スケベはだめ
風呂場の変態兵士」という不名誉すぎる疑惑を払拭するため、カイは人生最大の「聖者ムーブ」を強いられることになります。
一度でも「スケベなこと」を考えれば、あのピンク色の発光(煩悩の具現化)が始まり、正体がバレて社会的に死ぬ。カイは決意した。
「今日から俺は、この世界で一番『清らかな存在』になってやる……!」
カイは「影の薄さ」を逆手に取り、「悟りを開きすぎて存在が希薄になった聖者」を演じることにしました。
煩悩の遮断: 女子たちが通りかかっても、脳内でひたすら「般若心経」や「円周率」を10倍の速度で反唱。
効果: 欲望がゼロになったことで、カイの存在感はさらに消失。ついには「彼が歩いた後には清涼な風が吹き、穢れが浄化される」という謎の錯覚を周囲に与え始めます。
しかし、10倍の直感(女子力)を持つ麗奈だけは、昨夜の「ピンクの光」の残響を疑っていました。
「ねえ、昨日の変態……絶対このクラスの誰かだと思うのよね。特に、影の薄いあいつ……佐藤とか怪しくない?」
彼女は抜き打ちでカイの前に現れ、10倍の美貌をフル活用した「誘惑のポーズ」でカマをかけてきます。
カイの対応: 視界に麗奈の美貌が入った瞬間、脳内の円周率を3.14から10倍の精度(3.1415926535...)で演算。
結果: カイの瞳から一切のハイライトが消え、あまりに澄み渡った無表情に、麗奈は逆に気圧されます。「な、なによその目は……! まるで泥沼に咲く蓮の花を見つめるような……人間味のない清らかさは……!」
カイが「無欲」を極めた結果、10倍の恩恵が斜め上の方向に進化しました。
彼がただ座っているだけで、周囲の魔力が安定し、近くにいる人の精神が安らぐという「10倍の癒やしオーラ」が漏れ出した。
クラスのイライラしていた男子たちが、カイの横を通るだけで「……なんだか、争うのが馬鹿らしくなってきたな」と武器を置く。
老魔術師たちがカイを見つけ、「おおお……このお方はもしや、伝説の『無の賢者』の再来では!?」と勝手に拝み始めます。
ついに、10倍の力に溺れて傲慢になっていた剛田までもが、カイの前に座り込みました。
「佐藤……聞いてくれ。俺、10倍の力を持ったら、なんか全部どうでも良くなっちゃってさ……本当は野球がしたかっただけなんだ……」
カイは何も言わず(というか、喋るとボロが出るので無言を貫いているだけ)、ただ静かに頷きます。
周囲の評価: 「見てるだけで心が洗われる……」「どんな悩みも飲み込んでくれる、10倍の慈悲深さだ!」
カイの内心: (早く終わってくれ……。あと、剛田の涙で服が濡れる。煩悩……煩悩を捨てろ俺……!)
そんな中、王宮に魔王軍の刺客(今度は本物)が再び潜入。
刺客は「まずは精神的に脆そうなあいつからだ!」と、無防備に座っているカイに精神攻撃を仕掛けます。
刺客: 「お前の内なる欲望を暴き出し、狂わせてやる!」
カイ: (10倍の速度で「素数」を数え始める)
刺客がカイの精神に触れた瞬間、そこにあるのは「圧倒的な無」。あまりの虚無感に、刺客は「……私が求めていた闇など、この御方の足元にも及ばない……!」と勝手に絶望して戦意喪失。そのまま出家してしまいました。
こうしてカイは、女子風呂を覗こうとした不審者から一転、「世界を救う歩くパワースポット(聖者)」として崇められる羽目になってしまいました。




