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無理しな ケガしない ソロはしない 僕の異世界スローライフ   作者: 異世界でもコーヒー飲めますか?
機工乙女の夢
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実験

街の外れ、のどかな風が吹き抜ける小高い丘。

そこは人通りも少なく、新しい魔導具を試すには絶好の場所だった。

パンは少し緊張した面持ちで、岩場の上に小さなユニットを据え置いた。

「……クエスさん、どうぞ」

彼女は少し照れくさそうに、自分がいつも使っている歪な形のゴーグルを差し出した。

「これは……あくまで実験です。今はまだ一つですが……後々はもう少し数を増やそうと思っています」

クエスは受け取ったゴーグルを眺めながら、首を傾げた。

「数? そんなに増やしたら、操る人の脳に負担がかかるんじゃないのかい?」

「ご指摘ありがとうございます。普通ならそうですよね。ですが……この子たちは術者の魔力を読み取って、勝手に術者の思い通りに動くように設定してあります。複数の魔法を、思考だけで並列処理させる……それが私の理論なんです」

「……へぇ。なんかすごいね、それ」

クエスは興味津々にゴーグルを装着した。視界に淡い魔力のグリッドが浮かび上がる。

「待ってください、今から標的を岩場に隠しますから。ユニットに命令して、隠れた的を全部破壊してください。……準備はいいですか?」

「なんだか……緊張するけど。行くぞ……」

クエスが集中し、魔力をわずかに流し込んだ。その瞬間、ユニットがクエスの魔力に呼応して「ガタガタッ」と音を立てて震え出す。

重力に逆らい、ゆっくりと、本当にゆっくりと浮上して……標的に向かって滑り出した。

「……なんか、思っていたより……遅いねぇ」

「あ、あの、まだ試作なので、安定性を重視していて……」

ユニットが標的の正面でゆら〜っと止まる。クエスは頭の中で、的のど真ん中を打ち抜くイメージを浮かべ、攻撃命令を下した。

「いけ」

——ボォォォォン!!

「うわっ!?」

「きゃあ!」

火を吹いたのは的ではなく、ユニットの方だった。

爆発音と共に黒煙が上がり、試作一号機は無残にも地面に叩きつけられた。

「……あれっ。壊れちゃった……」

「あれ……嘘、なんで……!?」

パンは真っ青になって駆け寄り、焦げたユニットを抱え上げて確認する。

「回路の接続も、冷却膜も、術式も……全てにおいて悪くない。計算は完璧だったはずなのに、なんで……っ!」

パンは壊れた残骸を凝視しながら、頭をフル回転させて考え込む。そして、何かに気づいたように「あっ!?」と声を上げた。

「……どうしたの?」

「忘れていた……忘れていた! 悪いのは機能じゃない……悪いのはクエスさんです!」

「僕が……!?」

クエスは心外だという顔で目を丸くした。

「あ、いえ! あなたが悪い人って意味じゃなくて……そうなんです。私のミスです! 私、自分基準で設計していたから……クエスさんの、その異常なまでに高純度の魔力に、この子の受信部が耐えられなかったんです……!」

例えるなら、家庭用の水道管に、ダムの放水を直接流し込んだようなもの。クエスの魔力が「凄すぎた」ことが、爆発の原因だった。

パンは「どうしよう……」と、頭を抱えて悩み始めてしまった。

それを見て、クエスはゴーグルを外し、首を振りながらアドバイスを送る。

「……まあ、落ち込まないでよ。それにさ、このゴーグルもなんか……違和感があるというか。もし魔力に反応させるなら、もっと身につけやすいもの……例えばネックレスとか指輪とかにすれば、もっとマッタリに扱えるんじゃないかな?」

「クエスさん……」

「ごめんね、パンさん。僕が加減できれば良かったんだけど」

「……いえ。ご指摘ありがとうございます……。すみません、今日の実験はここまでにします。出直します! また三日後にお願いします!」

パンは深々と頭を下げると、壊れたユニットを大事そうに腕に抱え、脱兎のごとくラボへと帰っていった。

その後ろ姿は、悔しさよりも、新しい課題を見つけた時の、どこか楽しげな熱気に包まれていた。

「……三日後か。次は爆発しないといいけどね」

クエスは一人、丘の上に残された。

空は相変わらず高く、コーヒーの香りが恋しくなるような、穏やかな午後のことだった。

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