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第一話 巨大エメラルド、爆誕

「…どうしてこうなった!?

何が起こったんだ一体!?」


そう、崩壊した自宅の前で嘆くのは『ジュエル・ストリーム』。


彼の目に映るのは、ただの瓦礫と成り果てた自宅と、その真ん中に突き刺さった巨大な緑色の宝石。


…さて、どうしてこんな状況にジュエルが陥ってしまったのか。


それを説明するには、少し時を遡らなければならない。


    ―§=☆=§―


「…どこもかしこも、同じニュースばかりだな…。

別に俺はどうだっていいんだよ、流れ星の事なんて」


自宅のソファに座りながら、リモコンを操作してテレビのチャンネルを切り替える男が一人。


そう、これが今回の被害者、ジュエルその人である。


因みにこのカラーテレビ、ここ『アルバード大国』ではつい最近に普及したばかりで、割と金持ちな人間しかこれを楽しむ事は出来ない。


…科学の存在しないこの世界で、どうやってテレビ放映を実現しているのか、というのは趣旨から外れるのでまた後日に説明するとしよう。


…とにかく、同じニュースの繰り返しにウンザリとしていたジュエルだが、とあるシーンへと移るとそのリモコンを動かす指を止める。


少し粗い画面の向こう側に、今までとは気色の違う流れ星が現れ、キャスターが騒然と騒ぎ出す。


「…へぇ、七色の流れ星、か。

流星群ともなると珍しい事も起こるんだな」


暫くその七色の流れ星はゆっくりと高度を下げていったかと思うと。




『ぶ、分裂しました!!

あれは一体なんなのでしょう!!

もしかすると、あれが昔話に存在する、七色の魔石なのかもしれません!』


「いやいや…流石にそれはねぇよ」


熱狂的にカメラに喋りかける、キャスターに向かって呟くジュエル。

勿論、その言葉に反応する者は存在せず、空間に虚しく声が響くだけ。


テレビの画面を消し、上着を着て玄関へと向かうジュエル。


「そろそろ腹が減ったしな。

サリナん家でも行って、何か掻っ払ってくるか」


ニヤッと歪な笑みを浮かべて玄関の扉を押し開ける。


―――その刹那。


巨大なエメラルドがジュエルの自宅を押し潰し、この地へと爆誕した。


    ―§=☆=§―


なるほど、彼が混乱してしまうのも無理はない。


誰がその七色の流れ星が、自分の家に落ちてくるなど予想できるものだろうか。


「こんな真夜中に一体なんの騒ぎ…はぁぁぁぁ!?」


もう夜も遅い時間。


流れ星の墜落音は、その地域に住む住人の目を覚ますには十分すぎる力を持っていた。


案の条、倒壊した彼の家の周りには騒音を聞きつけた野次馬達が集い、おっかなびっくりといった様子でその現況を眺めていた。


「……………」


不意に、ジュエルが立ち上がり宝石へと歩みを進める。


野次馬達の視線は宝石から、不審な行動をとり始めたジュエルのもとへと向かう。


そんなものは意に介さず、宝石の隣へと立った彼。


…おもむろに宝石を足蹴りにし始めた。


「この野郎、この石風情がぁ!!

流れ星だか魔石だかなんだか知らねぇが、せめて落ちるのならもう少しまともな場所に落ちろよ森とか山とか古城とかにさぁっ!!

ダイレクトに民家へ墜落してくんじゃねぇよ!!

明日から俺はどこで寝泊まりすればいいんだよ!?」


暴挙である。


得体の知れぬ物質を無為に扱う事の危険さを、この国の住人は嫌という程に知っている筈なのに、それをガシガシと蹴りつづける。


…馬鹿と言う他無い。


まぁ正直、自分の家をあそこまで破壊しつくされたのだからその気持ちが分からないと言えば嘘になるが…


勿論、その暴挙を止めようとする行動に出る者もいた。


「ちょ、ちょっと何やってんのよアンタ!?

下手したら死ぬわよ!?」


野次馬の群れを押しのけて、ジュエルを羽交い締めにして押さえ付ける灰髪長髪の少女。


「離せ、離すんだサリナ!!

俺はこの宝石を真っ二つに叩き割らなければいけないんだ!!」


「いやだからそんなに妖しく光る宝石が普通の代物な訳ないでしょうが!!

そんな事したら一体何が起こってしまうのか分かったものじゃないわよ!?」


必死にその宝石から遠ざけようと、焦りながらジュエルを引きずる少女の名は『サリナ・アンドレイク』。


見ての通り、派手に暴れる成人近い男性を無理矢理押さえ付けられるような馬鹿力の持ち主だ。


「うるさいうるさいうるさいうるさぁぁぁい!!

男に二言は無いっ!!

壊すと言ったらこの宝石をブチ壊すまで男の暴走は終わらないのだ!!」


「二言があって欲しかった……キャアッ!?」


ジュエルに、いや正確には彼の魔力に無理矢理引きはがされて、彼女は瓦礫の上から弾き出される。


彼の腕を纏うのは、彼が操る風の魔力。




―――奇しくも同じ、緑色。

「ちょ、わざわざ魔武器を出す必要も無いでしょうに!!」


サリナはジュエルが具現させた、槍らしき物を見て叫んだ。


…簡潔に説明すると、魔武器とは魔法戦士や騎士なんかが戦いを挑む際に使用する、魔法の付加応用が可能な武器の事。


そして今、ジュエルはその自分の魔武器を手に取り、刃の尖端に魔力を集めて攻撃を企んでいる。


…因みに名前は《凪矛【風牙】》と呼ぶらしい。

素晴らしい中二病である。


「割れろぉぉぉぉっ!!」


してその風牙を彼は、その宝石へと突き刺した。


一片の手加減なく、その後の弊害を知らずに。




さて、その弊害とか一体何を指差すのだろうか。


一つ目。

沢山砂埃が舞い上がり、間接的な目潰し攻撃を食らわせる。

自分も攻撃範囲である事は間違いない。


二つ目。

瓦礫が飛散して、村が悲惨な事になる。

勿論怪我人も数人でるであろう、瓦礫は重いから。


…そして、三つ目。

想定外な、非常事態に対する反応をとる事が出来ない。


そう。


『…ふう。中々、今の魔力は美味だったぞ、人間よ』


今、この時のように。

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