表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

誤解と勘違いの差。

かなり誤字脱字が多くて困ります。

自分以外の物音がしない客間でエリスは布団で寝ているヒロの隣で術式デバイスを操作している。

ヒロの身体を赤と青のリングが頭を超えたら足へ、足を超えたら頭へを繰り返し交互に往復していた。

表示枠(サインフレーム)に人体の簡易図と各部名称、体温や血圧に脈拍が表示されて、様々な情報が随時更新されている。

どうやら人体をスキャンして異常がないか検索しているらしい。

それを見たエリスは「ふぅ」と安堵の息をつく。


「とりあえず問題はないか」


全ての数値は通常と違い、かなり下回っているが絶命することはなさそうだ。

あれだけの血を吸われたのにこの結果はかなり異常だが、ヒロが言うとおり、ゾンビとかの特性だろうか。そもそもゾンビとはどんな存在なのだろう?

表示枠を見る限りでは普通の人間とほぼ同じ。

違いがあるとしたら血中魔力濃度がとんでもなく多いことだ。

これは自然治癒力を高める為だが、それが吸血鬼のそれとは格段に違う。

試しでさっき腕に傷を付けようとしたが、傷ついた時に一瞬のタイムラグはあるがすぐに消えてしまった。

エリスが血を吸った時とは段違いに治癒力が上がっている。

これは驚くべきものだが、それより重要なものがある。

それは・・・。


魔装紋(まそうもん)・・・」


ヒロの身体を幾何学(いくなんがく)的な模様が(つた)のように絡み合うようにして光っていた。『魔装紋』とはその昔、魔法が使えない人間を無理矢理にでも使わせようとして創られたものだが、無理矢理すれば身体が耐えきれずに壊れてしまうのは当然の事で、それ(ゆえ)禁忌(きんき)中の禁忌とされた。


「それがなぜヒロに・・・」


疑問を言葉にするが、答えるものはいない。

文字盤を叩いて情報を整理しながら横目でヒロの様子を見ると、少し変化していた。


「・・・魔装紋が消えてる」


さっきまではっきりと光っていた。

だがそれは初めからなかったかのように消えている。

分かっていた事だが、ヒロの魔装紋は必要時以外は消えてしまうようだ。

こうやって出たり消えたりする魔装紋は珍しいが、無い訳ではない。エリスも魔装紋を使っている人を何度も見てきた。

その中にもこのようなタイプのものがいた。

そういう魔装紋はかなり強力なのだそうだ。

先ほど聞いた感じでは、ヒロは気づいていないようだが。

・・・・少し、調べた方が良さそうだな。

そう1人ごちてから、文字盤(キーボード)を叩いてリングを消した。





気づけば、そこは闇だった。

いきなり何の話だ!と思うだろうが、実際そうなのだから仕方がない。

ヒロは、ぼやけた頭で周りを見るが、何がなんだか分からなかった。


「ってか、何で俺寝てるんだ?」


まだ、はっきりしない感覚で分かるのは布団で寝ていることと、なぜかすごく疲れていること。いつの間にか寝ているのは紘にとってよくある出来事だが、知らない内に疲れているのはまだ未体験だった。

確か、今日は疲れる事はしていないはず。

睡眠は(授業の時間を使って)しっかりとってあるし、運動は(加減ができずに)したくても出来ないし。

こんなに疲れる要素はどこにもない。

もしかして夢遊病!

自分の身体に起こったであろう事に驚愕していると、あることに気がついた。


「そうか、エリスだ」


今日は、金髪ロリ吸血鬼に出会うという人生で幾度(いくど)と起こりえないイベントが発生したのだった。

そこではさまざまな初体験があり、お持ち帰りまでしたのだった!

