表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

バカ二人のおかげで優秀な婿と結婚できるお話

作者: 下菊みこと

「ほーん」


私の口から出た言葉に、義妹と私の婚約者はよく分からない顔をする。いや、よく分からないのはこっちですけど。


「で?二人で火遊びのつもりでまぐわってたら子供ができたから、妹と婚約者をトレードしろって?」


こくこく頷く妹。


「よろしい。その要求は飲みましょう。その私のお古の婚約者と、ずっと恋愛ごっこでもしてればいいわ。この公爵家を継ぐのに、その男は相応しくないもの」


「え?お義姉様、公爵家を継ぐのはヨシュア様ですよ?」


「それは私の婚約者だからよ。私と結婚する男が、この家を継ぐの」


「で、でも私だってこの家の娘よ!ヨシュア様はこの公爵家を継ぐために勉強だってたくさんして…!」


「でも貴女、結局は母方の親戚の娘よ?虐待を受ける可哀想な子だからと、お母様の温情で拾われてきただけ。一方私はちゃんとお父様の血を引いてる。どちらか優先されるか、わかるでしょう?そもそも、貴女に継承権はないの。貴女のお相手にも。わかる?」


私の言葉に、初めて現実を受け入れた二人。途端にぎゃーぎゃーと騒ぎ出し、喧嘩し始める。


「この二人を追い出して」


「はい、お嬢様」


二人を侍女に追い出させる。黙って見守っていたお父様とお母様が一言。


「ごめんなさい、ルルシア…私があんな子を拾ってきたから」


「いいんです、お母様。道端で犬が虐待されてたら、私も拾ってしまいます」


「私の躾が足らなかったようだ、悪かった」


「いいんです、お父様。チンパンジーにいくら躾を施しても、人間にはなれません」


私の慰めに、二人は余計にため息をつく。なんでかしら?


「まあ…あの二人には責任を持って結婚してもらおう。あのクソガキより、あの小娘にあてがっていた婚約者の方がぶっちゃけ優秀だし」


「トレードをお願いされましたものねー。お望み通りにしてあげましょう。優秀な婿に来てもらえて安心ですね」


「時々、お前の切り替えの早さが怖い」


そうは言われましても。


「だって、くよくよしてても仕方ありませんもの。ゴミを一気に処分できてよかったではありませんか」


「…まあ、お前のそういうところが頼もしいがな」


「ルルシアが泣くことになるよりは良いではありませんか、あなた」


「そうだなぁ」


…私って、何かズレてるのかしら?























お父様とお母様の尽力で、私は無事あのバカと婚約破棄。そして新たに優秀な婚約者をゲット。本当に義妹はバカだと思う。


新たな婚約者は妹のお古ではあるが、非常に優秀。誠実で優しい。顔も悪くないし、武術も嗜んでいて頼りになる。うん、優良物件。


新たな婚約者は多少気まずそうだが、頑張ってうちを継ぐため勉強に打ち込んでいる。私にもマメにプレゼントをしてくれて、デートもしてくれて、なんだかんだで相性もいい。


バカ二人は婚約を結ばされて不貞腐れている。知らんがな。


でも、姉妹で婚約者のトレードというなかなかのインパクトの醜聞がようやく落ち着いてきた頃、事件が起きた。


「…いい気味だな、ルルシア」


「私の乗る馬車を襲うなんて、本当にバカ二人には呆れるわ」


「お義姉様が悪いのよ!」


「お前さえ消えれば、公爵家は俺たちのものだ」


「ふふ、本当にバカね」


襲撃されたのに落ち着いている私に、二人は顔をしかめる。


「どういう意味だ」


「前も言ったじゃない。義妹はお父様の血を継いでないんだもの。継承権はないの。私が死んでも、遠縁の優秀な親戚の子を養子にするだけ。こんなことしたってね…貴女にも、貴方にも、なんの得もないわ」


ぎょっとする二人。どうしてこんなにバカなんだろう。頭の中空っぽなのかな。


「ルルシア!」


「あら、アルフレッド様」


そこに婚約者が助けに来てくれた。


「え、な、なんでここに!」


「ルルシアにつけていたアミュレットが、ルルシアの危険を知らせてくれたからだ!お前たち、覚悟しろ!」


「に、逃げろ!」


「逃すか!」


こうしてバカ二人は無事私の婚約者によってお縄になり、治安部隊に引き渡された。


結果として、義妹は戸籍から外され赤の他人に。そして身籠っているということで酷い扱いは受けないよう、女性用の収容所に入れられた。身籠っている間は優しくされるだろう。産んだら、子供は一般家庭の養子に出されるらしい。そしてあの子自身は鉱山送り。まあ、頑張ってほしい。


元婚約者のバカも、家から勘当されたらしい。平民となった奴は、やっぱり鉱山送りの処分を下された。


私達家族は、またもまあまあ酷い醜聞に悩まされたものの、一応名のある公爵家。だからこそ醜聞は痛いが、領地経営なんかは盤石だしお金と地位と権力はあるのでまだなんとかなる。噂が収まるのを待つしかない。


そして婚約者。なんだか私に過保護になった。そして、婿になるからにはうちの家を頑張って支えると息巻いてる。頑張れ。


「ルルシア」


「はい、アルフレッド様」


「あの…今更こんなことを言うのは気恥ずかしいんだが」


「はい」


「この間、君が襲撃されて本当に肝が冷えた。君を失ったらと思うと怖かった。それで気付いたんだ…俺は、君が好きだ」


…それはただの吊り橋効果の亜種ではなかろうか。


「幸せにする。ずっとそばにいて、長生きしてくれ」


「…では、アルフレッド様も幸せに長生きして、ずっとそばにいてくださいね」


「もちろんだ!!!」


多分おそらく吊り橋効果だろうなぁとは思うけど、余計なことを言わないのも美徳だよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] サクサクと進んで良かったです。
[一言] この元婚約者、ヒロインが優秀で女公爵でも行けるから最悪種馬でもいいと思われていたのでは。 あとは最低限、夜会や式典でのパートナー(案山子)が務まれば…まあ無理だったでしょうが。
[一言] さすがのルルシア様、ですね。跡取りとはこれぐらいの器でないと。 切り替えが早くていいな。これは婦唱夫随になりますね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