とりあえず勝ち
もう勘弁してくれ!」とばかりに王宮を飛び出したカイ。しかし、後ろからは「待ってよー、聖者くーん!」と、10倍の幸運(エンカウント率の高さ)を撒き散らすサチコが追いかけてきます。
そこでは、魔王軍の幹部たちが「いかにして10倍勇者たちを葬るか」という、社運を賭けた極秘会議の真っ最中でした。
四天王の騎士: 「いいか、奴らの攻撃力は10倍だ。正面衝突は避けろ……」
カイ: (うわ、なんか怖そうなやつらがいっぱいいる……。でも影が薄いから大丈夫か)
カイは会議机の端に座り、置かれていた高級そうな紫色の果実をパクつきます。もちろん、幹部たちの目には「果実が空中で勝手に減っていく」ようにしか見えません。
そこへ、追いついたサチコが勢いよく扉を開けて入ってきました。
「あ、見ーつけた!……ん? ここ、どこ?」
普通なら即座に惨殺される場面ですが、ここで「10倍の幸運」が発動します。
サチコの幸運: 彼女がドアを開けた衝撃で、壁に飾られていた巨大な魔王の肖像画が落下。それがちょうど、勇者暗殺用の「究極の猛毒トラップ」のスイッチを押し下げました。
結果: 会議室の天井から、勇者用だったはずの毒ガスと火炎放射が幹部たちに向かって降り注ぎます。
「ぎゃあああ! 罠が暴走したぞ!」「裏切り者がいるのか!?」とパニックになる幹部たち。
カイは、混乱の中でサチコが火炎放射に焼かれそうになっているのを見かねて、思わず動きます。
(……あー、もう! ほっとけないな!)
10倍の「影の薄さ」の応用: カイはサチコの手を引き、彼女ごと「認識の空白」に引き込みました。
現象: 炎や毒ガスが、二人を避けるようにして(因果の希薄化)周囲の幹部たちだけを直撃。
魔族の視点: 炎の中に立っているのに、全くダメージを受けず、それどころか姿さえ認識できない「ナニカ」に、次々と仲間が倒されていく恐怖。
「バカな……! 姿なき『神』が、我らを裁こうとしているのか……!」
生き残った幹部の一人が、虚空(カイがいる場所)に向かって絶望の叫びを上げます。
そこにサチコが、これまた10倍の幸運で、床に落ちていた「魔王軍の最重要機密文書」をバナナの皮のように踏んで滑り、カイの腕の中に飛び込みました。
カイの反応: (……うわっ。今、サチコの感触が……! 煩悩が……!)
結果: カイの「無」が揺らぎ、全身がかつてないほどのピンク色に、それも10倍の輝きで発光!
魔族の反応: 「うわあああ! 桃色の神の雷罰だぁぁぁ!!」
あまりの光の眩しさと威圧感(とピンク色の不気味さ)に、魔王軍の精鋭たちは「この世の終わりだ」と確信し、拠点ごと自爆・退却してしまいました。
結末:残された二人
静まり返った廃墟のような会議室で、カイはピンク色の発光を必死に抑えながら、腕の中のサチコを離します。
「……あ、聖者くん、今ちょっと光った? やっぱり光るんだね! きれーい!」
「……気のせいだ。帰るぞ、サチコ。というか、もう二度と俺に近づくな……」
こうして、勇者たちが一歩も城を出ないうちに、魔王軍の最前線拠点は「ピンクの神の怒り」によって壊滅。
一方その頃、王宮では「聖者様と聖女様が、たった二人で敵陣を消滅させた」という噂が、10倍の誇張を伴って国中に広まり始めていました。