・・・・・・・・どうやら紘の中では、ちょっと・・・・いやかなりの都合よく美化されているらしい。


「そんで、エリスが禁断症状を起こし、襲われて今に至るわけか」


真実を思い出して安堵した。

どうやら今、かなり疲れているのは貧血なだけらしい。

さっきより感覚がはっきりしてきたので改めて周りを見ると、どうやらここは客間のようだ。

上体を起こして眠い目をこする。


「それより腹減ったなぁ〜・・・・って、あれ?」


そこで紘は気づいた。

なぜか身体全体がやけにスースーすることに。

どうした事かと部屋の明かりを灯すために(ひも)を引っ張った。

そして眩しさに慣れない目を(またた)かせて己の身体を見る。そこには生まれたままの姿-------簡単に言えば裸-------に紘は、なっていた。


「な、ななななな!はだ、はだはだはっ、はだだだぁぁぁああ!?」


理解不能の叫びをあげてしまう。

すると、腰の所に温かい感触が有ることに気がつき、それがもぞもぞと動き出した。


「なんだ、ヒロぉ?」


眠そうに目を擦りながら掛け布団から顔を出したのは幼さが残る金髪の少女だ。

肌にダイレクトに伝わる危険な信号によると、紘と同様に裸なのだと予想------いや、確信する。


「おぴゃぁっ!」


紘は動揺し過ぎて変な鳴き声を発した。

まてまて、何だこれは。

なぜエリスがこんな所に?

いや、問題はそこではない。これでも充分に問題だが、そこは無視しよう。

なぜ2人は裸なのか。

俺はこの世に生を受けてから早17年、こんなイベントは一度も遭遇した事はないぞ。

紘の心臓はラスボス戦のようにBボタンを連打していた。


よし、冷静になろう。


そう冷静に


冷静に


冷静に


心を落ち着かせるために深呼吸をする。

早鐘のようにボタン連打する心臓はボスを倒して静まる。

しかし、冷静になれば動揺して感じなかった感触もはっきりしてくるわけで、腰から伝わる温かさが女っ気のないささくれた心に染み渡ってしまうわけである。

あぁ、女の子ってこんなに柔らかいんだ。


って、うおぉぉお!

冷静になんかなれるかー!

おもわず叫びをあげたくなる。


さらに混乱しようとしている自分を必死に抑える。

俺の記憶ではエリスに血を飲ませて・・・・ってあれ?そこからの記憶が無くなってる。

も、もしかして俺はそこで若きマグナムを使ってしまったのか!

紘がムンクの叫びみたいになっているのに気づいていないエリスは少し潤んだ目と上気して赤くなりながら恥ずかし気にいった。


「ヒロのは・・・結構良かったぞ、かなり濃かったからな」


誤解の無いように言っておくが、エリスは紘の血の事を話している。

従って、さっきの文は。


『ヒロの(血)は・・・・結構良かったぞ、かなり(魔力が)濃かったからな』


となる。

ちなみになぜ裸だったかというとエリスは裸でなければ寝れない体質だからだ。

当然、そんな事を知らない紘は自分の息子がハッスルしたのだと思い、さらに青くなる。


「少し(傷口を)大きくし過ぎたから心配だったが、どうやら大丈夫なようだ」


これも紘は分からないのでもう真っ白だ。

おいおい、バカ息子が。なに限界突破してんだよ!!



「俺ってやつは!俺ってやつは!」


「おい、いきなり壁に頭をぶつけだしてどうした?」


すごく心配そうな顔で紘を見た。


「ごめんよエリス。俺の意志では(欲望を)止められなかった。ホントにごめんよ」


「いや、別に(血は)止めようとして止められるものじゃないだろ?」


うぉおお、何だ!女神さまなのか!?

あんなことを(たぶん)してしまったのに許してくれるというのか!


「ありがとうエリス。ちゃんと責任は取るから」


「はぁ、責任だと?」


そこでやっとエリスは相互の間で認識の食い違いに気がついた。


「なんだそれは?」


「そうか、無かったことにしたいんだな?

よほどショックな出来事だったのか・・・・あぁなんて事だ・・・・」


「ひとりで納得してないで説明しろ」


いやいや、分かっているからと温かい笑みを浮かべて頷いている。

エリスは、わけわからんとため息をついた。とりあえず、術式デバイスを出して表示枠に手を突っ込んだ。

すると、水に手を突っ込んだように波紋が出て腕を飲み込む。

そして何かを引っ張り出した。


「・・・服?」


少し大胆な黒い肌着と、同じく黒いワンピースを取り出した。

どうやら術式デバイス(アレ)は倉庫代わりになるらしい。

それに着替えながら紘に話しかける。


「なあ、ヒロ。お腹空いたんだが・・・・何かないか?」


くぅ〜、と可愛らしい音が鳴りエリスは少し頬を染めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