさん呑気に寝ている場合じゃないですよ!!

敵襲です!!

それもあの『黒装束の並列』!!」


「あん?ああ、隣国の黒兵どもの事か。

あんな雑魚ども、教育所の連中に任せりゃなんとかなるだろう?」


それだけ言うとマリスは「じゃ、もう一眠りするか」といって、玄関を後にする。


「ちょ、そんな簡単に済まさないでくださいって!?」


焦った男はマリスの襟首を引っつかみ、引き戻そうとする。


「…あんた、村長の妻をそんな乱暴な形で引き戻そうなんて、中々度胸あるじゃないか」


「変な事に感心してないで、真面目に聞いてくださいよマリスさん!!

そもそも教育所の連中が無事だったらこうして貴女達のところまで行きませんって!!」


「それもそうだ」


たった今重大な情報を聞いた筈のマリスは、たったのその一言で受け流す。


「………で、なんだい?

本件は?」


「今言ったばかりじゃないですかぁぁぁぁああああっ!!!」


男、絶叫。

マリス、耳を塞ぐ。


「ばっ…、こんな夜中に何バカデカイ声出してるんだ!?

御近所方に迷惑だろう!!」


「へぶるばっ!!」


そしてどこからともなく取り出したフライバンで、その男の頭をおもいっきり打ち付けた。

…酷い。


「…な、何も全力で殴る事…」


「あんた人としての礼儀を教えるべきみたいだね…!

正座しな、正座!」


「んなっ、何トチ狂った―――」


「い い か ら 座れぇッ!!!」


「ひぃぃッ!?」


マリスのあまりの気迫に圧倒されてしまった男は、真に不本意な事に地面の上に正座する羽目になってしまったのだった。


…しかし第三者から見れば、マリスの方に非があるのは火をみるより明らかだろう。



「全く、あんたは今まで一体どんな教育受けてきたんだい?

この村の一人として生きるのなら、ちゃんと村のルールを守って貰わなくちゃさね」


「そ、それは解りますが何分今は非常事態――」


「まだ口答えするかぁッ!!」


「ヒィィッ!?」


男、涙目。

ここまできたらもはやマリスの方が近所迷惑だろう。


男はそう思ったが、口に出すことは出来なかった。


今一瞬でも反抗すれば、今度は殺されかねないからだ。


「もういい、解った!!

クラム、あんたがその気ならこちらとてそれ相応の対応を取るまでよ!!」


「おいそこの貴様!!今すぐ両手を挙げて地面に伏せろ!さもなくば貴様の命はな――」


「だ ま ら っ し ゃ い !!」



フライパン、フルスイング。


どこからか沸いて出て来た黒い鎧の男の顎下に、宙を切り裂いて飛躍するフライパンがクリティカルヒットする。


男は声も出さず、否、声も出せずに放物線を描きながら気絶した。


「………今のですって!!今見たいのが今村中にわんさか居るんですよ!!」


「…こんな雑魚いのがかい?」


「それはマリスさんが強すぎるんですよ!?」


しばらくの間唖然と口を開きっぱなしだった男――クラムだが、気を取り直して指摘する。

そう…この風奉りに谷の村長である『ネグティブ・ラオス』、並びにその妻である『マリアゼル・ラオス』は、強い。


そもそもこの風奉りの谷は風属性の魔術師達が集う修業の里として作られた村。


村長達が兵士達を一撃でぶっ飛ばせる程、一般を逸した実力を持っていてもおかしくはないのだ。


…勿論、家庭用の何の変哲もない鉄製フライパンで、尖兵を吹き飛ばした事も含め。


「…で、どうしましょうか、マリスさん。

闇の尖兵隊の対処は。正直教育所の連中が敵う相手とは思いませんし。

てか既に倒されてますし」


「…ったく、だらしの無い連中さね。他に奴らとやり合えそうなのは、村にいないのかい?」


ようやく話がマトモな方向へ進んだ…。


そう、マリスにバレないようそっと一息付くクラムだった。


「…実力的には私、貴女達二人と、自衛隊上層部の従属傭兵達…それとストリーム家とアンドレイク家の子息達でしょうか」


その二つの名前を聞いて、マリスは思い出した。


この辺境の村にも一応、学園という程大層な物ではないが、『教育所』という育成施設が存在する。


しかし教育所には、まずテストもなければ一定の期間さえ通い続ければ授業を受ける義務もない。

なので最低限の授業だけ受講して、それ以後はグータラ自宅で過ごしている怠け者が多い訳なのだが。


「…そういや、高等部の授業領域に入っても、未だ授業を受けてる物好きが三人いたねぇ…」


「多分彼らの実力を考えれば、自分の身ぐらいは守れると思いますが…このままだとこの村占領されてしまいますよ?」


戦闘訓練で教育所の教員達を一切寄せ付けず、これでもかとフルボッコに叩きのめすジュエルとサリナの二人だが、それでもこの状況が不利な事には変わりがない。


腕利きの傭兵達が居るいは居るが、せいぜい5、6人ぐらいの筈だ。


対し、相手側の兵員は約150相当。

まさに、多勢に無勢。


「ちょっと本気を出すべき時なのかねぇ、これは。

筋肉痛になるから嫌なんだけけれども」


「…大丈夫ですか?マリスさんといえども、闇の帝国尖兵の連中ですよ」


「フン、嘗めるんじゃないよ」


全身に風を纏い、宙を浮くマリス。


そんな彼女は不満気に鼻を鳴らし、クラムをジロリと睨み見る。


「私ぁ風奉りの谷の村長の妻。

あの人に相応しい人間になれたんだから、それなりの強さを誇っているつもりさ。

それに…」


不適な笑みを浮かべ、マリスは言う。


「もし私が取り逃がしても、私の旦那が一網打尽に捕まえてくれるさ」


言葉を発しながら、マリスは両腕を大きく開く。


掌に集束するのは、多大な質量の緑色の光体。


「なんたって、旦那は元『風帝』だったんだからねぇ!!」


そんな合図と共に、マリスの両手の光が爆発した。


手首の部分を重ね合わせ、上下に大きく開いたその根本から緑色の光線が噴出される。


右端から左端へと、一掃。


その光線が当たった兵士達は、風の魔力に呑まれ、錐揉みしながら空へと吹き飛んでいった。

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