EX.勇者
僕たちはモルテリア共和国で魔物討伐を終えた後、ルーナ王国に戻ってしばらく仕事をしていた。
国内の魔物討伐はもちろん、内政や治安維持も手伝っていた。
そんな時・・・
「勇気様、ウィーン帝国に行っていただけないでしょうか?」
突然アメリア王女がこんなことを言ってきた。ウィーン帝国というと・・・
「迷宮がある所だったね。どうして急に?」
「実はある貴族から迷宮に行くと多くの経験が積めるということで、勇者様も行ったらどうかとの提案を頂いた・・・」
「なるほ・・・」
「という建前です」
え?建前?普通に行ったほうがいいと思うのだが。
そう思っているとアメリア王女は申し訳なさそうに理由を語った。
「・・・大臣達が僕を狙っている、か」
「誠に申し訳ございません。我が国が召喚したのにも関わらずこのようんなことになってしまい」
「大丈夫ですよ。それで一度ウィーン帝国に行って、身を守ると」
「はい、お手数をおかけしますがお願いします」
「わかりました」
その後もしきりに謝るアメリア王女を宥めて、仲間達に建前の方の話をした。魔王のこともまだ話せてないから、取返しが付かなくなる前に話すようにしなければならない。
皆の反応はモルテリア共和国に行くと言った時とほとんど変わらなかった。(一部が変なことを言っていることも)
ウィーン帝国への移動はいつも通り馬車を使っている。その馬車には王国の紋が入っているため盗賊などに襲われることも無かった。
「ねえ勇気君、なんか空気がピリピリしてない?」
「・・・ほんとだ。僕たちを見ながら話しをしている人もいるから勇者関係で何かあったのかもね」
優香に言われるまで気づかなかったが、住人が少し殺気だっている。まあ襲ってくるというわけせも無いので大丈夫だと思う。
迷宮に入るのは2日目からだ。今日は宿を取って休むということになっている。
夜。夕食後に修行をしていると1人の女子が話しかけてきた。
「神条君、今いいかな?私の職業の事で話したいことがあるんだけど」
「いいよ。橋本さんの職業は確か聖女だったよね」
橋本さんは結構人気があって、聖女なのも納得という声が多かった。
だからこそ橋本さんの話は衝撃的だった。
「私、本当は聖女じゃないの」
「・・・え?」
そんなことは無いはずだ。彼女の《光魔法》は相当すごかったはずだ。
「多分《光魔法》が最初から凄かっただけなんだと思う。実際最初の頃からほとんど《光魔法》が成長してないんだ。ごめんね、誰も名乗り出なかったからできるかなって思っちゃったんだ」
「いや、橋本さんは十分回復役で役に立ってるよ。それよりも問題は、本物は誰かってことなんだけど」
「・・・多分栗原さんじゃないかな?」
・・・確かにそうかもしれない。というか名乗り出たほうが安全というのは皆わかってるはずだから、十中八九栗原さんだろう。
後にこのことはアメリア王女に話して、様子見、高橋さんは聖女の振る舞いを続けるということになった。
1つ心配事が増えたが、無事に迷宮を攻略することができた。
帰ったらできる限りアメリア王女を手伝おう。




