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全滅したパーティーを救うため、二周目は未来の知識で俺TUEEE……するはずが、敵が本気出してきちゃった件。  作者: 久喜崎


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第17話「今ある力」

「いくわよ……ッ! 呪いの魔力の結界ごと、私の限界突破の暴走魔法で無茶苦茶に洗濯してやるわ!!」


 結界内部に閉じ込められたリーネが、自身の体内にある全魔力を杖の先端に文字通りフルチャージし、結界を構成するドロドロの死の『呪い』と意図的に真っ向から衝突させる、自爆紛いの『魔力暴走オーバーロード』を強引に引き起こした。

 光と闇の極限の圧縮による、陣の内部での大爆発。

 リーネはその凄まじい爆発の指向性を、自分たち四人を巻き込ませないように、結界の内壁ギリギリのただ一点へと、鼻血を出して倒れそうになりながら無理やり極限まで集中させた。


 ドゴォォォォォォォォォンッ!!

 という鼓膜を破壊するような凄まじい轟音と共に、難攻不落だった薄紫色の結界のドームの一部に、稲妻のような細かい亀裂がビキビキッと走った。


「外のセレナァァァッ!! 今だァァッ!!」

 レイドの喉が裂けるような合図の絶叫に対し。

「言われなくても!! 見えているわッ!!」

 結界の外の安全圏で静かに待ち構えていたセレナが、ティルナノグの聖樹の特別な小枝から削り出し魔力を込めた、二本の『神聖矢ホーリーアロー』を同時に放った。

 光の尾を引いて空気を切り裂いた二本の矢は、リーネがこじ開けた結界のコンマミリの亀裂の中心の穴を針の穴を通すように完璧にすり抜け、結界の維持の要となっていた呪術陣の『魔力の供給の要石』の影たちの胸元へと深々と突き刺さった。


 パァァァァァァンッ!!

 ガラスの砕け散るような甲高い高音と共に、神聖な光の力が内部から反発し、四人を押し潰そうとしていた呪いの結界が、遂に完全に粉砕され霧散した。


「ガルドォォォォォォッ!! 上だ!!」

「おらアアアアッ、よくも俺の頭の上に重戦車みてぇに乗っかってくれたなぁぁッ!!」

 結界の圧力が消えたその一瞬、ガルドが頭上で必死に支え続けていた分厚い大盾を、全身のバネと怒りとともに天に向かっておもいっきり跳ね上げた。

 上でガルドの足腰を折るために圧殺を試みていた六体の影たちが、その想定外の巨大な反発力によって一斉に空中の空中高くへと無防備に放り上げられる。

 その神がかった体勢から、ガルドは大盾を斜めに構え直し、泥の地面に深く足を食い込ませて、レイドを飛ばすための完璧な「斜めの発射台」を作った。


 レイドが全速力で泥を蹴ってダッシュし、ガルドの分厚い大盾の表面を駆け上がる。

「ガルド……俺を死ぬ気で、一気に天空まで飛ばせ!!」

「人間大砲、全開出力だァァッ! 飛んでけやァァァッ!!」

 レイドが踏み込んだ瞬間、ガルドの全身の異常な腕力と背筋の全てが爆発し、レイドの体をミサイルのように天高く空中へと射出した。


 空中で体勢を崩し、完全に無防備に宙に浮く六体の影たち。

 その真下の死角から。猛スピードで跳躍して飛び込んできたレイドが、空中で銀の長剣を冷酷に閃かせた。

 ズパァァァンッ!とすれ違いざまに三体の首を次々に跳ね飛ばすと、そのまま空中で自身の身体をコマのように高速で反転させ、重力と遠心力の全てを乗せた強烈な円月殺法の横薙ぎで、残る三体の胴体を同時に両断した。


 シュァァァァァッ。

 恐怖の悲鳴も、断末魔すら一切なく。首を落とされ胴を断たれた六体の黒い影たちが、まるで最初から存在しなかったかのように、空中で黒煙のノイズとなって跡形もなく消失した。


