46
やりすぎたかもと思ったが、ドルドはすぐに起きた。
「少しやりすぎたと思ったんだけどな。そんなに入ってなかったのか?」
「いや、大分効いたのだがな。やたら回復が早い」
「ああ、悪魔界があるせいかもな」
「おい!クロト」
突然シュルトに怒鳴られた。
理由を聞くと調査隊がいるから、場所を教えていなかったと小声で言われた。
「じゃあ説明すればいいだろ」
「いや、だが・・・」
「理由が無いとそれこそ突撃しにいくかもしれないぞ」
「・・・クロト、説明頼んだ」
俺かよ。
まあいい。
「ドルド、悪魔界はここの100層にあるんだが少し待ってくれ。この国的には未知の物だから調査が必要らしいんだ」
「む、それもそうだな。こちらも配慮が足りなかったな。すまん、シュルト殿」
「い、いや。問題ない。・・・1つ聞きだいのだが仮にも王がそう簡単に謝っていいものなのか?」
「別に統治をしているわけではないので大丈夫だ」
「シュルト知ってるんじゃないのか?」
ドルドへの対応的に知っていると思ってたんだが。
「種族に王が複数いるのは知っているが、それは物事と知っているだけだ。その実態まで知っているわけじゃない」
「そうなのか?身近に例がいるから、それなりに知っていると思っていたのだが」
「身近に例?」
「ああ。クロトがそうだろ。どの王かはわからないが」
「・・・え?」
あ、そういえば言ってなかったんだ。
最初の方は国との繋がりがよくわからなかったので、報告を警戒して話していなかった。
そして、そのことも忘れて今に至る。
「俺への対応がレーガンに似てたから、話してないことを忘れてたんだよな」
「レーガン?クロトもレーガンと知り合いなのか?」
「ああ、俺もハラルから出てきたからな。ハラルにいるっていうのは聞いてたが隠れているもんだと思ってた」
「聞いていた?誰からだ」
「情報屋だ」
「その者は腕がいいのだな」
そりゃ3千万円だからな。
その後はドルドにハラルの状況を聞いていた。《黒》のことを含めた諸々だ。
ていうか、悪魔王とその部下を簡単に信用するレーガンは異常だと思う。
しばらくするとシーアたちが帰ってきた。
「ただいま。クロト、その人誰?」
「悪魔王のドルドだ」
「もしかして悪魔界関係?」
「よくわかったな、セラ。悪魔界の出現を感知して来たらしい」
悪魔界の出現は大体の悪魔が感知できるらしいが、ドルドのようにわざわざ来るのは珍しいらしい。
ドルド曰わく、悪魔にとって悪魔界は産まれの場所なだけで後は何もない暇な場所という認識のようだ。
ドルドが来た理由はなんとなくらしい。よくわからん。
「それにしてもカイ君の人脈はすごいね。神獣に聖獣、精霊王、悪魔王。他にもギルドマスターとか学園長もいるし。・・・普通の知り合いいる?」
「・・・それは自分たちも普通じゃないって言ってるのと同じだぞ」
「普通じゃないよ。聖女に勇者が2人。固有魔法の使い手に先祖帰りと呼ばれるエルフ。ね?」
「・・・」
そういえばそうだった。
やばい。俺自身含めて、普通の奴が周りにいない。
「・・・頼むから俺を話で置いていかないでくれ」
「あ、忘れてた」
俺とドルドがハラルの話をし始めた辺りから、おいていかれていたようだ。
「クロトが王だという話から始まり、町で悪魔王が普通に生活している話。クロトの連れのドルド殿に対する反応。お前の人脈。情報量がおおすぎる!」
「そんなことより、ドルドさんと戦いたいです」
「ね。強そうだからね」
麻紀と麻衣にそんなことで済まされてしまった、シュルトの苦悩。
「ドルドは俺と戦った後だからまた今度な。しばらくはいるみたいだから、問題ないだろ」
「うむ、悪魔界に行けるようになるまではいる。明日以降ならいくらでも受け付けよう」
「「よし!」」
本当に大丈夫か?麻紀と麻衣は相当やる気を出しているし、2人は勇者だ。
まだ聖剣を持っていないとはいえ、その身体能力は相当高い。
・・・その身体能力同等な南はどうなってるんだ?聖女は身体能力が低いのが普通らしいんだが。
まあ、普通じゃないんだろう。
「もしかしたら悪魔王の持久力切れなんて珍しい光景が見られるかもしれないな」
「「「・・・確かに」」」
「?子供よりは持久力が多いと思うのだが」
まあ、実際に体験してみればわかるだろう。
・・・結論から言って、ドルドは疲れ果てていた。
それでも大分持った方だと思う。勇者2人を相手に3日程戦いまくっていたのだから。
・・・すごいとは思うのだが、近所の子供と遊んで疲れたおっちゃんにしか見えない。
「それでは行ってくる」
「本当に大丈夫か?誰かついていったほうがよくないか?」
「クロトらしくないぞ。どうした?」
「クロトがそうなっちゃうくらいドルドが疲れて見えるの」
シーアの言葉に全員が頷く。
昨日帰ってきて、ドルドと大して親交もないルークまでが。
「そんなにか・・・」
「「ごめんなさい」」
「いや、ここ最近は一方的に勝つか一方的に負けるかしかなかったのだ。その中で張り合えたのは楽しかった。謝る必要はない」
麻紀と麻衣がシュンとして謝るが、問題ないと言って慰める。
控えめに言って、近所のおっちゃんだ。
それぞれ表現は違うだろうが、同じようなことを思っているはずだ。
ドルドはそんな生暖かい視線の中で悪魔界に入っていった。
「さて、雇い主様に情報を持ってきたよ」
そんな空気の中、ルークが口を開く。
昨日帰ってきたのはこのためだったのだろう。
視線で続きを促す。
「魔王関係だ」
「・・・聞こう」
やっと事が動きそうだ。




