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金髪ロリは吸血鬼!?

吸血鬼といえば、ネギま!のキティを思い出しますよね?

秋の少し肌寒い気温。

月明かりで本が読めそうなくらい明るい夜。

教師すらもいなくなった校舎にゾンビ、須川紘(すがわ・ひろ)はいた。

別に、なにか忘れ物をして校舎に残っているわけではない。

彼は日光はダメなんだ。なぜなら、ゾンビだから。

だが、別に死ぬわけではない。

ただ単に体全体の力が抜けるだけだ。

この日のように天気の時は出歩くことは出来ないが、悪天候のときや曇り空の時はぜんぜん平気。ゾンビとやらはよく分からない。





そして紘は校外に出るといつもの所に行った。

漫画などでもよくでるゾンビの楽園の墓場だ。

今宵(こよい)の月は清々(すがすが)しいほどの満月。

こんな日は温かい緑茶と団子で月見をしたいものだ。

そんな風に考えながら座り心地(ごこち)の良い墓石を探していると地面に花が咲いている。

紫色のとてもきれいな花だった。

紘は普段は花などに興味がわかないが、たまに見つけるのは良いものだと思う。

そして紘は珍しく、しゃがんで花を見た。


「おお、こんなとこにきれいな花が咲くんだ−−−」


「咲くんだな」の"な"が続かなかった。なぜなら紘の真上を何かが通って隣の墓石を砕いたからだ。


「うっへぇ!?」


間抜けな声を出して横へ逃げる。


「ふん、よくぞかわしたもんだな人間」


そうのたまったのは偉そうな金髪でいかにも魔女が着そうな黒服と同じく黒いボロボロのマントを(まと)った女だった。

いやいや、さっきのはたまたまだから誉められても・・・・。

ってか偶然しゃがんでなかったらあの墓石みたいになっていたな。

しかし、よく見ると金髪魔女(仮)は西洋人の顔立ちをしていて小学生みたいな容姿をしている。

改名、金髪ロリ。


「おい、テメェ危うく死ぬところだったじゃねぇか!」


まあ、紘はゾンビだから死なないけどここはほら成り行きというかさ、まあいろいろ。


「おっと、そうだったな。気絶させるだけにしようと思ってたけどちょっと(りき)んでしまった」


ふざけるなと叫びたくなる気持ちを紘はぐっと抑える。

そこで紘はあることに気づいた。

ん?まてよ、金髪ロリのあの力はもしかしなくても人間ではないな。

あの力は人間にしてはありえない強さだ。

紘はしばらく考える。

ふと、頭にあることが浮かんだ。


「もしかしてゾンビか?」


そんな事を思ったが違うとかぶりを振る。


「あのクソジジイが簡単にゾンビを作るはずがないな」


それに他の種族なのかもしれない。

だったらあいつは何者なんだと考えたが、何も思い浮かばない。

紘はとりあえず疑問の解消をしようと金髪ロリに話し掛けた。


「おい、金髪ロリ!テメェは何者だ!どう見たって人間じゃあねぇな」


「ろ、ロリだと・・・・?」


ギロリとこちらを睨む。おー怖い怖い。


「どうでも良いからどこぞのなに子ちゃんですか?」


ふんっと金髪ロリは薄気味悪い笑みを浮かべた。


「本来ならば下等な人間に教える事などないのだがな」


そこで人を小馬鹿にした笑みを浮かべる。

こんな危ない発言を素で言うやつは始めてみたと紘は変なところで感心した。


「だが、冥土の土産に教えてやろう」


なんだか偉そうに胸を張っているがちいさ・・・・げふんげふん。控えめなので、そこはあまり関係ないが、はっきり言って凄みがないうえに台詞が思いっきりザコキャラである。


