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【web版】Q.傲慢で非道な悪役貴族に、正義のヒーローに憧れる少年が転生したら? A.口は悪いが人を救うダークヒーローが誕生する  作者: むらくも航@2シリーズ商業化
第二章 本編開始

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第26話 お互いに

 「僕は負けない……!」


 悔しさと、【闇】に打ち勝つ力。

 さらに勇者の血が反応し、ルシアの【光】が覚醒(かくせい)を迎える。


 それは言うならば──【太陽】。


「うおおおおおお!」

「バ、バカな! 魔力拡散装置は!」


 魔王教団の教主がうろたえる。


 だが決して、魔力拡散装置が働いていないわけではない。

 ただ拡散を上回る(・・・・・・)だけの魔力をルシアが練っているのだ。


 【光】の特性は【強化】。

 それが覚醒したとなれば、その効率は跳ね上がる。


「もっと、もっと……!」


 小さな魔力同士が、拡散する前に互いを【強化】し合い、結合する。

 そうして繋がっていったものが、やがて大きな魔力へとなる。

 結果的に、ルシアは魔力を溜めることに成功していたのだ。


 ヴァルツは目を見開く。

 

「……ッ!」(ルシア……!)


(この主人公が!)


 少しの嫉妬(しっと)は持ちつつも、こればかりは感心するしかない。


 そうして、ルシアは再び立ち上がる。


「いくぞ、魔王教団!」


 そのまま教団へ一直線に突撃する。


「迎え撃て! 背面側部隊も全てだ!」

「「「はっ!」」」


 教主の指示で『魔法銃』を一斉に構える教団。

 これは魔法が込められた教団開発の武器だ。


 ──しかし、


「なんだあの動き!」

「速すぎる!」

「お、追いきれません!」


 ルシアを目で追うことすらかなわない。

 それもそのはず、今のルシアは【光】の上位互換──【太陽・身体強化】による恩恵を受けている。


「教主様!」

「どうしますか!」

「このままでは!」


 追い詰められる教団側だが、よく考えれば未だ被害はない。

 その状況に、ふとした考えが教主の頭を(よぎ)った。


(あやつ、こちら側に手出しをできぬな……?)


 ここにきて教団の対策がいきてきたのだ。

 教団は初めから徹底(てってい)して、人質を盾にしている(・・・・・・・・・)


 つまり、容易に近付けば人質に被害が及ぶ可能性がある。

 それが心優しきルシアの手を(はば)ませていた。


(これじゃ迂闊(うかつ)に近づけない! もう一手あれば!)


「……!」


 そんな時に見えた、一人の動く影。


(やっぱり、すごいや)


 教団は自分(ルシア)ばかりに着目しており、本来の目的である人物を見失っていたのだ。


「──(あき)れた奴らだ」

「「「……!」」」


 教団の背後から聞こえた、低く静かな声。

 傲慢で恨めしい声──ヴァルツだ。


「邪魔だ」


「きゃっ!」

「おわっ!」


 ヴァルツはそのまま人質を複数すくい上げ、後ろに放った。

 かと思えば、【闇】の魔法で勢いを弱体化(・・・・・・)


「えっ」

「うわっ」


 人質たちはクッションを挟んだかのように、優しく地面に落ちた。


 ルシアに気を取られ、崩れた教団の陣形。

 ヴァルツは、その隙に人質を救い出たのだ。


「ヴァルツ・ブランシュ……!?」

「フッ」


 こうなれば、邪魔者はいない。

 ようやく反撃が開始される。


「──(ひざまず)け」

「「「……ッ!」」」


 開幕の【闇】の魔法。


 だが今回は、


「いや、足りないな」

「「「……!?」」」

「──()いつくばれ」


 今までの分も込め、さらなる身体への【弱体化】を与えた。

 教団は『うつ伏せ』になり、顔を上げるのがやっとの状態だ。


「な、なぜ……!」


 だが、教団側の疑問は絶えない。

 教主が悔しさを(にじ)ませた目でヴァルツを見上げる。


「な、なぜ貴様が、動けるのだ!」

「さあなァ」


 口ではこう言うが、実際に危なかったのは事実。

 ヒントとなったのは……ルシアの覚醒だ。


(魔力同士が拡散される前に、魔力同士を【強化】し合って結合する。その発想はなかったよ、ルシア)


 ルシアの属性が【太陽】に覚醒したことで、ようやく得た魔力制御。

 ヴァルツはその原理を瞬時に見抜き、ぶっつけ本番でやって見せた。


(【光】でそれができるなら、逆の事を【闇】でも行えば解決できるはず)


 さらには、魔力が拡散される状況下で【闇】をも使いこなしてみせた。


 『反対の事を行う』。

 考えるのは簡単だが、瞬時にできたのは今までの努力あってのもの。

 ヴァルツでなければできなかっただろう。

 

(もしヴァルツ(本来の君)なら、とっさにできたのかな)


 そんな少しの羨望(せんぼう)も混ざりつつ、再度教団に目を向ける。

 だが、【闇】による【弱体化】を受けた彼らは虫の息。


 あとは──終わらせるだけだ。


「言い残す言葉はあるか」


 ヴァルツは、(ひざまず)く教団を上から見下ろした。


「ヴァルツ・ブランシュ……!」

「ないのだな」

「……!」


 ヴァルツは右手を差し向ける。


 以前、暴走したキュオネに放ったのが【混沌の魔力(カオスマター)】。

 あれが魔力を食らい尽くすものだとすれば、この魔法は単純なる物理的破壊(・・・・・)


「破壊してやる」

「や、やめろ……!」


 以前より、ヴァルツはこんな状況を想定(妄想)していた。

 いつかは自分が人質を解放する場面のことを。

 正義のヒーローに憧れる少年にとっては、なくてはならない場面だからだ。


「……」


 だがそんな時、自分以外から魔力を奪う【二律背反(アンチェイン)】では人質ごと巻き込んでしまう。

 それは本意ではない。


 そこで作った(・・・)のがこの魔法。


「【闇の吸収(ブラックホール)】」


 弱体化を(ほどこ)した教団の足元に、ドス黒い魔法陣が浮かび上がる。

 

「「「ぐわあああっ!!」」」


 その魔法陣が、教団から魔力を強引に奪う。

 魔法空間【二律背反(アンチェイン)】を展開せず、弱体化させた者のみ(・・)に影響を及ぼすようだ。


「大した魔力量じゃないか」


 次にヴァルツの前方に浮かび上がったのは、巨大で神聖な白い魔法陣。

 人間一人分の魔力で作れるとは到底思えない魔力量だ。


「自らの魔力で滅びるがいい」

「「「……ッ!!」」」 


 それもそのはず。

 これは、いま奪った魔力から構築されている。


 そんなヴァルツを前に、


「ヴァルツ君!」


 ルシアが声を上げる。


「その人たちを──」

「フッ」


 だが、ルシアが言い切る前にヴァルツは笑った。


(分かっているさ)


 そして──放つ。

 特大の魔力を持った物理的破壊魔法を。


「【光の放出(ホワイトホール)】」

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