 スタッ……と、一切の音もなくスマートに地上の石畳へと着地したレイドは、剣の血を払いながら、周囲を取り囲んでいる残りの十数体の地上の影たちを、氷のように冷酷な眼差しで睨み据えた。


 感情を持たない、ただ殺戮のためにプログラムされたはずの影たちの動きの間に、初めて明確な「動揺」と「躊躇」のノイズが走るのがレイドにはハッキリと見えた。

 彼らの計算の想定内には、自分たちの展開した完璧な対エルフ用閉鎖呪術陣を、人間の純粋な物理的筋肉と出鱈目な力技と、お互いの命をノータイムで預け合う異常な仲間の信頼だけで強引に破られるなどという最悪のバグの対処法は、何一つプログラムされていなかったのだ。


「リーネ、セレナ! お前たちは後方から全力で魔法と矢を乱れ撃ってアイツらを牽制し、広場の中心に完全に釘付けにしろ!」

「任せなさい! 詠唱破棄、風刃・五連星!! これでも食らいなさい!!」

「白銀の神弓の掃射、受けてみなさい!!」

 二人の放つ、空を覆い尽くすほどの凄まじい魔法の風の刃と光の矢の十字砲火が、戸惑う影たちの進行を完全に阻み、広場の中央へと後退させる。


「ガルド、俺の後ろに完全に死角を消すようにピッタリと張り付け! 俺と二人で、前衛の刃の突撃と防御の壁の役割を高速で目まぐるしく切り替えながら、陣形のど真ん中を食い破るぞ!」

「おうよ! お前の背中は、この俺の鋼鉄の盾に全部預けとけ!! 今日一番の暴れっぷりを見せてやる! 」

 レイドが地を蹴って猛突進し、残る影たちの密集した懐へと限界の速度で深く切り込んだ。


 もはや、未来や過去の記憶への未練と依存を完全に捨て去ったレイドの研ぎ澄まされた脳内にあるのは。

 「俺が一切の防御を捨てて突っ込めば絶対にガルドが大盾で痛手をフォローし、弾かれた敵をリーネの魔法が削り掃除し、倒れかけた隙をセレナの矢が正確に眉間を撃ち抜いてトドメを刺す」という、強固すぎる仲間への完全な信頼の回路だけだった。


 レイドの放つ剣の軌道を一体の影が躱し、レイドの背後から毒の短剣で刺そうと回り込んだ瞬間。

 ガルドの巨大な大盾が岩壁のように突如として目の前に出現し、影の顔面をおもいっきり粉砕して殴り飛ばす。

 ガルドの盾で強引に空中に放り出されてバランスを崩した影の胸を、遠距離から放たれたセレナの矢が正確無比に撃ち貫き絶命させる。

 さらに頭上の木から奇襲をかけようとする別の影を、リーネの風の刃が上から容赦無く叩き落とし、地面に落ちたところをレイドの剣が容赦なく脳天から一刀両断に唐竹割りにする。


 四人の動きは、余計な言葉や合図を一切交わさずとも、一つの完璧な意思を持った生き物の回路のように、全くの淀みなく滑らかに、そして恐ろしい精度で連動していた。

 それは、レイドが前世の五年間、どれほど強い戦士たちと組んでもただの一度たりとも絶対に得ることのできなかった『奇跡の共闘と絆』が、皮肉にも、過去の記憶が一切通用しない最大の未知の絶望の中において、完全に完成を見た瞬間だった。


