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【web版】Q.傲慢で非道な悪役貴族に、正義のヒーローに憧れる少年が転生したら? A.口は悪いが人を救うダークヒーローが誕生する  作者: むらくも航@2シリーズ商業化
第二章 本編開始

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第22話 ペット公爵

<ヴァルツ視点>


 昨日のことがあってから一日。

 今日は休日のため、部屋でゆっくりしている。


「最近、色々あったなあ」


 そこで、ふと昨日までのことを思い出してみた。


 事の発端(ほったん)は、ダリヤさんとマギスさんが余計なお世話を働いたことから。

 二人は勝手にルシアからペンダントを奪い、僕の元に持ってきたのだ。


「まあ、良かれと思ってしたことだしなあ……」


 それはもう許したので、良しとする。

 でも、ペンダントは僕が持っても意味がない。


 ということで、物語の主人公であるルシアに返すことにした(苦労しながら)。


 そうして、ルシアがペンダントを持っていたことで、イベントが進行。

 封印されていた獣が姿を現した。


「あれはさすがにびっくりしたよ」


 だけどその獣は、不安定な【光】を送られたことで、“光の集合体”となって学園で暴走。

 それを、なんとか僕が鎮圧(ちんあつ)したわけだ。


 その後、安定した【光】を送ったことで、獣は本来の小さな姿に。

 他の者には渡すと(ろく)なことにならないと思い、獣は持ち帰った。


 ここまでが最近起きた出来事だ。


「ふむ」


 さて、ここで問題が一つ。


 獣を持ち帰ったのは良かった。

 良かったんだけど……


「キュイ〜!」

「……」


 なんかめっちゃくちゃ(なつ)かれた。


 僕が放った【混沌の魔力(カオスマター)】は、相手の魔力を()い尽くす魔法。

 マギスさんに毎日しごかれていた時のように、魔力枯渇(こかつ)状態にする魔法だ。


 戦場で意識を失えば、それは敗北を意味する。


 だけど、体を傷つけいるわけではない。

 なので、一晩寝かせればこの子も目を覚ました。


 それからはもう大変。


「キュイイ~!」

「ははっ!」


 この子が超かわいいんだ。


 白いうさぎ(・・・)に似たケモ耳付きの顔に、小さな体。

 僕でも抱きかかえられるサイズだ。

 両手は羽根のようになっていて、今もふわふわ浮かんでいる。


 しかも、


「本当に気持ち良いな~」

「キュイ、キュイッ!」


 これがもうモッフモフ。

 羽毛の触り心地は最高で、ずっと触っていられる。


 あとは、体の中央に【光】を表したような不思議な模様がある。


「まあ、だよね」


 それもそのはず、この子は『勇者の精』。

 (はる)か昔、勇者が共に旅をした妖精(ようせい)だ。


 まあ、いわゆるペットだね!


 もちろん原作プレイ時には僕も一緒に旅をした。


 でも、


「キュイイ~!」

「ん~!」


 とても悪役(ヴァルツ)と行動していい生き物ではない~!


「こっちだぞ~『キュオネ』!」

「キュイ~!」


 ちなみに名前は『キュオネ』だ。


 「キュイ」の鳴き声から名前っぽくしてみた。

 それはもう意気(いき)揚々(ようよう)と名付けたよ。


 ──そんな時、


「失礼します」

「……!」


 突然メイリィが部屋に入ってきた。


 途端に目元あたりにグッと力が入る。

 すんっと傲慢(ごうまん)な顔になったのだろう。


「メイド、今何か聞いたか」

「いえ、特に何も」

「ならば良い」


 セーフ!

 けど、あぶなっ!

 ヴァルツのキャラが根本から崩れるところだったよ!?


「それにしてもヴァルツ様」

「なんだ」


 メイリィの顔がふにゃっと柔らかくなった。


随分(ずいぶん)と懐かれましたね~」

「黙れ。こいつが離れないだけだ」

「キュオネという名前も素晴らしいです!」

「……」


 ニヤニヤしながらこっちを見てくるメイリィ。

 え、本当に聞かれてないよね……?


「もしよろしければ、もう一度触らせてもらえないでしょうか」

「しかたのない奴だ」


 このモフモフはたまらないからね。


「あ~可愛い~!」

「キュイイ~!」


 すごく同感。

 あと笑顔のメイリィも相まって眼福だ。


「ですが坊ちゃま、キュオネは学園ではいかがなさるのですか」

「そうだな……」

「お困りなら私が預かりますが」

「お前は(たわむ)れたいだけだろう」


 メイリィの欲望は置いといて、僕もちょうどそのことで頭を悩ませていた。

 けどまあ、答えは一つだね。


「連れて行く」

「ですが、この子は暴れたことで話題に──」

「構わん」


 メイリィの言う事は正しい。

 でもキュオネの価値に気が付けば、どこで誰が狙いに来るか分からない。

 それはメイリィを危険に(さら)すことにも繋がる。


「俺に逆らう者などいない」


 それに、今はひと時も離したくない!


「かしこまりました」

「キュ~イッ!」


 ということで僕は、キュオネを明日からの学園へ連れて行くことにした。






★ 




<三人称視点>


 週が明け、また学園の日々がやってくる。

 カッカッと近づいてくるとある足音に、人々は道を(ゆず)った。


「おい見ろよ」

「ああ、あれが……」

傲慢(ごうまん)(こう)(しゃく)ヴァルツ・ブランシュ……」


 今日もヴァルツの名は(とどろ)いているようだ。

 その名に恐れおののく者、道を譲る者など、その反応は様々。

 

 しかし、中には挑戦的な奴らもいる。


「よお、ヴァルツ・ブランシュ」

「あ?」


 ヴァルツに道を譲らず、真正面から立ちはだかる男。

 彼もそれなりの地位を持つ者のようだ。


「俺様はお前と戦いた──」

「黙れ」

「ぐぉあっ!」


 だが、ヴァルツは魔力で強化された何か(・・)で殴る。

 持っていたのは……ペット用の小さなボール。


(((なぜペット用のボール!?)))


 周りは一斉にそんなことを思う。

 だが、ヴァルツの背中には乗っていたのだ。


「静かにしろ」

「キュイィ……」

「こいつが起きたらどうするつもりだ」


 すやすやと眠るキュオネが。

 小さなボールは、この子と遊ぶためにわざわざ買った物のようだ。


 それを見ていた周りは、ひそひそと話す。


「な、なんだったんだ」

「さあ……」

「ていうか何? あの生き物」


 この日より、傲慢公爵が変な生き物を連れてると噂が広がる。

 同時に、その生き物が眠っている間は「絶対に近づいてはならない」という暗黙の了解も。


 裏では『ペット公爵』などと呼ぶ、恐れ知らずの者まで。


 さらに一部界隈では、


「ね~可愛いよね!」

「真逆な感じが最高~!」

「はぁ尊い……」


 ヴァルツとその生き物のギャップに()え、ファンクラブが結成されたとか、されていないとか……。





 そうして、とある日の昼。


「ねえねえ」

「あ? ……!」


 広場に一人でいたヴァルツに、話しかける少女。

 顔を上げた瞬間にヴァルツは気づいた。


(この子……!)


 その少女には見覚えがあったのだ──。


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