第3話 推しを推すきっかけ
俺の意識が変わったのは、あの時の出来事が原因だな。
それは、小さな村で病気が蔓延して、村人たちが全滅しそうになった時の事だ。
国内では、他に大変な事が起こってたんで、力のある聖女さんたちはそっちにかかりっきり。
戦力にならなかったポンコツサディナさんが、この件にあたることになった。
でも、ほら。
例によってアレ(ポンコツ)だから、なかなか治癒はすすまない。
詠唱は当然かみかみだし、手当ての道具はひっくり返すしで、散々だった。
でも、サディナさんは夜の眠る事なく、村人の治療を行っていたんだ。
自分だって病気にかかってしまったのに、その治療を後回しにして。
高熱で顔を真っ赤にして、震えが止まらない体なのに、一日も休みもせず、村人の治療を行っていった。
「あんたが倒れたらだれが村人を治すんだよ」って言って、俺は止めたんだけどな。
「自分の限界はよく分かってますから、やらせてください」だってさ。
ポンコツなのに?
本当かよって思ってたし、いざとなったら気絶させてでも治療を中断させようと思ってた。
けど、サディナさんは本当にやり遂げた。
自分の命も守ったし、村人の命も救ったのだ。
なんだ、やればできるじゃないかって思ったね。
でも、そこまで無理をしなくてもいいだろ、とも思ったさ。
素直にそう言ったら、サディナさんは苦笑しながら俺にこう告げた。
「人の命は一つしかないじゃないですか。無茶をするなら、ここ以外何処にあるっていうんですか」
その時俺は、ポンコツ聖女さんを推していこうと思ったんだ。




