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【漫画化】Q.傲慢で非道な悪役貴族に、正義のヒーローに憧れる少年が転生したら? A.口は悪いが人を救うダークヒーローが誕生する  作者: むらくも航@6シリーズ商業化
記念SS(ショートストーリー)

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SS-1 強い意志(電子版2巻発売記念)

 「ふぅ……」


 ある日のこと。

 学園の廊下を歩くヴァルツは、小さくため息をついた。

 そんな彼には、周りからは冷ややかな視線を向けられている。


「また何か怒っていらっしゃるのか……?」

「やはり恐ろしい方だ」

「近づかないが吉だな」


 こそこそと話すのは、同じく学園で過ごす生徒たち。

 何をされるか分からないため、ヴァルツには聞こえない声で話している。

 それでも、ヴァルツ自身も視線は感じ取っていた。


(また悪評を言われているんだろうなぁ……)


 そうは思うものの、ヴァルツはさほど気にしない。

 すでに学園では一か月を過ごし、周囲からの態度にもすっかり慣れていたからだ。

 憧れるヒーローになるためには、こんなことに一々反応していられない。


(まあ、それより問題なのは──)


 その中で、小さくため息をついたのは、別の理由があった。


(修行できる場所がない!)


 ヴァルツは、一人になれる場所を探していた。

 それもそのはず、この傲慢な体は“人前で努力をする”という行為ができない。

 傲慢を通り越して、もはや卑屈にも感じる不自由さだ。


 そうして、ヴァルツは不機嫌そうに歩くことしばらく。

 ()(まなこ)になって修行する場を探すが……どうやら今日はついていないらしい。


 歩いた先で、唐突に出会ったしまったのだ。


「あ、ヴァルツ君!」

「!」


 声をかけてきたのは、ルシア。

 その原作主人公らしい明るい顔で近づいてくると、彼はヴァルツにも恐れず、そのまま話しかけてくる。

 

「修行でもしに行くの! 僕も行っていいかな!」

「……っ!」


 だが、ヴァルツは答えられない。


(タイミングが悪いよ~~~!)


 ヴァルツの中の人格は、ルシアの大ファンだ。

 前世では、心の支えになってくれたゲームの主人公のため、一緒に修行をしたい気持ちはとてもある。

 

 しかし、ラスボスという主人公とは対極の立場のヴァルツが、素直にうなずくはずもなく──。


「なわけあるか! どけ!」

「あっ」


 ヴァルツはルシアを押し退け、ずかずかと歩いていく。

 すると、振り返りざまにギロリとルシアを睨んだ。


「いいか。ぜってえに付いてくるんじゃねえぞ」

「うぅ」

 

 ここで付いて来られては、修行の時間は消えてしまう。

 ヴァルツは表に出る態度のまま、誘いを断った。

 心の中では、泣く泣くのようだが。


(いつか一緒に修行しようね……)


 そんな思いで、ルシアの場を後にする。

 向かった先は、学園内の図書館。

 修行が無理なら勉強をしようと思ったのだ。


 しかし、一難去ってまた一難。


「おやおや、これはヴァルツ・ブランシュ君」

「……っ!」


 今度はサラに見つかった。

 その顔には、ニヤリと笑みが浮かぶ。


「ほう、なるほど。また隠れて勉学に励まれるつもりですね」

「ち、違えって言ってんだろうが!」

「うわわっ」


 すると、ヴァルツは逃げるように走っていった。

 後ろから「廊下を走らなーい」と教師の声が聞こえてくるが、もう関係ない。

 

 そうこうして、しばらく。


「……ったく、どいつもこいつも」


 ようやく一人になれたと思い、ヴァルツはドカっと腰を下ろす。

 結局、学園の裏庭まで辿り着き、木陰で一息ついた。

 そんな場所も、すでにマークされているとは知らず。


「やはりここでしたか」

「なぜお前が!?」

 

 すっと現れたのは、リーシャだ。

 バッと振り返ったヴァルツに、彼女はにっこり笑って答える。

 

「ヴァルツ様なら人目につかない場所に行くと思いまして。これも愛の力ですね」

「またバカなことを……」


 この学園という場でも、リーシャはずっと変わらない。

 ヴァルツのことを理解し、常に隣にいる。

 ただ、ヴァルツの方は変わらないわけでもなく……。


「ここで剣でも振られますか?」

「フン、そうだな……ん」


 ヴァルツは返事をして、自分で気づく。


(そういえば、リーシャの前では修行できるんだよな……)


 過ごした時間が長いからか、学園の前から関わってきたからか。

 どちらにしろ、リーシャの前では努力する姿を見せられる。

 傲慢な態度こそ消えないが、その点はリーシャが特別だと言えた。


 そんな支えてくれる存在に、ヴァルツは考察をする。


(元のヴァルツの人格も、リーシャは認めてるのか?)


 だが、そう思った瞬間にヴァルツは胸を抑えた。


「ぐっ……!?」

 

 なんだか心臓をぐっと掴まれる感覚がしたのだ。

 元のヴァルツなりの反抗かもしれない。

 ツンデレとも取れる行動を感じながらも、ヴァルツは前を向いた。


(まあ、リーシャの前では修行を(さえぎ)られないだけマシか)


 リーシャの執着具合は恐ろしく、とても逃げられそうにない。

 しかし、隣で研鑽(けんさん)をできるのなら、不幸中の幸いだ。


「見るなら勝手に見てろ」

「はい! ヴァルツ様!」


 目を合わせずそう告げると、ヴァルツはブンッブンッと剣を振り始めた。


 改めて思えば、不便すぎる体だ。

 特に、学園という大勢の者が存在する場では。

 普通に修行も出来ないにもかかわらず、他者に負けることは許されないのだから。


 それでも、その強い意志は決して変わらない。 

 ヴァルツは己を磨き、目標のために努力し続ける。


(僕はヒーローになる!)


「ハーハッハッハー!」

 

 そうして、どう見ても悪役の様相で、今日も剣を振り続ける“ヴァルツ様”であった──。

いつも本作を応援してくださり、ありがとうございます!


今回は記念SSです!

8/28に、本作『傲慢悪役ヒーロー』のコミカライズ電子版2巻が発売されました!

Amazon他、ピッコマ・コミックシーモア等、各電子書店でお求めいただけます!

ページ下部にリンクを張りましたので、ぜひチェックしてみてください!


また、お知らせ出来ていなかったのですが、コミカライズ1巻は紙書籍としても出させてもらっています。

紙書籍派の方は、お近くの書店を覗いてみてください。

2巻に関しても、電子版が1か月先行であり、9/25に紙書籍版が発売予定です。

お好きな方でお求めください!


ということで、記念SS更新でした。

なろう様の方でも、お知らせの際にSSを更新しようかなと思います。

次回は、2巻の紙書籍版の時にできればと!


引き続き、本作『傲慢悪役ヒーロー』をよろしくお願いします!

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本作のコミカライズ電子版1~2巻が発売中です!
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電子版1巻まとめページ

連載ページはこちら↓から↓
Q.傲慢で非道な悪役貴族に、正義のヒーローに憧れる少年が転生したら?  A.口は悪いが人を救うダークヒーローが誕生する(連載ページ)
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