表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無理しな ケガしない ソロはしない 僕の異世界スローライフ   作者: 異世界でもコーヒー飲めますか?
機工乙女の夢
12/16

偶然は必然の出会い!

普段は、効率と数式を愛する機工士と、怠惰とコーヒーを愛する魔導師が交わることなど、まずあり得ない。しかし、その日は街中に、ある「聖なるフレーズ」が書かれた看板が掲げられていた。

『コーヒー、再開しました』

その一言に導かれるように、クエス・ノーランはふらふらと、パン・カールが居るカフェへと吸い寄せられていった。


「ふぅ……。設計はこんなもんだな」

パンは大きく伸びをして、テーブルの上に散乱した設計図を見渡した。書き込まれた数式の海。理論は完璧だ。だが、現実はいつも残酷な壁を突きつけてくる。


「あとは、この無茶な実験に付き合ってくれる、暇……もとい、腕のいい魔導師を見つけるだけ。……って、そんな都合のいい人、見つかるわけないよね。みんな手柄を立てるのに必死なんだから」

彼女はハーブティーを一口すすり、眉を寄せた。

「やっぱりギルドに依頼を出すしかないかな。でも、どのくらい支払えばいいんだろう……。資材代で貯金はカツカツだし、もし断られたら、この『オールレンジ魔法展開機プロトタイプ』もただの鉄屑になっちゃう」

彼女がため息をつきながら、開いたままの設計図を指先でなぞっていた、その時だ。

「……お隣、いいかな? 他が混んでいてね」

死んだ魚のような目をした青年が、一客のコーヒーカップを大事そうに抱えて、パンの向かいの席に音もなく座った。クエスだ。

「あ、はい。どうぞ……」

パンは反射的に設計図を端に寄せたが、クエスはそんなものには目もくれず、ただ、うっとりとコーヒーの香りを吸い込んでいる。

「あぁ……この香り、この色。三日ぶりの再会だ。君のために、僕は龍に食われ、土砂降りに打たれたんだよ……」

「……あの、大丈夫ですか?」

パンは思わず声をかけた。目の前の男から漂うのは、尋常ではない「やり遂げた男(ただし疲労困憊)」のオーラだ。

「ああ、ごめん。独り言だよ。……ところで、君。その紙に書いてある数式、冷却魔法の術式回路だよね?」

クエスは、コーヒーを一口含んだまま、パンの設計図をチラリと見た。

「え……? わかるんですか?」

「専門じゃないけどね。でも、そこまで冷却を重ねるなら、もっと効率のいい『熱伝導結界』を三層に分けて張ればいいのに。そうすれば、魔導師の負担は今の半分以下……いや、理論上は指先一つで制御できるはずだよ。無理もケガもしなくて済む」

パンは、持っていたペンを落とした。

その一言は、彼女が数日間悩み抜いていた計算の「正解」を、コーヒー片手にあっさりと突きつけるものだったからだ。

パンは、目の前の「暇そう(かつ、最高に腕の良さそう)な魔導師」を、逃がすまじと凝視した。

「……あの! もしかして、今お暇ですか!?」

「えっ? いや、僕はこれから一週間、一歩も動かずにマッタリする予定なんだけど……」

「『楽をしたい』っていう目的は一緒です! お願いします、私の実験に付き合ってください!」

コーヒーの再開が、二人を引き合わせた。

無理をしないための最強の武器を作りたい少女と、無理をしたくない最強の魔導師。

この出会いが、世界の戦い方を根底から変えてしまうことを、今の二人はまだ知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