「よく聞け愚民よ、中世を絶望に陥れた吸血鬼にして最凶最悪の魔女エリス・セファンとはこの私のことだー!!」


どうだ参ったかみたいな言い方だった。

だが、しかしだ。


「誰だそれ?」


そう、そんな奴は見たことも聞いたこともない。ってか中世ってこれまた曖昧な・・・・。

それを聞いて金髪女ことエリスはガックシと肩を落とした。


「誰だだと貴様!侮辱する気か!」


だが、そんな名前の奴なんて知らないのだからしょうかない。

エリスは、紘の表情から真実だと知るとワナワナと肩を震わせた。


「よくも私を侮辱してくれたな。気が変わった、貴様はここで死ね!」


えらく短気な奴だとウンザリになる紘。

エリスはこちらに向けて構えをとる。そしたら映像が揺れるように身体がブレて一瞬で目の前から消えた!


「!?」


否、消えたわけではない。紘の反応速度を上回る速度でこちらに間合いを詰めてきたのだ。


「なに!?早すぎ−−−」


何かが刺さったのような音がする。


「ウグぅ」


(うめ)き声をあげるが状況がうまく把握(はあく)できない。

なんだか腹が焼けるように熱いのは辛うじてわかる。


ゆっくりと腹部を見るとエリスの腕が中ほどまで刺さっていた。


「グフッ、ゴフ」口から有り得ない程の血が吐き出される。

液体が地面に付着する湿っぽい音がすると同時に地面が赤く染まる。


エリスは紘の腹から手を抜いた。


「ふん、やはり人間は(もろ)いものだな」


そして冷めた無表情で紘を見下した。


「さて、貴様の血が無くなる前に飲んでしまうか」


口からは血が流れるのが止まらない。



このままなら出血多量で紘は絶命してしまうだろう。








そう、普通ならば。









「あははははははははははははははははははははははははははははーーーー」


紘は壊れたように笑った。


「なんだあいつは・・・・・」


それを見たエリスは背中に寒いものを感じた。


「何がオカシイ、もしかして死ぬ寸前でイカレたか?」


エリスは知らないかもしれないが紘はゾンビだからこんなことでは死なない。


「おいおい、いきなりで驚いたじゃねぇか」


本当は驚いたなんてもんじゃない。冷や汗なんかダラダラだ。いくら不死身でも死の感覚は怖い。

だから、さっきの笑い声も自分を奮い立たせるためにしたことだ。

だがなにも知らないエリスには効果的だったらしく異様な紘の雰囲気におもわずエリスは後退りをした。


「まったく、普通の人間だったら死んでたよ」


エリスが冷静だったらまずいが、何も分らない得体の知れない化け物だと思い込んでいるエリスには何もできない。


「普通の人間、だと?・・・・・・・・・・・・もしかしてお前も人間じゃないのか!?」


エリスは馬鹿正直に紘の台詞を聞いている。

ここに隙ができる。


「そんな事はどうでもいい。今は黙ってそこで寝ていやがれ!」


そして紘は捨て科白(ぜりふ)を吐いて人間では有り得ない速度でエリスの懐に踏み込んだ。


「まず・・・・・!」


気づいた時にはなにもかも遅い。

紘はみぞおちに上に突き上げるような拳を放った。

エリスは衝撃で身体がくの字のまま浮いたが、そのまま後ろに崩れ落ちた。


「ふぅー」


火事場の馬鹿力って知ってるかだろうか?

人間は普段は50%ぐらいしか力が使えないように脳が勝手に抑えているらしい。

抑えてないと体に多大なダメージを受けるからだ。

ようはそのリミッターを紘は解除しただけ。

道路の真ん中で倒れているエリスを見て溜め息をつく。


「こいつどうすっかなぁ?」


こいつに殺されかけたから本来ならばほっとくところだけど女の子だから後味悪いしなぁ。

ま、取り敢えず家に連れて帰るか。

こいつに聞きたいこともいろいろあるしな。そうしてエリスを担いで我が家に向かってノロノロと歩きだした。









この時、意外と柔らかくて不覚にもドギマギしたのは内緒だ。

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