らあめんとはなんぞや?
らあめん、という文字を聞くと人は何を思うのだろう。
インスタントか、家の味か。店の味も多種に渡り、地域ごとの味を思い浮かべる人も多いかも知れない。
こってり、あっさり、豚骨、醤油に塩などなど。
様々な種類が浮かぶもので、今やラーメンは国民食と呼ばれる程に人気がある代物だ。
そういう物だからなのだろう、らーめんを題材とした作品や漫画も多種多様に渡り、食う方作る方でと手を変え品を変え、色々な物が生み出されてきた。
そんな中でも特徴的な作品と言えるのが今回紹介したい漫画、らーめん再遊記である。
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この作品は元々、二作品ほど前作となる代物が存在している。
ゆうに30巻を超えるという大規模な量からはラーメンの懐の深さを感じさせるものだ。
それに連なる本作の特徴と言うのは、食品物としては珍しく経営の面を強く意識している所だろう。
普通ならば美味しい物を美味しい手法で食べさせ、ジャッジさせるというのがこの手の漫画の常である。
しかし再遊記などではその面は幾分か鳴りを潜め、どうすればその食品で経営が出来るか、食材はちゃんと準備が出来るのかと、今まで見た事ない概念が次々に飛び出てくる。
しかし、考えてみればそれは当然の事である。
作品内の言葉を借りるならば「良いラーメンでは無く、良い店を目指す」事こそが飲食店の目標なのだから。
これまでの飲食系の漫画ならば美味しいものを食べればそれで万事OKという感じで済むのだが、本作ではその先、それは継続的に、店として販売出来るのかという点を重視している。
これは問題解決という面に於いては、とても実用的な発想であろう。
元々これらの漫画で出てくる困窮している店とは閑古鳥が鳴いている店がほとんどであり、それらの店の事を考えると美味しい物を打ち出すだけでは不十分。
それを如何にして商品にするかの発想が必要となる。
そこをどう説明し、実行するかがこの作品の妙となっている。
また、それ以外にも本作には同シリーズの人気キャラ・芹沢さんの活躍が存分に見れるのも良い点であろう。
意地の悪い性格をしていながら、ことラーメンに関してはセンチメンタリズムを持ち合わせている彼の行動や思想が色濃く出ている本作は、前作前前作を読んでいる人にとっても新鮮に映る事間違いない。
特に今作では芹沢氏本人の性格以外の私生活部分、そこの部分も色濃く見れるのが心憎い所。
プロレス談義(ここは作者本人というか協力者の意向なのだろうか)に花咲さし、サウナを楽しみ、ビールを飲む中年男性の姿を見るだけではある。
それが面白いのかと言うと、それが実に面白い。
それまでの芹沢氏本人が経営理念を説くなどばかりしているので、本人の人となりは作中で示される台詞などから推察するしか無かったのだが、本作では日常生活から友人との会話に至るまで、芹沢さんの魅力たっぷりとなっている。
話そのものも対決路線は凡そ変わってはいないものの、変わり種の話も多く、自作創作ラーメンにスランプを抱いている状況での勝負や、自販機ラーメン機での対決など異種対決が行われており、見どころが絶えない。
その途上で語られる芹沢氏の経営理念、ラーメンへの情熱、商売という物についてなど、前作から引き継いだ魅力は今もなお健在で、紙面上を賑やかにしてくれている。
そんな料理漫画としては変わり種、しかしラーメン屋漫画としては王道も王道の本作、今度読むものがない時にちらとでも思い出したら、ぜひ味わって貰って頂きたい。