『——イレギュラー、行動戦術予測不能。エラー発生。……至急、全機能を用いて直チニ排除シロ——』

 プログラムが完全に破綻し、恐慌状態に陥った影たちが、自分たちの陣形を維持することを放棄し、防御を捨てた相打ち覚悟の全戦力でレイドたち四人目掛けて一斉に殺到する。

「さあ来い。お前らみたいな、誰かの人生を弄ぶバグの紛い物は、俺たちが全部ここで叩き斬ってゴミ箱へ捨ててやる」

 レイドの口元に、勝利を確信した獰猛極まりない笑みが浮かんだ。


 ——それから、たった数分後のことだった。

 広場を埋め尽くしていた三十体もの精鋭の暗殺者たちは、強固な四人の連携の前に完全にすり潰され、黒い靄の残骸すら残さず、石畳の上から跡形もなく完全に消え去っていた。


「ハァッ……ハァッ……ハァ……お、おわっ、た、か……?」

 ガルドが限界だった持っていた大盾をガランッと地面に投げ落とし、泥にまみれてドスンと両膝をついて天を仰ぐ。リーネもセレナも、いつもの魔法使いやエルフとしての美しい優雅さを完全にかなぐり捨てて、額に汗を張り付かせて地面にペタンとへたり込んでいた。

「お前らのおかげだ。俺一人で今まで通り過去の戦い方だけでやってたら、確実に最初の結界の中で絶望して死んでた」

 満身創痍のレイドが、剣を杖代わりにつきながらも、心の底からの爽やかな笑顔で三人に深く感謝を伝えると。

 リーネは顔を真っ赤にしてそっぽを向き、ガルドは「あったりめえよ!」とガハハと大笑いし、セレナは自身の命を躊躇なく投げ出し合う彼らの泥臭い人間の戦い方に呆れながらも、とても眩しいものを見るように優しく微笑んだ。


 四人の間に、ようやく平和で確かな生存の安堵の空気が戻った。……かに思えた。

 だが、真の絶対的な恐怖の絶望は、その緩み切った安堵の直後に、音もなく牙を剥いた。


『——ホウ。予想以上に、美しく躍動する人間たちの煌めきだ。互いを信じ切るその泥臭い絆も、我らには到底真似できぬ。……だが、それゆえに貴様らの命は、悲しいほどに脆すぎる』


 ギィィィィンッ……。という、世界の温度が絶対零度に強制的に凍りついたような、恐ろしい魔力の波が里全体を包み込んだ。

 四人が息を呑んで広場の中央へと視線を向けると。いつの間にか、そこに全くの音もなく「一人」の男が静かに立っていた。


 漆黒の高級な法衣に身を包み、その端正な顔の左半分を不気味な白い仮面で完全に隠した長身の男。

 そして男の両腕には、人間の身の丈をゆうに超えるほど巨大で禍々しい血色の『大鎌』が、死神のように無造作に握られている。


 レイドの戦士のカンが、細胞レベルで最大級の死の警鐘を鳴らした。

 ただ一人、そこに静かに立っているだけのその男から放たれる圧倒的な魔力の暴力の圧迫感は、先ほど四人で命からがら倒した三十体の暗殺部隊を全て束ねても到底足元にも及ばない。ただそこにいるだけで周囲の空間を押し潰し、生者の心をへし折って絶望させるほどの、異常な高質量の密度を持っていた。


「……何者だ。お前は、さっきの暗殺特化の残党なんかじゃないな」

 レイドが震える足に無理やり力を込め、折れそうな長剣を構え直して、三人を庇うように一歩前へと出る。


「我は虚ろの教団を束ねし四脚の一つ。大幹部『魔女の刃』。……我らが主の至高の計画を妨げ、時間を乱した野蛮な罪人どもに、我自身の大鎌で究極の罰と死を与えに参上した」

 男の仮面の奥の瞳が、虚無の暗い炎を静かに揺らした。


 苗床の破壊という、レイドの運命を変えるバタフライ・エフェクトが引き寄せた、最悪の代償の終着点。

 三十体の化け物など前座に過ぎない。大幹部の教団直下という、「絶対的な死の絶望」との真の死闘が、静かにその幕を開けた。

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