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全滅したパーティーを救うため、二周目は未来の知識で俺TUEEE……するはずが、敵が本気出してきちゃった件。  作者: 久喜崎


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第15話「見えざる刃と本当の絆」

「全員、各個防衛で迎撃ッ!! ガルドとリーネは絶対に俺の背後から離れるな! セレナ、お前の弓で奴らを足止めして、一人でも多くエルフたちを逃がせ!!」


 レイドが枯れるような怒号を響かせるが、広場に音もなく一斉に転移してきた三十体以上の『黒い影』たちの淀みのない移動速度は異常なほど物理法則から乖離していた。

 彼らは足音一つ立てず、一瞬で大きく散開し、無差別に逃げ惑う子どもや足の遅い長老たちを最も効率のいい標的として冷酷に襲いかかった。


「させないわッ! 忌まわしい泥で、私たちの神聖な森を絶対に汚させない!!」

 大樹の高い枝の上。セレナが神速の動きで白銀の弓から、恐ろしく正確な三本の光の矢を同時に放つ。

 だが——標的となった手前の三体の影たちは、背後から迫る不可視の矢の気配を完全に読み切り、空中で短剣を軽く振るって、あっさりとその強弓の矢を弾いて叩き落としたのだ。

 そしてそのまま、恐るべき跳躍力で十数メートルの大枝まで一気に跳び上がり、一切の無駄なくセレナの喉笛へと無音で肉薄する。


「は……!?」

 「絶対の後方狙撃」というエルフの最強の利点を初めて完全に無力化され、一瞬で死の距離を詰められたことに、歴戦の狩人であるセレナの足が文字通り驚愕で固まってしまった。


「下がってろセレナ! 前に出るな!」

 その絶体絶命の瞬間。下から重力に逆らうように跳躍したガルドの無骨な鋼鉄の大盾が、セレナの華奢な体を庇うように間に深く割り込んだ。

 ガガガガァァァァァァンッ!!

 影たちの必殺の毒の短剣とガルドの分厚い大盾が激突し、火花が夜空に凄まじく散った。

「ぐぅぅ重ぇッ……! なんなんだよこいつらの刃の異常な重さと筋力は! 数日前の不気味な森でやり合った奴とは、全く格が違うぞ!?」

 盾を支えて踏ん張るガルドの太い腕の血管が張り込み、顔に苦痛と焦りの脂汗が大量に滲む。


「リーネ!! 強固な全方位防壁を最大出力で即座に展開しろ!!」

 指示に反応し、即座にリーネが複雑な魔法陣を空中に描く。

 だが、その強固な防壁が展開されようとした、まさにその一瞬前。

 パリンッ——。

 影の一人が一切躊躇なく、空中に浮かぶ『構築途中の魔法陣の魔力結節点』を正確に短剣の切っ先で突き刺したのだ。

 途端に巨大な魔法陣はガラスのように四散し、練り上げられた魔法が霧散してしまった。


「うそ……魔力構成を、物理の刃物で直接寸前にキャンセルした!?」

「対魔術師用の完全に特化された対魔短剣だ! 防御は張る前に潰される、物理的な下級魔法の多重面制圧の連射に切り替えろ!」


 レイドが素早く戦術を修正し、目前に迫る影の足の腱を目掛けて長剣を下段から鋭く斬りつける。

 ズバッ!

 だが、見事に切断された傷口からは血ではなく黒い毒の靄がブワッと噴き出すだけで、影は一切痛がる素振りも見せず、逆にその自分の毒を利用して反撃の強烈な刺突を繰り出してきた。

 間一髪で首を逸らしたが、レイドの首筋を冷たい刃が掠め、毒の嫌な熱さと痛みが首筋に走る。


 四人は互いの背中合わせの円陣を強固に組んだが、すでに三十体の無機質な化け物たちによって、逃げ道のない二重三重の死の包囲網を敷かれていた。


 強弓の矢束をあっさり叩き落とす異常な回避力。

 魔法陣を構築途中で破壊する対魔術用の無効化短剣。

 手足を切断されても痛みを感じず、毒を撒き散らして突っ込んでくる恐怖の自爆特攻。


(ああ、間違いない。こいつらの機動力と洗練されすぎた装備は……明らかに『対エルフ・対魔術師』を完全に想定して、何年も前から特化された殺戮の暗殺部隊だ)


 だが、レイドにとって何よりも恐ろしい事実は、目の前の敵の強さではなかった。

 五年間の血を吐くような凄惨な記憶。その地獄の情報のどこを探しても、こんな理不尽な集団兵器のデータが『全く存在しない』ということだった。


『——無駄な抵抗だ。我らがプランを著しく乱し、破綻させる狂った異分子どもよ』

 三十体の影たちから、感情のない無機質な合成声が、まるで一つのシステムのように響き渡る。

『大いなる世界の終焉の計画に刃向かい、時間をねじ曲げた致命的すぎる歴史のバグ。今この場で、我々が物理的に完全修正し、細胞の一つ残らず排除する』


 ——俺が、本来の歴史を無視して、大いなる二つの苗床を三年も早く破壊し、運命を大きく捻じ曲げた恐ろしい代償。

 教団は計画を大幅に前倒しし、『本来いないはずの強力な歴史のバグ』であるレイドという存在に明確に気づいた。「教団最強の修正戦力ジョーカー」を、こんな最序盤のタイミングで惜しげもなく大量に投入してきたのだ。


