30.攻略
「てなわけで全員強制参加だ」
「・・・ねえクロト、その迷宮本当に大丈夫なの?最終的にキメラ100体とかになりそうだけど」
「100体でも大丈夫だろ。さっき1層だけ行ってみたけどこの間攻略した迷宮の階層主より弱かったぞ。多分シーアたちでも一撃で倒せると思う」
シーアは弓か短剣。セラは固有魔法を使った状態で短剣。確か麻紀と麻衣は短剣で南は長剣だったはず。
うん、大丈夫だな。よし迷宮に《転移》だ。
「カイ君、準備とかは?」
「《転移》で戻ってくればいいだろ。荷物持ってるとスピード遅くなりそうだし」
「そっか。じゃあ大丈夫だね」
「ん、行く」
《転移》っと。
「何これ。迷宮って地下にあるの?」
「倉庫に穴があったから入ってみたら迷宮だったらしい」
迷宮があるのは元々貴族邸宅だった場所だ。この屋敷はギルドが買い取っており、住んでいた貴族は引っ越したらしい。
まあ、その辺は関係無い。さっさと攻略しよう。
「よし、先ずは全員一撃で倒せるか確認だな。はいシーア」
「じゃあ弓でやるね」
パシュッ、ドサッ。
・・・こんなに簡単に倒せていいのか?
その後全員試してみて、一撃で倒せることがわかたので攻略を進めることにした。
のだが・・・
「「クロ兄、飽きた」」
「ああ、俺も飽きた」
「「「・・・」」」
全員が飽きてしまった。この迷宮ははとにかく変わり映えしないのだ。
景色も変わらないし、出てくる魔物も変わらない。変わるのはキメラの出てくる数くらいだ。
苦戦するならもう少しやりがいがあったのだが、全て一撃。作業なのだ。
「クロト、勝てなかったことにして帰らない?」
「・・・とりあえず51層まで終わらせよう。何か変わるかもしれない」
「ん、わかった」
セラが最近怠惰になってきた。このパーティーはいずれ、誰も動かなくなるかもしれない。
50層を終わらせて51層に入る。
そこにいたのは、なんと・・・(多分)51体のキメラだった。
プチッ
何かの切れた音がして、気付いたら全てのキメラが切られていた。
※30層辺りかストレス解消のために全員が近接武器を使っている。
「・・・帰るか」
「ん」
「待ってカイ君52層への扉が開いてないよ」
南、それは言わないでほしかった。頑張って気づかないふりをしていたのに。
「原因、わかるか?」
「・・・もしかしたらどこかに魔物が隠れてるのかも」
「そうかそうか。よし、全員端の方に集まれ」
全員が首を傾げながら端に集まる。説明くらいしたほうがいいか?
・・・いいや、やっちゃえ。
《ファイヤーボール》を制御なしで打つとこうなる。
天井、床、壁。《結界》で覆っている俺たちのところ以外の全てが溶けていた。
「ねえクロト、多分開いたんだろうけどさ。これ通れるの?」
「大丈夫・・・だと思いたい。迷宮って修復機能あったよな」
「あるけどこの規模が直るのは想像できないんだけど」
「・・・少し待とう」
直らなかったから、氷の道を作って渡った。
・・・
「カイ君、もうやらないでね?」
「わかってる。少しイラついただけだ」
今思えばこの世界に来てから一番大きい感情表現だったかもしれない。
迷宮の51層以降はギミックが増えた。
罠があったり、迷路のようになっていたり、《光魔法》を使った幻惑があったりなど多様になった。
まあ罠はシーアがすぐに見破ったし、迷路は変に勘のいい麻紀と麻衣が先導。幻惑は誰にも効果が無かったりとあまり意味を為さなかった。ちなみに魔物はキメラのままだ。
「次で80位かな?予想が100層って言ってたけど、本当にありそうだね」
「100位はあるだろうな。200とかじゃないことを祈る」
「「ドーン」」
戦闘は基本的に麻紀と麻衣がやっている。あの2人は飽きると何をし始めるかわからないからだ。
「「クロ兄、終わった!」」
「お、よくやった。次進むぞ」
「待ってクロト。そろそろ夜じゃない?」
「そうか?俺は判断のしようがないんだが、シーアはわかるのか?」
「おなか減った」
「・・・そうか」
褒めればいいのか貶せばいいのかわからん。
「じゃあ一旦戻るか。戻ったら先に何か食べててくれ。俺はシュルトのところに報告に行ってくる」
全員の返事を聞いてから地上に戻り、そこからまた俺だけ《転移》をする。
「いるか?」
「クロト!?何でここに。それより探知用の魔道具が1個も反応してないぞ」
そりゃ部屋の前に直接出たんだから当たり前だ。
というか1個もって、一体何個付けてるんだ。過去に恨みでも買ったのか?
「方法はどうでもいいだろ。経過報告に来た」
「あ、ああ。どの位だ?10層くらいは行ってるとありがたいんだが」
「とりあえず80層までは終わらせたぞ」
「はちじゅう?・・・80!?速すぎないか?」
「そんなことはないと思うが」
迷宮がどんな感じだったのかを報告すると、シュルトはしばらく考え込んで動かなかった。
「・・・攻略はできそうなのか?」
「今後どうなるかはわからないが、今の感じならいけると思う」
「そうか。それじゃあ引き続き頼む」
「わかった」
さて俺も何か食べに行こう。
シュルト視点
俺はどうすればいいんだろうか。
敵対?不可能だ。一瞬で滅ぼされる。協力?これも無理だ。こちら側にできることが無い。
はあ。
「マスター、レーガン様より手紙が届いています」
「レーガン?珍しいな」
レーガンは学園時代の悪友でここ最近は特に連絡も無かったはずだ。
何かあったのだろうか。
『レーガンだ。突然で悪いがそっちにクロトっていうヤバい奴が行く。まあヤバいっていっても、強さがだから好きにさせておけばいい。多分これが届くころにはクロトたちはついてるんだろうけどな。まあ頑張れ』
確か手紙届けるのは手懐けられた小竜だったはず。それより速いとなると・・・成竜に乗ってきた?
・・・いや、流石にないか。




