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無理しな ケガしない ソロはしない 僕の異世界スローライフ   作者: 異世界でもコーヒー飲めますか?
機工乙女の夢
13/16

報酬は1週間三食コーヒー付き

「……条件、ですか?」

パンが相談すると、『銀の匙』の看板娘リーザはいたずらっぽく笑って、彼女の耳元でこう囁いた。

「彼、今ちょうどコーヒーの在庫が復活して、気が大きくなってるわよ。一週間分、三食の食事と食後のコーヒーを保証してあげなさい。それで落ちないはずがないから」

半信半疑で、パンはその通りの条件を提示した。すると、さっきまで「一歩も動かない」と頑なに拒んでいたクエスが、まるで魔法にかかったかのように居住まいを正したのだ。

「……三食の食事。そして、食後のコーヒー一週間分……。しかも『銀の匙』のツケでいいんだね?」

「は、はい。もちろんです」

「いいだろう。契約成立だ」

「……まさにコーヒー魔術ね」と、呆れ顔のリーザが呟く。

(良かった……ギルドに高い金貨を払わなくて済んだ。リーザさん、本当にありがとう!)

「それではクエスさん。三日後のこの時間、またここで。調整した設計図を形にしておきます!」

パンはそう言い残すと、クエスに指摘された「熱伝導結界」のメモを握りしめ、弾けるような足取りで自分のラボへと駆け戻っていった。

ラボに帰り着くや否や、パンは設計図を机に広げた。

クエスの言った「三層構造」を数式に組み込んでいくと、パズルの最後のピースがはまったように、すべての数値が完璧な調和を見せた。

「……できた! これなら、過熱で暴走することもない!」

そこから数時間は、寝食を忘れての作業だった。火花が散り、ネジが締まり、魔力回路が編み上げられていく。そしてついに、手のひらサイズの浮遊ユニットが完成した。

「さあ……実験開始!」

パンは自分の魔力が人並み以下であることを自覚している。

だからこそ、彼女はこの「魔導増幅装置」……頭部を覆う歪な形のゴーグルを必要としていた。

カチリ、とスイッチを入れる。

パンが精神を集中させると、作業台の上に置かれた試作品が、重力を無視してふわふわと浮き上がった。

「動いた……。嘘みたい。あんなに不安定だった挙動が、あのアドバイス一つでこんなにスムーズになるなんて」

ユニットはパンの意思に従い、空中で複雑な軌道を描いて見せる。

パンはゴーグルを外し、額の汗を拭いながら、窓の外の夜空を見上げた。

「……あの人、本当に凄い。あの若さで、あんなに高度な術式をコーヒー片手に見抜くなんて。あんなに凄い人が、どうしてただのギルドのバイト(日雇い冒険者)なんてやってるんだろう……」

パンの胸に、クエス・ノーランという男への純粋な好奇心が芽生え始めていた。

一方、その頃のクエスは……。

「……むにゃ。明日の朝食は、あの厚切りトーストに……ブルーマウンテン……。一週間タダ、最高……」

幸せそうな寝言を言いながら、三日後の「労働」のことなど微塵も考えずに眠りについていた。

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