 ……だめだ。

 もう、これまでの俺の武器だった『過去の記憶のアドバンテージ(チート)』など、ここではもう何一つ通用しなくなった。敵の正体も弱点も動きの癖も、一切が未知の化け物が三十体。

 未来を知っている俺の傲慢な焦りが、この絶対に抜け出せない『死の詰み(チェックメイト)』を作り出し、何も知らない大切な仲間たちを最大の破滅へ引きずり込んでしまった。


 圧倒的な絶望感と自分の愚かさへの強烈な後悔に、レイドの呼吸が浅くなり、視界が歪み、思考が完全にフリーズして停止した。

 その絶体絶命の瞬間。


「レォォォォォォォォォォォイドォォォォォォッ!!!」


 背後にいたガルドの鋼鉄の厚いグローブが、レイドの背中を、骨がイカれるほどの容赦ないバカ力で思いっきり乱暴に殴り飛ばしたのだ。


「ぐはぁっ!? お前、味方の俺をいきなり全力で……!?」

 泥だらけになって数メートル吹っ飛んだレイドが、激しく咳き込みながら恨めしそうに振り返る。


「一人で勝手に難しい、この世の終わりみたいな顔して絶望して固まってんじゃねえぞ、この大馬鹿野郎が!!!」

 ガルドが顔を真っ赤にして怒鳴りつけた。

「俺たちが、たった三十体の得体の知れないチンピラに囲まれたくらいで簡単に死ぬような、ヤワで安い仲間だと思ってんのか!? お前の後ろにはこの不死身の俺とリーネが……そしてエルフ最強のセレナの姐さんがしっかり立ってんだろうが!!」


「あんたが一人で全部抱え込んで、一人で勝手に諦めるなんて、百億年早いのよ!!」とリーネも魔力を漲らせて叫び、大樹の上のセレナの瞳にも燃え上がるような闘志の火が轟々と灯っていた。


「未来の記憶だか、嫌な予感だか知らないが! そんな不確定なもんにいつまでもすがりついてびびってんじゃねぇ!! こいつらの正体が過去の記憶に『ねぇ』んなら! 今ここにある俺たちの力でゼロから物理でぶち破って、新しくお前の脳みそに覚え直してやればいいだけだろうがッ!! 立て、俺たちの最強の指揮官!!」


 ガルドの、泥臭く熱すぎる真っ直ぐな魂の叫びが。

 自身の引き起こした恐怖で強固に閉ざされていたレイドの諦めの呪いの殻を、ただ圧倒的な物理的な力で粉々に叩き割った。


 ——そうだ。

 もう通用しない役に立たない未来の知識なんて、もう一切いらない。

 今この場で。俺の無茶苦茶な命令のただの一言に、自らのたった一つの命を完全に乗せて任せて預けてくれる、世界で一番誇らしく頼もしい『最高の仲間』が、全てが変わったこの新しい世界にちゃんといるじゃないか。


「……ハッ。ごめん、俺が完全に間違ってた。……ガルド、お前の言う通りだ。今は最高に頭の悪い、全てをなぎ倒す脳筋作戦で行く」


 泥を払って立ち上がったレイドの顔から、一切の焦りと絶望の闇が完全に消え去った。

 代わりにその漆黒の瞳の奥に宿ったのは、自分より強い未知の強敵を前に歓喜に震える、本物の『狂った戦士の獰猛な笑み』だった。

「完全に目が覚めた。俺の背中は、もう迷いなく全部お前たちに預ける」


 レイドが長剣の血振るいをし、三十体の未知なる強大な影たちに向けて、全軍への反撃の大号令を轟かせた。


「リーネ! 目眩ましとなる閃光弾だけをランダムな位置に多重展開しろ!! セレナ! 奴らが光を避けた逃げ道を、俺とガルドが体を使って強引に塞ぐ! お前はその足が止まる瞬間の敵の『膝関節の隙間』だけを上空から精密に狙い撃て!! 殺すな、一撃で機動力を完全に削げ!」

「絶対に外さないわ、了解よ!!」

「ガルド!! お前は自慢のその分厚い大盾で、敵の美しい陣形ごとまとめて物理でミンチに粉砕しろ!!」

「おうさァァァァァァッ!! それを待ってたぜェェェェェッ!!」


 三十体の暗殺集団が、四人の円陣を一斉にすり潰そうと無音で四方八方から飛び込んできた、その一瞬。

 ガルドが地響きのような大音響の雄叫びと共に、敵の密集のど真ん中へ向けて、常軌を逸した暴走機関車のような捨て身のシールドチャージを仕掛けた。同時に、リーネの閃光が広場の夜闇を真っ白に染め上げる。


 過去の記憶のアドバンテージすら一切存在しない、完全な未知の強大な絶望を、彼らの泥臭い絆だけで粉砕する。

 ただ絶望を待つだけではない、この新しくやり直した世界で最も固い絆で結ばれた最強パーティーの恐るべき大反撃が、今ここに牙を剥いて始まった。

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