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第二話 緑の魔石とお姫様


『…ええ、そうです。

ここから南東に4、5キロ先に進んだ森で、異様な魔力を感知しました。

恐らく、そこにターゲットは潜伏していると思われます』


ノイズ混じりの声が、無線の奥から響いて聞こえる。


彼率いる、黒装束の軍勢は、真夜中の渓谷を闊歩しその森とやらに向かっていた。


「…そこに居ると見て、間違いないな?」


『ええ、魔力の属性、質、量からして間違い無いと思われます。

分城が陥落して、今やあの魔石を持っているのは彼女しか有り得ません。

…必死に逃げ延びているようですが、所詮はか弱い王女様。

我々の手に落ちるのはもはや時間の問題でしょう』


「…そうか。

任務を引き続き続行――」


彼は無線を切ろうと、上部のスイッチに指を伸ばす。


…しかし、その後に聞こえた声が、彼の伸ばす指の動きを止めた。


『…なんだ、これは…!?』


「どうした!?」


『新しい魔力が検知されました…!!

深い緑色の魔力…

恐らく先の光の魔石と、ほぼ同等の…!』


「…何?どういう事だ?」


『は、はい。

光の魔石の魔力が検知された森の、更にそのすぐ先…

風奉りの谷に、風の魔石の魔力が……』


「本当か!?

まさか、こんな奇跡的に同じ場所に魔石が現れるとは…

王女様が魔石を空に解き放った時はどうなるかと焦ったが、運命の女神は私達に微笑んでくれているようだ」


知らず知らずの内に握りしめてした手から、一筋の血が流れ落ちる。


(…何と言う幸運…

二つの魔石を持ち帰れば、私の二階級特進も夢では無くなる…!)


顔に現れた微かな笑みを消そうと唇を固く占めようとするも、効果は無い。


「分かった。お前は今までと同じように任務を続けろ。

…魔石は二つとも、私が回収する」


『…大丈夫、なんでしょうか。

魔石は昔から持つ者を選ぶと…』


「私の剣の腕は伊達じゃない。

お前達がこの世に生まれる前から剣を振るって来たんだ。

安心して、任務に戻れ」


『…了解致しました』


プツン、と回線が切れた。


    ―§=☆=§―




『…中々美味だったぞ、人間よ』


凪矛が突き刺さった先にあった物は、バラバラに砕けた緑色の破片ではなく、宙に浮かんだ、碧色の宝石だった。


「んなぁっ!?」


サリナは目を見開いて、、その宙に浮いた碧色の宝石を凝視する。


『どうしたそこの人間、何故我を食い入るように眺め見る』


その視線に気づいたらしい宝石は、無い顔をサリナに向けてそう言った。


「な、なんでって…

何なの、アンタ…

無機物が喋るわ、凄く濃い魔力が辺りに漂うわ…」


そこで一旦顔を伏せて、その宝石の真横を呆れた目で見遣る。


「どっかの誰かさんは、今だに矛を突き刺し続けるわ…」


『…別に痛くはないが、ここまでされると欝とおしいのでこやつを離して貰えるか?」


「一度張り付くとスッポン並の粘着力を発揮するから、私には無理よ…」


「無駄話してねぇで自宅弁償しろよ宝石さんよぉ!

喋れるんならなおさらだ!!」


『…成る程。

それなら致し方あるまい……」


その瞬間、はっきりと目で見て取れる程に濃厚な魔力が発せられる。


まるで宝石が爆発したかのような衝撃が瞬時に発生する。


宝石の上を陣取って執拗に攻撃を加えていたジュエルは勿論、そこから少し離れた場所に立っていたサリナまで吹き飛ばされそうになる。


「うおおおおっ!?」


「ちょ…こっち飛んでくるなぁっ!!」


足を付ける場所を無くしたジュエルが空をさ迷い、丁度よくサリナ目掛けて飛来して行く。


それを拒否するようにサリナはあろう事か、迎え撃つかのようにファイティングポーズをとって睨み付けるようにジュエルを見る。


「……!?」


そして空を飛びながらそれを見つける導体視力に優れたジュエル。


「…え、えーとまさかぶん殴ったりしませんよね、サリナさん?」


「あら、今日はやけに感が冴えてるじゃないの」


そんな恐れを抱くジュエルに、肯定と取れる返事を返す。


そして。


「吹き飛べやぁっ!!」


バキィィィッ!!!


タイミング良く目の前に現れたジュエルの頬に、戸惑いなく拳を叩き込んだ。


「…チッ!!

急いで自分の頬を魔力でコーティングしたのね…

通りで手応えが無い訳だわ…」


『…我としては己の友人を躊躇なく殴れる事に疑問を覚えるのだが…』


「死なないわよ、ジュエルだもの」


そういってサリナは岩壁にぶつかり、ずり落ちた瓦礫の中で一時の眠りについたジュエルを見遣る。


『…いや、そう言う問題じゃなく…ぬ?』


「…どうかした?」


『…強大な光の魔力がこの場に迫って来ておる。

…かなりのスピードでな』


はて?と首を掲げたように喋る宝石。

…首なんて存在しないのだが、実際。


「…それって一体どれぐらいの?」


『ふむ。どうやら我とほぼ同じぐらいの魔力のよう―――』


答はエメラルドが喋り終わる前にやって来た。




ドスン、と大きな音を立てて丸い宝玉がエメラルドの上へと墜落する。


「!?」


再び目の当たりにする異常事態に、サリナは大きく目を見開く。


そして、白い宝玉の上で死んだようにぐっすりと眠る――


「……ここは………何処……?」


――否。


たった今目を覚ました、純白のドレスを着たお姫様がいた。

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