EX.レーガン
クロトたちがウィーン帝国に旅立ってから少し経った。
俺達がやることは大して変わらない。少し厳しくはしたが、森を見回るための人員を育てていた。
厳しくする事に少なからず反発する者が出ると思っていたが、大半がクロトに救われた者やミナミやマキ、マイ、セラを慕うものだったのでむしろ喜んでやっていた。ちなみにシーアは元々人気があった。
「レーガン、町の状況の報告に来たぞ」
「ああ、頼む。ゲルド」
ゲルドの報告によると、ハラルは現在好景気のようだ。
死人が出にくくなっただけでなく、《黒》もしょっちゅう魔物を狩るので素材などが豊富になってきているのだ。
《黒》というのは見回る人員のことだ。何故か全員が黒い服を着たがったので、名前も《黒》になった。
「これだけで良くなるからもっと前からやっておくべきだったか?」
「いや、クロトという成功例があったから拡張するに至っただけだ。それがなかったら悩みに悩んで、現状維持を選ぶだけだろう」
それもそうか。クロトたちでなければ、やる者のやる気も段違いだっただろう。
「ふう。それじゃあ俺はそろそろ戻る」
「もう?珍しいな」
「俺だってできれば楽したいさ。ただ、報告のとおり好景気で忙しいからな」
ゲルドを見ているとギルドマスターでよかったと思う。
冒険者ギルドはよほどのことがない限り仕事の量は変わらないからな。
翌日
よほどのことがあった。
俺は普段通り仕事をしていたのだが・・・
「勝手に入らせてもらうぞ」
「・・・どちら様だ?」
「ほお。あまり驚かない。胆力があるのだな」
そんなわけがない。クロトたちが突然窓から入ってきていたせいで、突発的なものを対処することに慣れていただけだ。断じて突然出てきたゴツい男に驚かない胆力を持っているわけではない。
「我は悪魔王。悪魔王のドルドだ」
「・・・ドルドさんね。俺はここのギルドマスターをやっているレーガンだ」
ハラルはヤバいのを引き寄せる特質でもあるのか?
クロトに、目の前のドルド。数的には2人だが、持つ力に関しては国の規模に及ぶだろう。
流石にクロトのほうが強そうだが、俺たちが太刀打ちできる相手ではない。
「ここに来た目的は?」
「俺は強い者を探して旅をしている。特別狙っている奴がいないわけではないが、あいにくその者の顔も知らないのでな。それで強い者を探して、ついでに特別な者も探している」
「探してどうするつもりだ?」
「そう警戒するな。立ち会いを求めるだけだ」
「悪魔王を名乗る奴を警戒するなという方が無理だ」
「それもそうだな。ハッハッハ」
ハッハッハじゃないんだよ。
それはともかく、うちで一番強いのは王都から引き抜いた暗殺者のレートだろうか。
ただ、レートでも勝てそうにないんだよな。
「ここまで聞いておいてなんだが、お前と戦える奴はいなさそうだ」
「複数人でも構わない。もちろんだが、殺しもしない。できるだけ怪我もないようにしよう」
「・・・」
普通は断るべきなのだろうが、少し魅力的でもある。
もし大物がでた場合に、対処できないでは笑えない。
・・・受けるか。
「条件は2つ。殺さないのと、悪魔王だというのを黙っておくこと。この2つだ」
「おお、受けてくれるか!今までは震えて断られていたから、ありがたい」
それはそうだろう。普通の反応だ。
「我を前にして恐れもしない。気に入ったぞ、レーガン」
・・・おい、クロトのせいだぞ。
レート・・・第21部分参照




